『風雷』襲撃 Part4
次回は日曜日更新です。
風雷編も次でおしまいです。
昨日、風雷のメンバーと思われる不良達に襲われた楓太とアキラ。
何か対策できることはないかと、楓太たちは風雷の被害にあったという叶のクラスメイトと話をすることにした。
「おいおい、大丈夫かお前。電話とかでも良かったんだぞ」
「いや……大丈夫です。僕もこの話をしたかったんです」
彼は以前、叶に告白して強烈な返事を返された山田くんだ。その顔には風雷にやられた傷跡が生々しく残っていた。
むしろここまで手酷くやられてここに来てくれているあたり、やはり根性がある少年なのだろうか。
「毎回そうなのかはわかりませんけど……僕が追い込まれた状況をお話します」
まず一つは、風雷はとある場所へ相手をおびき出すこと。街外れの、昔から不良のたまり場になっていた廃工場。巡り巡って、今は風雷が占拠しているらしい。
その誘き出す方法は、相手にとって大切な人を誘拐し、返してほしければ一人でそこまでやって来させる。ただし連絡してから三時間以内に来なければ、その場で大切な人を殺すと脅される。
警察に通報しようとすれば、いつでも監視している連中が工場にいる風間に連絡されてしまうこと。
そしてその工場に向かえば、待機させている100名の不良たちにリンチを食らう。今回は山田くん相手なので2、3人だけだが、その数を考えれば逃がす気はない事は、嫌でも理解できてしまう。
「僕には妹がいて……学校からの帰り道に拐われていました」
「もう犯罪じゃないか。警察には言えないのか?」
「出来ませんよ、あれだけの数がいたんじゃ……逃げられた誰かに恨みを返されてしまいます……」
曰く、監視の目は今でも続いているらしい。余計な考えをしないように、と。
「ふざけやがって……」
「度し難いな。私が潰してやろうか」
「そうだよ山田くん。私達がなんとかしてみせるよ」
ここに集った3人の最強番長たち。
頼もしい事はこの上ないが、山田くんはそれを良しとはしなかった。その理由にはとある男が関わっていた。
「みなさん、風雷というからには……風神……これは風間栄人と、雷拓哉の二人の名前から取っていて。この雷拓哉が……危険すぎるんです」
雷拓哉。
三度の飯より人を殴ることが好きな、肉体的な加虐体質の極みのような男だ。雷は鍛えに鍛え上げた肉体を存分に奮い、相手を徹底的に傷めつけていく。
巷では、この地域一帯で殴り合いをさせれば、雷拓哉が最強なのではないかと噂されている。
「た、確かにみなさんもとてつもなく強いと思います。だけど、雷拓哉は……」
「……山田くん、もういいよ」
楓太は山田くんの肩に手を起きそう言葉をかけた。一つ一つ口を開くたびに、体が震えていたからだ。
「ごめんね、でもありがとう。いろいろ教えてくれて」
山田くんの顔にようやく安堵が訪れる。
そして、ここでおそらく全員が気になっていたであろう一つの疑問。
「でもなんでアキ姉ぇたちは狙われたの?」
「知らねぇ……その風雷とも接触した覚えはなにもねぇからなぁ」
「楓太というのも考えにくいだろう。狙っていたのはアキラで間違いないと思うがな」
答えのない疑問を考えていたが、何も思いつかない。
アキラ自身になにも自覚がない時点で、思いつくものもなにもないのだが。
他の誰かと勘違いをされているのではないか? と誰かが言いかけたその時に、狙われているのはアキラであると確定付けられてしまった。
一回のインターホンの音によって。
「あ、なんだ?」
「見てくるよ」
玄関に向かい、外へ出る楓太は、ポストに貼られていた紙を見つける。
そこには、事態は想定よりも進み深刻であることを示されていた。
「これは……」
「楓太さん? なんすか、それ」
「アキラ! これ……!」
その紙には簡潔にこう書かれていた。
『八月朔日アキラ 吉川華子を返してほしければ 一人で港の廃工場まで来い』
「アキラ、吉川華子ってお前の……」
「答えあわせてしてくれて、ありがたいじゃあないすか」
その顔をみて、楓太は心臓を掴まれたような感覚に陥った。
声色こそ落ち着いているが、その顔には鬼が宿っていた。
「ちょっとぶち殺してきます」
近所のコンビニに行ってきますくらいの感覚でアキラは走り出した。一歩踏み込んだ、足場のコンクリートは凹んでしまっていた。
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