まだ何も分かりあえていない僕たちだけど。
次回エピローグです。
藤城組へのカチコミ、もとい襲撃から数日が経っていた。
あの出来事は、世間には藤城組と対抗する組織による襲撃とされていた。
なぜそうなったかはわからないけれど、それともそう説明する他なかったのか。
女子高生三人組と、二人の男が壊滅させたなんて、なにかの冗談かと思われてしまうからな。
ところで御剣はというと、もう全てをやりきった達成感からか仕事を始めて平和に過ごすそうだ。
絶縁状態だった両親の元へ戻り、小町と仲良くしているらしい。
御剣とも、不思議な縁があったものだ。いつかまたすぐに会えそうだ。
そして俺は、もう一つの問題と対面していた。
「……なんで俺なんか助けたんだ」
病院のベッドで目を覚ました楓斗は、そう呟き俺を睨んでいた。
「あのまま放って置くことも出来ないだろ」
「……大したお人好しだな。……いいか、俺は、俺たちの父親を殺したんだ」
「……そうだな」
「なんでそう落ち着いていられる……」
楓斗の疑問も理解できる。
親の仇といえばそうなのだから、もっと怒ったり恨んだりするものなのだろう。
「落ち着いている、のかはわからない。俺がおかしくなったのか、それとも……」
それ以上に、目の前の楓斗に哀れみを感じていたのかもしれない。
それだけの感情でどうにかなる事ではないが、俺自身は……もうそれでいい。
許せないことも確かだし、でもそれ以上何かを思えなかった。
諦めにも似ているかもしれない。
「……とにかく。俺はお前のことは憎みはしないよ。だけど、許すことはできない。だから……ちゃんと償うんだ」
「……償う、ね」
楓斗は窓の向こうを眺めてそうぼやいた。
「もう帰れ……兄貴ヅラしていたいならな」
「……わかったよ」
★★★
わけがわからない。
何を考えているのか、俺には理解ができない。
俺が憎くないのか。あれだけで済ませられるのか……?
「俺は何考えてんだ……まるで恨んでいてほしいみたいじゃねぇか」
いや、実際そうなのかもしれない。
俺は誰かに罰してほしかったのかもしれない。
自分勝手な事だが、きっとそうだった。
「それも含めて、馬鹿なガキだったのかもな……」
結局は空っぽな人生だったのかな。
もう、誰も何も、俺の元には……。
「……でも俺はさっき」
兄貴ヅラ──それを許した。
繋がりを求めているというのか?
この期に及んで、自ら断ち切ろうとして。
どこまで甘いんだ俺は……。
でも。
もしも、いつか俺が何もかもから許されたのなら。
その時は、俺は──
「また会おうぜ兄貴……」
次回で最終話です!




