利き腕。
毎日投稿しようとすると、このくらいの文字数が限界です。短いですがこのスタイルで続きます。
利き腕を骨折してしまって、普段の生活にどれくらいの影響が出るのだろう。
想像できるのは、食事や風呂。トイレくらいは片手でどうにか出来るから問題ないとして。
「う、うぅん……」
俺が3人に教えながら作った夕食に悪戦苦闘。やはりいきなり左手で箸を扱うのはなかなかに難しい。
そんな姿を見て、協力してくれるのか叶は使っていた箸でおかずを掴み、俺の口へと運ぶ。
「楓太兄ぃ、はい、あーん」
申し出はありがたい。断る気はなかったけれど、愛花とアキラが見ている前ではなんだか気恥ずかしくて、一度は遠慮する。
「大丈夫だよ叶、そこまでしなくても……」
「いいの! これくらいしてもらったって、誰も文句言わないよ!」
叶は予想通りの返しに、俺は敵わないなと思いながら、大人しく口を開けた。
間接キスと思わなくもないが、叶が何も言わない以上、俺も特に口を挟まない。
「美味しい?」
「あぁ、うまいよ」
「良かったぁ、ふふっ」
3人で作った夕食だからこその安堵だったのだろう、叶は愛花とアキラを見てから笑った。
それからも叶は最後まで食べさせてくれた。止め時がわからなかったが、叶の好意を素直に受け取ることにした。
「いろいろと左手でやれるようにしないとな……」
「怪我をしている時まで何かしようと思わなくていい。頼れる時は頼ってくれ。過ごした時間はまだ短いかもしれないが、私達は家族のようなものなんだ」
「……家族、か」
ありがたい言葉だった。
あの日々が嫌だったわけではないが、俺は兄弟がいるような家庭に憧れがあったのかもしれない。
賑やかで、支え合って。それはあの頃も同じだったけれど。これは、居心地がいいと感じている俺がいた。
「そうだな。いつまでここにいるかは分からないけど、それまでは、家族ってことに」
「……じゃあ楓太さんは、アタシらの兄になるんすかね」
「やっていることは主夫だから、どちらかと言うと父親ではないか?」
「でもお父さんはいるし、やっぱりお兄ちゃんじゃない?」
他愛もない話。それだけなのに、頬の内側がむず痒くなる。楽しいし、そう思ってくれる事が嬉しかった。俺なんかをそれほどまで慕ってくれることが。
「楓太。誕生日は何月だ?」
「俺は11月」
「そうか、私は12月だから楓太の方がはやいな」
「じゃあ楓太兄ぃが1番お兄ちゃんだね!」
一気に3人も妹が出来てしまった。
守るべき存在なのだが、3人の強さを考えるとそれも必要なさそうだ。とはいえそういう事を抜きにして、これだけの美少女達が自分の妹と考えると悪い気分になるはずもない。
「じゃあ、これからは本当の意味で楓太兄ぃだね!」
「あぁ、よろしくな、叶」
本当の妹のように思えてきて、俺は叶の頭を撫でた。
嬉しそうに目を細める叶は、子猫のようだった。明日からも続く日々に心が踊りそうになる。お世話になる先が八月朔日家で本当に良かった。
「そうだ! 楓太兄ぃ、腕使いにくくて背中洗えないだろうから、今日は私が背中流してあげる!」
「へ?」
「え?!」
俺も驚いたが、それ以上にアキラが驚いていた。叶もそんな様子のアキラにすこし戸惑う。
「ど、どうしたのアキ姉ぇ」
「あ、いや……別に」
はっきりとしない態度だが、叶はそれ以上は追求しなかった。そして再び俺の方を見た。続く言葉はさっきと同じで、背中を流してあげるというものだった。
「いいんじゃないか? 実際少し辛いだろう」
「う、うーん……叶がいいなら、それでも」
「決まり! よーし、濡れてもいいように水着とってくる〜」
叶が自分の部屋に水着を取りに行く。その流れで、俺が叶に背中を流して貰うことが確定した。
まあ、邪な気持ちはないし、助かることはほんとうだから俺も平常心で風呂に入ることにしよう。
「……」
心做しかアキラの視線が鋭い気がしたけれど、気のせいだろう。
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