泡、スク水。
夕食を終えて俺は風呂場にて、バスチェアに腰掛け叶を待っていた。
さすがにこちらも全裸というわけにもいかなかったから、今回は仕方なくパンツ一丁の姿。水着は持ってきていなかったから用意がなかった。
「おっまたせ〜♪」
水着姿の叶が風呂場にはいってくる。
というかスクール水着なのか、叶よ。いや、いいんだが、なんだか妙な背徳感を覚えてしまった。風呂場でスクール水着、本来は無い組み合わせに脳がイロイロと誤認しそうになる。
「よ〜し、さっそく洗っていくよ〜」
そこで俺は背中だけを流してくれると想っていたものだから、頭を軽く流され、シャンプーを手に取る叶に虚を突かれた気持ちになる。
そこからやってくれるのか。
「かゆいところはございませんか〜?」
叶の小さな手のひらが頭皮を揉む。細く繊細な指の一つ一つが柔らかくて、どんな店のヘッドスパよりも癒やされそうだ。
どこに行っても、これだけのサービスは受けられないだろう。
「流すよ〜、目閉じててね」
十分に洗い終わった後、シャワーで泡を流していく。
叶の鼻歌が浴室内に響く。
「ありがとう、叶」
「これからだよ〜、さぁお背中を流しま〜す♪」
ボディスポンジにボディソープを染み込ませ、もこもこと泡立たせると、背中に気持ちの良い感触。
いやしかし、冷静に考えるとスク水姿の中学3年生に背中を流してもらうという状況、中々に謎だが悪いものじゃない。
決して俺がそういう性癖の持ち主というわけではない。
「脇あげて〜」
背中だけで十分だったのだけれど、叶に辞める気配は見えない。脇から肩、首周り。なんだか本当に何から何までお世話されている気分だ。少し気恥ずかしくもあるが、照れたら意識しているみたいで気まずいから、そんな事はおくびにも出さない。
叶の指が胸にやってくるまでは。
「い、いやっ、叶? 前は別にいいぞ、自分でやれるから……」
「いいのいいの、背中だけ流して終わり〜、もなんだか味気ないしね」
そういう事ではないのだが、叶は変わらず俺の胸周りを洗っていく。
「うーん、後ろからじゃ洗いにくいなぁ……楓太兄ぃ、こっち向いて?」
「お、おう……」
泡の滑りやすさを利用して、ぐるりとその場で叶の方を向く。こうなるといよいよ妙な胸騒ぎがしてくる。
叶はまだ中学生だけど、俺の二つ歳下というだけ。今では見慣れたけれど、叶本人はテレビでも見ないような美少女だ。
それも水着着用の、風呂場の密室。叶のあどけさなも加わり、わずかな煩悩さえも許されない状況だ。
「楓太兄ぃ、身体細いねぇ」
「まぁ、太るような食生活は送ってなかったからな」
泡まみれの叶の手のひらが脇腹を滑る。くすぐったくて声が出てしまう。それが面白かったのか、叶はニヤリと笑い両の手をわきわき。明らかに良からぬことを企んでいる顔だった。
「それそれそれ〜! こちょこちょ!」
「ちょっ、かなっ、ははははっ!」
脇腹はまずい。俺はそこは弱いんだ。
縦横無尽にうごめく十本の指が、俺の敏感な場所を暴れまわる。それに泡が加わりもうたまらない。
「や、やめっ、ってうおっ!?」
「わっ!」
これだけ泡が飛び散っていると、床も滑りやすくなっていて、体制を崩した俺は尻餅をつくような形で風呂場の中で転んでしまった。
その際、叶の足を弾いてしまった。
「いてて……あ」
「うぅ〜ん……楓太兄ぃ、大丈夫?」
泡まみれのお互い、叶が俺の上に覆いかぶさっている。
──非常にまずい、これは本当にまずい。
「か、叶、ごめ──」
「おいおい、なにを風呂場で暴れて……」
風呂場のドアがかちゃりと開いた。
大きな物音がしたから、俺たちのことを心配してきてくれたのだろう。それは感謝する。
けれど。
「……あァ?」
当の本人──アキラは血管を浮き出させ、俺たちを見下ろしていた。
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