続々・ファーストキス。
その一言は、この凍えそうな夜に突然現れた炎だ。
胸が熱くなり、指先までが滾っていた。
それは愛花も同じだったようだ。想いを伝えた後、白い頬がほんのりと赤く染め上がり、恥ずかしそうに目を逸らした。
「今言うことじゃない、っていうのはわかってるんだけど……今のこの状況だと、言うしかないなぁ、ってね」
「……ありがとう愛花。……でも俺は」
「わかってるよ。ごめんね、私もいじわるだよね」
俺はまだ応えを出せない。
アキラの事、叶の事。
2人の事を置いて、今ここで愛花の気持ちに応えることは出来ないんだ。
「……でも、一つだけ私もわがまま言いたい事があるの」
「わがまま? ……いいよ。出来ることなら何でもするさ」
「じゃあキスして」
「あぁ……へ?」
安請け合いをしたが、内容が内容だった。
しかも「なんでするさ」の「さ」から全く持って間髪入れずの即答だった。
そして俺の頭で、とある事実がぐるぐると回りだしていた。もしも、俺が愛花とキスをしたのなら、三姉妹全員とキスしたことになるのだが……それは果たして良いのだろうか。
……だけど、拒否したとしても。
「だめ?」
「だめ、というか……」
もういっそ開き直れたらどれだけいいことか。
アキラと叶の時にも感じていたが、こんなに簡単にキスをしていいのか?
それとも俺がおかしいのか、そんなにキスって軽くしていいものなのか?
俺はそれを愛花に素直に伝えた。
愛花はそれを聞くと、一歩近づき。
「簡単になんてしないよ。楓太だからしたいの」
迷いのない言葉と視線。
本気で言っている。それだけはよく分かった。
それに対して俺が出来る事は。
いま目の前で、耳を赤くさせて瞳の潤む愛花に恥をかかせない事だった。
俺たちを照らすのは、自動販売機の照明だけだった。
家を出た直後、あんなに寒かったのに。
今では汗が流れそうなほど火照っていた。
内側からの熱、そして。唇から伝わる愛花の熱。
「……ありがと、楓太」
「……うん」
……とにかく決めたぞ、俺は。
全ての事が片付いたら、一つの決断をする。
誰かと付き合うのか、それとも付き合わないのか。
その日が、来てくれるように。
俺は、俺達は明日を待つ──
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