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居候高校生、主夫になる〜娘3人は最強番長でした〜  作者: 蓮田ユーマ
とある日の八月朔日家。
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叶の体育大会。

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 とある日の朝、俺は普段よりも早く起床し、4人前の弁当を作っていた。

 ひとつひとつではなく、大きな弁当箱にだ。

 俺と、愛花、アキラ、叶。  


 全員もれなくそれなりに食うから、結構な量になってしまうから、少々大変だ。


 ──今日は、叶の中学校の体育大会。

 日頃から多忙の真奈美さんは、残念ながら今回の体育祭には参加出来ないが、その分の応援を俺達がしよう。

 そんな想いも込めて、弁当作りに励んでいると2階から誰かが降りてきた。


「おはよぉ、楓太兄ぃ」

「おはよう。早いな、もう少し寝てても良かったのに」

「今日が楽しみで目ぇ覚めちゃった」


 寝癖がついた髪を整え、一足先に朝飯を食べてもらう。弁当の中身の、細かいおかずたちだ。


「お、卵焼きとウインナー、唐揚げ、あとは……」

「残りは、昼の時のお楽しみだ」


 朝飯の後、叶は支度を終えて体育大会の準備のため先に家を出た。

 次第に愛花とアキラも起きて──アキラは相変わらず起こす必要があったが──必要なものをまとめ、3人で叶の通う矢ヶ峯中学校へ向かう。


「良い天気になったな、叶も良い気分だろう」

「叶は雨の日とか、わかりやすくテンション低めなのってそういう事なのか?」


 カラっと晴れた陽の下、他愛の無い話を続けていた。その道すがら、段々と同じ道を行く人が増えていく。もちろん偶然でも無く、その全員が矢ヶ峯中学校に。 


「やっぱり早めに来て正解だったな、良い場所取るとなると」


 俺達が着いた後あたりから人が次々と増えてきたから、良いタイミングで来られた様だ。ピクニックシートを敷き、いざ始まる時を待つ。


 聞き慣れた入場のテーマが校庭に響く。

 足並みを合わせ、各チームがそれぞれの陣地に。

 その中で、白組から見慣れた女の子がこちらに向かって手を振っていた。


「そういえば、叶は種目何に出るんだ?」

「あぁ、全部らしいっすよ」

「……全部?」

「全部」


 ……体育大会の参加種目って、なんだかんだ1人3つとかじゃないのか。 

 確かに叶なら、何に出ても無双してしまいそうだが。


「ハンデとして、リレーでは叶だけ2週走るみたいだとか」

「……それ、学校側も明確にバケモンって認めてるよな」 


 どういう処置なんだそれは。

 ……それでも勝ってしまいそうだと、思わせるのは叶の力だろうか。

 そしてそれは、俺の想像以上に現実となる。


 障害物競走では、障害物なんてなんのそのと駆け抜け、棒倒しではバッタバッタと薙ぎ倒し、100m走ではぶっちぎり、騎馬戦はもはや語るまでもない。

 けれど二人三脚やムカデ競争等の、協力が大切な競技に関しては息を合わせていた。


 そうして午前のブロックが終わり、昼休憩になる。

 さわやかな汗をかいた叶が駆け足でやってきた。


「お腹すいた〜!」

「ははっ、あれだけ動けばそりゃあそうだよな」


 用意していた弁当を広げる。

 1段目は、今朝叶に朝飯として出した物と同じだが、2段目は初お披露目だ。


「あっ、すごい! コロッケにハンバーグ! トンカツまである!」


 叶の好物ばかりを詰め込んだ真っ茶色の極みのような弁当だが、結局こういうのが一番美味いし、何より喜んでくれる。


「おいしー!」

「やっぱ、流石楓太さんって感じ」

「既に胃袋を掴まれているな、私達は……」

「ゆっくり食えよ〜」


 あれだけ大量に用意した、弁当箱の中身はあっという間に胃袋の中へ。惚れ惚れするほどの食いっぷりに、若干ギャラリーが集まっていた。

 だが、それは食いっぷりがどうだのの前に、ただ純粋に叶達3人がここに居る事に意味があった。


「うぉ……すげ、あれって……」

「本物可愛いな……」

「本当にあれがバケモンみてーにつえーのか?」


 普段一緒に生活をしているから、俺はもう何も気にしてなかったけれど。やはり世間というか、この地域では有名人の3人が集まっているとこうもなるか。


「あの男は何者なんだ?」

「まさか3姉妹じゃなくて、その上に更に兄がいたのか……?」

「じゃああの男が最強……?」


 なんだか恐ろしい勘違いが起きている。

 これが原因でいきなり喧嘩を売られたりしないだろうな……。

 少々不安が残る昼休憩となったが、切り替えていこう。体育大会はまだ続く。


 たくさん食べてエネルギー満タンだと、叶はその後の競技も1位を総なめ。

 そしてそんな中、とある競技が始まる。借り物競争だ。ただ運動神経が良いだけでは勝てない競技だから、唯一叶が1着になれない可能性があるか。


 叶がお題の紙を広げる。


 その内容を見て、一瞬固まるが、すぐに動き出した。真っ直ぐに一直線に俺達の下へ。

 何やら悩んだ表情だったが、それさえも一瞬で。


「……うん、やっぱり皆来てほしい! 行こう!」


 叶に3人共連れられ、ゴールへと向かう。


「おいおい、なんてお題なんだよ、アタシら3人って」

「姉妹でもないなら……なんだ?」

「そんなの決まってるでしょ!」


 叶はその紙に書かれたお題を俺達に見せて、高らかに叫んだ。

 それを聞いた俺は、心から──そう呼ばれた事が嬉しかった。


 俺の事も、そう認めてくれるのかと。


「私の──『家族』!」

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