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居候高校生、主夫になる〜娘3人は最強番長でした〜  作者: 蓮田ユーマ
『風雷』VSアキラ編
12/134

『風雷』襲撃 Part1

長編のときは、三人称視点で進行していきます。

 青春の風が吹く夏とはなんだろうか。

 部活動に励む少年達に吹くのか、想いを寄せた恋文をあの子の机に隠す時か、それとも親しい友人たちと他愛も無い話で笑いあう時か。


 様々な場面があり、どれもが正解で間違いなどない。彼らが少年少女である限りはその夏は青春なのだ。

 そう、例えそれが──


「か、勘弁してくれぇ……」

「先に喧嘩売ってきたのはお前らだろうが」


 汗ではなく血と歯が飛ぶグラウンドであろうとだ。

 不良連中からすれば命を賭けての大勝負だったのだろうが、アキラにとっては軽い運動程度でしかなかった。

 

「アキラさん、大丈夫……?」

「ん? あぁ、なんの問題もねぇよ」


 アキラの友達、吉川華子は不良の心配をしたのか、アキラの心配をしたのかそんな言葉をかけた。アキラの強さを十分知っている華子だから、前者である可能性がある。


 そもそもただの不良相手如きで心配されたらアキラは不機嫌になる。自分の強さに絶対的な自身を抱いているからだ。


「アキラさんは本当に喧嘩が強いんだね」

「コイツ等が弱いだけだよ。帰ろうぜ」


 華子に持ってもらってきた鞄を受け取り夕日に向かって歩き出す。

 

 時折、どうしてアキラは華子と友達なのかを訊かれることがあった。まるで正反対の性格の二人で、何が噛み合ったのか常に一緒にいる。

 アキラは否定するが、傍から見れば親友と呼んでも差し支えないほどだ。

 

 二人が初めて接触したのは入学した時なのだが、それはまた別の話だ。


「そういえばアキラさん、『風雷』って知ってる?」

「なんだそりゃ」

「最近暴れてるチームだって。クラスでも結構話題になってるんだよ。悪い意味でだけど……」


 チーム『風雷』。

 それは二人組のトップが率いる不良グループだ。風雷は卑怯な手段に手を染めることに一切躊躇しない事で知られている。

 そして一度でもターゲットにされた人物は徹底的に、確実に潰すまでどこまでも追い続ける。

 

「ふぅん。それがどうしたんだよ」

「うん、アキラさん、結構いろんな不良の人たちと喧嘩して勝っていくから、いつか風雷の人たちとぶつかっちゃうんじゃないかって……」

「なんだ、アタシの心配してんのか? 風雷だかなんだか知らねぇけど、まともな喧嘩でアタシが負けるかよ」


 アキラの自信を頼もしいと捉えるか、慢心のしすぎと捉えるかは人によるが、華子にはそれが頼もしいと思えた。

 弱気なアキラを一切見たことがないから、心配はしたが心のどこかではアキラならそれも不要かと、華子は「そうだね」と笑った。


★★★


「す、すみません……連れの女、拐おうとはしたんですが……」

「失敗したんだ」


 青髪のドレッドヘアーが揺れる。男はルービックキューブに集中して、報告してきた傷だらけの仲間を見ようともしない。

 

「強かった?」

「お、俺たち5人じゃ、とてもじゃないけど勝てそうには……」

「そっか」


 完成したルービックキューブを投げ捨てる。

 男の名前は風間栄人かざまえいと。チーム風雷のトップの一人だ。 

 風間は自分の目の前で正座をしている5人に語りかける。声色は柔らかく、優しささえ垣間見えた。


「5人でかかっても勝てないなんて、その子強いんだね」

「は、はい」

「じゃあ次は10人で行こうか。それがダメなら20人、どんどん増やして100人でも送り出して行きなよ」


 チーム風雷の構成員の数は300人程だ。もはやただの不良グループの枠を超えているが、それは風間と、もう一人──いかずち拓哉たくやの統率力故と言える。


 二人が作り上げたこのチームに負けはないと自負する風間は、その場にいる不良達に告げる。


「八月朔日アキラを潰した奴は幹部にしてやる。どんな手段を使ってでも、風雷の名前に傷をつけたあの女を後悔させてやれ」

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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