拳の重み。
思えばこれが、俺にとって初めての喧嘩だった。
しかもそれが兄弟喧嘩だなんて、全く想像していなかった。
けれど、喧嘩というにはあまりにも一方的で。
俺の拳は届かない。それどころか、楓斗から繰り出される一撃をなんとか防ぐことしかできない。
「おらどうしたんだよっ、こんな程度じゃやる気も出ねぇだろ!」
「くそっ……!」
次第にガードを崩されていく。
やはりというべきか、喧嘩慣れしている。
いつか襲われた、『風雷』や『羅生門』。そのリーダーたちと比べても、素人目で見てもキレが違う。
あれがスポーツだとするなら、これは実戦向けといったところか。
「ぐっ……!」
だがやられているばかりではいられない。
最初に決めた条件がなければ、みんなが来てくれるまで耐えればいいだけかもしれない。
だけどここは、ここだけは、俺がやらなきゃいけない。
そうじゃなきゃ意味がない。
「だぁあっ!」
「なってねぇんだよボケ!」
余裕でかわされて頬に打ち込まれる。
頬の内が切れて血がにじむ。
「っ、楓斗……お前、本当は後悔してるんじゃないのか……」
「あぁ!? 何言ってる!」
何が起こったのか知らない。
楓斗がどんな思いでここまで来たのか、俺にはわからない。
だけど、親を殺して罪悪感も何もないなんてことはあり得ない。そんな人間がいるわけがない……!
「後悔ぃ? そんなもんしてるわけないだろ!」
楓斗は殴るその手を止めず、声高に叫んだ。
俺の言葉を真っ向から否定する。
「ずっとそのために生きてきたんだ! むしろ俺の中には達成感で溢れかえってる!」
「ッ……」
いや、そんなわけはない。
やっぱり嘘をついている。
だってそうだろう。
あれが、達成感でいっぱいのやつの顔か?
「うおぉおっ!」
「ぐっ!?」
捨て身の一発。
ようやくのカウンター。楓斗も驚いた表情を浮かべる。
「お前が何を言おうと、俺はそれを否定してやる。お前が認めるまで!」
今回もここまでお読みいただきありがとうございます!




