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居候高校生、主夫になる〜娘3人は最強番長でした〜  作者: 蓮田ユーマ
とある日の八月朔日家。
131/134

アキラとお菓子作り。

お久しぶりです。

完結して2年が経ちましたが、書きたいものがまだある為、1話完結のショートストーリーをちまちまとやっていこうと思います!

時系列はバラバラです。

ほのぼのとした物を書ければと思います。


 某日、八月朔日家にて。

 キッチンに並ぶは、計量カップやゴムベラ、市販のチョコレートに生クリーム、その他諸々。


 そして隣にはアキラがいる。


「……というわけで、楓太さん。今日はちょっと付き合ってもらいますよ」


 エプロン姿のアキラ。

 普段料理をするのは俺くらいのものだから、その姿がまぁ新鮮で。なかなか良い物を見ている気がする。

  

 ──さて、今日はどうしてアキラと一緒にここに居るのかと言うと。

 アキラの友達──華子というらしい──から作ってきたんだと、クッキーを貰った様で、それのお返しに生チョコを作りたいとの事。


「しかしなんで生チョコなんだ?」

「アタシが好きなんで」

「そっか。美味いもんな。ところで作った事は?」

「いや、無いっす。一度も」


 まぁ、だから今回頼られたわけだ。

 俺も頼られて嫌な気もするわけもなく、快く引き受けた。けれど俺も生チョコ作り、どころかお菓子を作った事はないから、初めての試みだ。


 レシピを眺めながら、慎重に。


「まずは普通の板チョコを細かく刻むみたいだ」

「細かく砕くと」

「えっ、いや刻む……」


 ギョッとして振り向けばバキッ! と素手で叩き砕いていた。……そういえば忘れていたな、八月朔日三姉妹は、皆家事がそれ程だったと。

 せめて包丁を使って欲しい、と伝えて再度板チョコを刻んでもらう。


「うぅん、こういう細かい作業はやっぱり得意じゃないっす……」

「でも、友達にお返し、するんだろ? だったら、頑張らないとな」


 なんとか刻み終えたチョコレートを、ボウルに移す。

 その後は生クリームを中火にかけ沸騰直前まで温める。

 湯気が出るくらいになれば、刻んだチョコレートと混ぜ合わせる。


「こうすか?」

「う〜ん、もう少し早くてもいいんじゃないか? 持ち方を、こうしてこうやって……」 


 横からじゃやりにくいから、アキラの背後から回る。

 アキラの手を掴み、大体の力加減を覚えてもらう。


「ひゃっ……!?」

「ちゃんと混ざらないと、上手いこと出来ないみたいだからな」


 妙にアキラの手が熱い。

 湯煎の為沸かしたお湯のせいか? 


「……よし、多分これくらいでいいな」


 クリーム状になったチョコレートを、器に移し冷蔵庫でしばらく冷やす。

 いざここまで済ませてみると、案外簡単だったかもしれない。


「……いや、ホント。楓太さんってそういう事、さらっとするっすよね」


 やや顔が赤いアキラに、への字口でそんな事を言われる。

 そう言う事、とはさっきの手を掴んだ事だろうか。

 確かに、あんまり簡単に女子の手を掴むものではなかったかもしれない。


 ただ、自分で言うのもなんだがこの八月朔日家にも慣れてきていて、アキラだけじゃなく、愛花、叶とも関係を築けていると感じていた。

 けれど、弁える所はそうするべきだったか。


「あっ、嫌だったわけじゃなくて……むしろ良いってーか……でもびっくりしたんで、今度お詫びしてください」

「お詫び、ね……俺が出来る範囲で頼むな」


☆☆☆


 冷蔵庫でチョコレートを冷やして1時間。

 しっとりとした生チョコに変身していて、後は食べやすいサイズに切り分けて、ショコラパウダーをかけて完成だ。


「おぉ、良い見た目になったな」

「めっちゃ美味そうっすね! ……これなら、渡しても恥ずかしい、か」


 用意していた包、入れ物に生チョコを。

 量がそれなりにあり、包は2つ出来上がっていた。


「上手く出来て良かったな。友達、喜んでくれるといいな」

「はい……それも、そうなんすけど」


 手の上で何やら持て余している。

 わずかな沈黙があったかと思えば、アキラは2つある内の一つを、俺に手渡してきた。


「楓太さん、その……いつもアタシらの為に、ありがとう、ございます。……こんな事でお礼ってわけじゃないすけど」

「アキラ……いいのか?」

「はい。……華子にお返しは本当ですけど、楓太さんにも何かしたくて」


 ……こんなに慕ってくれていると、自然と嬉しくなって口角が上がってしまう。

 

「ありがとうな、アキラ」

「……うっす!」


 ひとくち食べた生チョコは。

 口の中で、ほろりと溶けていった。

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