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居候高校生、主夫になる〜娘3人は最強番長でした〜  作者: 蓮田ユーマ
とある日の八月朔日家。
134/134

八月朔日3姉妹とトレーニング。


「3人に、俺に特訓をつけてほしいんだ」


 とある日の正午、俺は常々抱えていた悩みのような物を3姉妹に打ち明けた。

 あまりにも突拍子もない話で、少々戸惑っていた。それもそうだろうな、そんな話今までしてこなかったから……。


「……どうしたんだ楓太? いきなり特訓だなんて」

「いやな……」


 これは別に、3人に対して何かを思っているわけではないが……時々俺自身がふと感じる事がある。

 ……守られ過ぎじゃないかと。

 思い出したくもない事が多すぎて、ここでは話題に挙げないが。

 とにもかくにも、つまりは俺にも男としてのプライドが、多少はあるという訳だ。

 

「特訓、特訓か……」

「そもそも皆は、何をどうしてそんなに強くなったんだ?」


 特に普段から、何かをしている様にも見えないが……。

 

「う〜ん……あぁでも常にこんなのは身につけてるけど」


 何を、と訊く前に。

 叶が手首から外した、リストバンドだと()()()()()()がゴトンと音を立ててテーブルに置かれた。

 いや、まさか……そんな格闘漫画みたいな……。


「……えっ、重……」


 少し持ち上げようとして、ちょっとショックを受ける。これを着けて平然としていられる自信が無かったからだ。

 それも両手に。

 そしてそれはこれだけじゃ終わらない。

 これもそうだよと、通学用のローファーも、鞄も、身に付けるものが何もかも特別仕様だった。

 今までそれに気付けなかったのは、3人全員が平然としてそれらを身に着けて、日々を過ごしていたからだ。

 何故そんなに涼しい顔をしていられるのか。

 不思議だ、いや、本当に。

 ……はっきりと間近で見た事がある訳ではないが、筋肉がゴリゴリもりもりと言うわけでもないのに。


「まぁ遺伝子的なモンが強いんじゃないかと」

「それはあるだろうな。なんせ父親がアレだからな」

「血筋って事か〜」


 あくまですごいのは父親だと言うが、それだけではここまでにはなれないだろう。現に先程見せてくれた、何で出来ているのかまるで分からないリストバンド。


「でも、皆はさ。強くなりたいってのはあるんだろ? それに向かって頑張ってるんだから、遺伝子とか、血筋とかは関係ないだろ? ……俺にも、それを教えてほしいな」


「うぅん……そう言われちゃ、応えないわけにもいかないっすね」

「じゃ、皆で昔お父さんに教わったのを伝授してあげようよ!」

「ん……そうだな。そうしよう」


 そうして3姉妹による特訓が始まる。

 始まりこそ俺も気合を入れていたが、その気合もバキバキに折られてしまう。

 まずはこれを、と例のリストバンドを両手に着けて何をしたかと言えば。


「よし、走ろう楓太」

「うん……どれくらい?」

「動けなくなるまでだ」


 具体的な数字を期待したがそうもいかないらしい。

 ここで不安を口に出すのも、弱気になるのも一度特訓をつけてくれと言った手前、引くに引けない。


 3人の後に続くようにランニングを開始する。

 どこまで行くかは自分の体力次第。

 

「はっきりと行っておくが、これが正しいトレーニング方法だとは私達も思っていない。本当に無理は……」

「いや、大丈夫だ。やらせてくれ」


 それからは無心で走り続けた。    

 3人に応援されながら、ひたすらに。

 先に言ってしまうと、俺は当然このランニングだけで動けなくなり、翌日も激しい筋肉痛に襲われる事になる。

 ……それでも俺は、この行いには意味があると思っている。

 

 だって始めない事には、何も進まないから。

 風雷、羅生門……過去に襲われ、助け出され。

 不甲斐ない思いを何度もした。

 あの時、俺がもっと強ければ、頼もしければ。


 あんな事にも、なっていなかったんじゃないかと。

 たらればの話だが、時々そう考える。

 目の前の三人は、そうは思っちゃいないようだけど。


「大丈夫か楓太?」

「アタシらのペースももうちょい落とすべきだったかな……」

「私がおぶってあげよっか!」

「……ありがとな、みんな」  


 ……焦る事も無いか。

 今は頼る事も多いだろうが、きっと必ず。

 

「俺、皆の事守れるくらい強くなるよ」

 

 そして、後日日頃の運動不足が祟ったか、信じられない程の筋肉痛に襲われるのは、また別の話。

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