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元凶、そして終焉。

残り2話です。


 その銃声は、すぐ近く。

 いつからそこに居たのか、最初から居たのか。

 

「勝手なことばかりするなよな、楓斗……お前は俺の言うことを聞いていればよかったんだよ」

「た、けばやしさん……」


 竹林──そう呼ばれた男の片手に、今しがた放たれた銃声の正体が握られていた。

 それに、竹林って……。


「まあ、ちょうどいいかもな。これで、あの忌々しい猛のガキ共を殺せる」

「お前が……」


 こいつが母さんの仇。

 どうしてここにいるのか……考えてもわからない。

 だが察することは多い。


 逮捕されたと聞いたが、出所したあとは楓斗をここまで育てたのは、竹林なのかもしれない。

 そして、この日のために……楓斗に父さんを恨むように仕向けたのだろう。


「楓斗っ……!」


 まずい、誰が見たって放っておけば助からない出血量だ。

 

「楓太さん!? 中で何が……」

「入るなよぉガキども! その扉があいた瞬間、こいつの体に穴が空くぞぉ!」


 外にいる皆に叫ぶ。

 この状況……まるで……。


(父さんと、同じ……)


 俺が、誰かが動いてしまえば。

 あの手にある銃口が火を吹く。


「なんなんだ、あんたは……」


 思えば、俺達は。

 このたった一人の、顔も、性格も思想も知らない男に生活を壊されたんだ。


 そして、それが今もなお続いている。

 これが理不尽と言わずなんなのか。


「これ以上、俺達に……関わらないでくれ……」 

「気にいらねぇもんは徹底的に潰さないといけねぇからな……あいつも、あいつが残したてめぇらも」


 その銃口が、俺に向けられる。

 どうしたって、この竹林は止まらないのだろう。

 だけど……だからって、それを受け入れることなんて出来ない。


 ……そもそも受け入れるだのなんだのと、どうして虐げられている俺たちが大人しく従ってやる必要があるのか。

 そんなもの答えは一つだった。

 絶対にあるわけがない。

 俺は楓斗の前に立つ。


「なんのつもりだ?」

「こっちの台詞だ……これ以上、あんたの好き勝手にはさせない」


 ここで全部終わらせるしかない。

 俺の手で打ちのめすしかない。


「威勢がいいのは結構だが、それだけじゃどうにもできないこともあるんだぞ」


 その銃口が俺を睨んでいた。

 だが不思議と……俺の心は穏やかだった。

 静かな怒りを持ちながらも、落ち着いていた。


(絶対に、あの顔面に殴り込む)


 ……変わらず、俺を撃ち抜かんと拳銃を構えている。

 それを見て俺は峰十郎さんから教わった事を思い出していた。


『戦うことに置いて、相手の()()を感じ取る事は……何よりも必要なことだ』


 竹林の殺気。

 じわりじわりと感じられる。

 だけどまだ最高潮ではない。それが最高潮に達する時とは?


 決まっているだろう、それはあの引き金をひいたときだ。


「死ね」


 その殺気は、鋭く。

 臭いが変わったとさえ感じた。

 銃口が火を吹く。


 そして弾丸は放たれた。

 だがそれを察知していた俺は、引き金が挽かれると同時に躱した──完璧にではなく、頬をかすめて。


「なっ──」


 一瞬の動揺。俺はそれを絶対に見逃さない。

 既に俺の体は、竹林の懐へと潜り込み……これまでの全てを、ぶつけた。


「がぶっ!?」


 その鼻っ面に叩き込んだ。

 倒れた拍子に手から離れた拳銃を蹴り飛ばす。

 

「こ、このクソガキ──」


 武器を手放してしまった、その時点でもう竹林には未来はなかった。


 もう待ち切れない、我慢の限界……そう感じるほど、その扉は強くぶち開けられた。


「楓太さんに何してんだッァァァ!」


 アキラの一発。

 叶の一発。

 愛花の一発……ここまで来ると、少し同情しそうになる。

 

 竹林はぴくぴくと震えていた……死んでないだろうな。


「……終わったか」

「いやっまだだ、楓斗……!」

今回もここまでお読みいただきありがとうございます!

残り2話です、最後までよろしくおねがいします。

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