『風雷』襲撃 Part5
次の更新で風雷編はおそらく終わります!
『全員アタシが帰ってくるまでついてくるな。山田の話じゃ、いつどこで見張られているかわからないからな』
それがアキラが飛ばしたメッセージだった。
これは一理あり、楓太たちが共に行動しようとすれば、それが風間に伝わり華子の身に危険が及ぶ可能性がある。
じっとしていられない感情を押し殺して、楓太たちは家で待っていた。
だがそれで大人しくしていられるほど、彼らも大人ではなかった。
「……愛花、叶。頼まれてほしいことがある」
「なんだ」
楓太は二人に話した。その頼まれて欲しい内容を。
それは一見無謀にも思える作戦だった。だがこの二人ならば可能かもしれないと、楓太は信じていた。いや、信じなければならなかった。
「任せろ、やってみせよう」
「アキ姉ぇ一人じゃ心配だもんね!」
「ありがとう、二人共……」
やはりこの二人は頼もしいと、改めて思い直した。
胸騒ぎは、高鳴りへと変わる。アキラをただ心配するだけから、彼女を助けに行くのだと。
★★★
風間は笑っていた。張り紙に書いたとおり、本当に単身でこの場にアキラがやってきたからだ。
「何がおかしいんだよテメェ」
「いや……この状況を見れば、そりゃあ笑うだろ」
風間の言うこの状況とは、アキラを囲む風雷の構成員100人の事を示していた。
アキラはそれを気にはしていなかったが、本人よりも危険視している者がいた。
「アキラさんっ、だめっこの人たちアキラさんを……!」
捕まっている華子が、自分よりもアキラを心配していた。突然連れ去られて怖くて仕方なかっただろうに。
「大丈夫だ華子。いますぐコイツ等ぶちのめすから、一緒に帰るぞ」
「おいおい……まさかと思うが、この数相手に一人で勝てると考えてるのか?」
「黙ってろよ雑魚の親玉がよぉ」
「あ?」
「雑魚ってのは群れてるから雑魚なんだよなァ……」
その言葉を聞いたアキラの言う雑魚達が怒号をあげる。「舐めやがって」「ぶち殺してやる」「風間さんになんて事を」。たった一人の少女に対して投げかける言葉ではない。
しかし風間は落ち着いていた。事態は変わらず、優位に立っているのは自身だとわかっているからだ。
「群れを作るのは優位に立つ上で重要なんだぜ、一匹狼」
「訊いてねぇよ。そもそも、テメー等なんでアタシを狙ってんだよ」
アキラは自分が狙われてしまったがために、華子を巻き込んでしまったことに苛立っていた。
それと同じくらい、人質を取るようなやり方をする風雷にも嫌悪感を隠せていなかった。
「簡単な話だ。お前、暴れすぎたんだよ。目の上のたんこぶは早いうちに潰しておかねぇとな」
「……あ?」
「お前は気付いていないかもしれないが、一体何人ものメンバーがやられたことか……」
「もう良い喋るな」
呆れてしまっていた。
たかがそれだけの事で、人の友達を誘拐した挙げ句、ここまでの騒ぎにしていたのか、と。
やはり所詮は小物の集まりか、とアキラは哀れみさえ覚えた。
「お前らみたいなモブの集まりの事なんかどうでもいいんだよ」
もう話をしている事にも耐えかねたのか、一歩前へと踏み出す。華子は風間のすぐ隣りにいる。
アキラが動きを見せた瞬間、風間は華子を自身の方に引き寄せて、その首筋にナイフを押し当てた。
「動くなよ八月朔日アキラ。お前、本気でこいつを助けられると思って来たんじゃねぇだろうな」
「テメェこの野郎……」
「お前と、こいつが助かる方法はただ一つだ。……おい、雷」
風間が呼ぶその名前は、つい先程聞いたばかりのものだった。土管の上で寝転がり眠っていたのか、雷はあくびをしながら起き上がる。
立ち上がっていなくても、雷がかなりの巨体であることは理解できた。はちきれんばかりの筋肉と、棍棒のような足。
不自然なほどに発達しすぎたその体が、雷の強さに繋がっていた。
「あれが八月朔日アキラか……ほっせぇ女だな。殺しちまうかも」
「構わねぇよ。……アキラ、お前こいつが満足するまで殴られろ。最後までお前が耐えられたら、こいつもお前も開放してやるよ」
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