『楓斗』
終わりに向けて文字数を増やそうと思うので、更新頻度落ちます。
「皆、大丈夫かな……」
公園のベンチで休みながら、俺は皆の心配をしていた。
今頃藤城組と戦っている……俺に出来る事は、ただ無事を祈るだけ。
「ん……?」
ふと、正面を向くと。
そこには見知らぬスーツ姿の男がいた。
歳は近そうだが……こんな昼間に、このタイミング、スーツ姿なんて少し身構えてしまう。
「そう警戒しないでくれよ」
俺の心の内を読んだかのようにそう言った。その男……少年は俺に歩み寄り、同じベンチに腰掛ける。
懐から何かを取り出す。煙草だった。どう見たって未成年であるだろう姿からは、予想外の代物だった。
「吸える歳?」
「いや、せんせーにバレたら怒られる歳」
じゃあやめておけよ──とはわざわざ口にはしなかった。
そもそも彼の名前も知らない。けれど、一つだけ俺の中で、確信に近い予感。
もしかすると、藤城組の人間かもしれない。
本当にそうなら迂闊だった……むやみに外に出たりするのではなかった。
「俺はさ、あんたに会いに来たんだ」
「……何のために?」
「それは……あぁいや、その前に自己紹介でもしなきゃな、俺の事……教えないとな」
彼は煙草を吸い続けながら、自分自身の事を……俺の予想を超えた名が飛び出した。
「俺はあんたの弟だよ──宮下楓斗だ」
言葉に詰まる、とはこの事か。
名前を聞いても、イマイチぴんと来なかった。理解が追いついていないと言ってもいい。
10年以上前に連れ去られた弟……存在すら最近知ったばかりの俺には、そう告げらたとて、何を返せばいいか分からなかった。
そんな俺を見て、彼は、楓斗は……無邪気に笑っていた。
「なにバグってんだよ、感動の再会だぜ?」
「え、あ、あぁ……そう、なんだよな」
彼が宮下楓斗である証拠はないのだが、少なくともその名前を出せるのなら、無関係でもない。
それなのに、この胸に残る強烈な違和感は。
得体のしれない、何か。
「……楓斗、お前は……何をしに俺の前に現れたんだ。それに今までどこに……」
にやりと笑い、俺を見る。
「その前に一ついいこと教えてやろうか」
ベンチから立ち上がり、楓斗は煙草を踏み潰す。
そして煙を吐き出すその口から、飛び出したのは、さらに俺の情緒を不安定にさせた。
「宮下猛……親父は、俺が殺した」
今回もここまでお読みいただきありがとうございます!
完結後は妙なシリアスのないラブコメ新作を書くつもりです。




