テメーなんか噛ませ犬。
「……お、おい、なんか突っ込んでくるぞ!」
「御剣たちの仲間か!?」
楓太を乗せた彩愛のバイクは、その戦いの最中へと突撃する。
「あれ!? 彩愛ちゃん!」
「手伝いに来たわよ叶!」
走行中のバイクから飛び降り颯爽登場。
けど後ろにいた俺のことを忘れてないか。
「うおおおお!?」
格好がつかず俺はゴロゴロと転がり落ちる。
「おいおい、大人しくしてろって言ったのによ」
「悪い……けど俺にも用が出来たんだ」
御剣はそれだけ聞くと、「そうか」とだけ答えた。
現在の状況は見ればわかった。
なるほど、多勢に無勢とは言わないけれど、目の前にひろがる悪党たち。
「お前をどうしてやったらいい?」
「……たぶん、ここにいる連中を全部倒せばいい。それでたぶん、奥にいるやつに会えばいい」
「ははっ! 一人もやれそうな奴が無茶言うじゃねぇの」
「でも大丈夫!」
また一人吹き飛ばした叶が、彩愛と背合わせで、負けるつもりはない、そんな顔をしていた。
「なんならここはアタシらが食い止めておいてやるから、御剣、楓太さん守りながら突っ切れよ!」
「その通りだ、こんな奴らが何人いようと私達は負けない」
……この頼もしさは、やはり見えない力を与えてくれる。
これだけの数の差があるのに、そんなものは関係ないと思えた。
「よし、ついてこい楓太! ぐだぐだしたのも飽きてたところだ!」
「あぁ!」
★★★
「おいおい、なんでたかが数人のガキ共に押されてんだ……」
「た、竹田さん!」
「それに結局御剣も言うこと聞かなかったか……あ?」
竹田の視線の先……竹田にとっても見覚えのある少女。
あぁ、そうだ、と。
「あいつ……稼がせてもらったガキか。なんでいんだ?」
数年前では想像しようもない体術で、その体よりもはるかに巨大な男たちを殴り倒していく。
びっくり人間ショーでも見ている気分だった。
しかしあれを放って置くわけにもいかず、竹田は彩愛の前へ姿を見せた。
「おーい肉便器。久しぶりじゃ〜ん」
★★★
忘れもしない。
耳にこびりついた、悪寒を覚えるこの声。
トラウマが蘇る──けれど、吐き気よりもこみ上げるものがあった。
それは、あいつに対する明確な怒りだった。
「竹田ァ……!」
「先生って言えよ」
何が何やらわからない。
なんでここにいるのなんて知りようがない……でもそんなの関係ない、どうでもいい、問題なのは一つだけ。
「叶、手ぇ出すんじゃないよ……ここでこいつ潰す」
「うん!」
他の誰にもやらせない。
ここで、自分の手で報復する。
竹田はそんな私をみて笑っていた。
「さしずめ俺は中ボスかぁ? 一応俺もそれなりの立場だからなぁ」
「馬鹿言ってんじゃねーよロリコン野郎が──」
一足で踏み込み、竹田の懐へ。
「なっ──」
竹田は一つ勘違いをしている。
竹田は中ボスなんかじゃない……そんな大層な立ち位置にいられると思うなよ。
「テメェっーなんかなぁっ!! ただの雑魚の噛ませ犬なんだよぉッ!!」
回し蹴り。
蹴り抜くのは、散々悪さしてきた汚ぇブツだ。
「ぎっ……!?」
「……あぁ、あと、お前さ」
白目を剥いて痙攣している竹田に、聞こえているかわからないけど、最後の言葉をかけてやった。
「粗チンのくせにイキってんじゃねーよ、雑魚」
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