表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/134

続々・ファーストキス。


 その一言は、この凍えそうな夜に突然現れた炎だ。

 胸が熱くなり、指先までが滾っていた。

 それは愛花も同じだったようだ。想いを伝えた後、白い頬がほんのりと赤く染め上がり、恥ずかしそうに目を逸らした。


「今言うことじゃない、っていうのはわかってるんだけど……今のこの状況だと、言うしかないなぁ、ってね」

「……ありがとう愛花。……でも俺は」

「わかってるよ。ごめんね、私もいじわるだよね」


 俺はまだ応えを出せない。

 アキラの事、叶の事。

 2人の事を置いて、今ここで愛花の気持ちに応えることは出来ないんだ。


「……でも、一つだけ私もわがまま言いたい事があるの」

「わがまま? ……いいよ。出来ることなら何でもするさ」

「じゃあキスして」

「あぁ……へ?」


 安請け合いをしたが、内容が内容だった。 

 しかも「なんでするさ」の「さ」から全く持って間髪入れずの即答だった。

 そして俺の頭で、とある事実がぐるぐると回りだしていた。もしも、俺が愛花とキスをしたのなら、三姉妹全員とキスしたことになるのだが……それは果たして良いのだろうか。

 ……だけど、拒否したとしても。

 

「だめ?」

「だめ、というか……」


 もういっそ開き直れたらどれだけいいことか。

 アキラと叶の時にも感じていたが、こんなに簡単にキスをしていいのか?

 それとも俺がおかしいのか、そんなにキスって軽くしていいものなのか?

 俺はそれを愛花に素直に伝えた。

 愛花はそれを聞くと、一歩近づき。


「簡単になんてしないよ。楓太だからしたいの」


 迷いのない言葉と視線。

 本気で言っている。それだけはよく分かった。

 それに対して俺が出来る事は。

 いま目の前で、耳を赤くさせて瞳の潤む愛花に恥をかかせない事だった。


 俺たちを照らすのは、自動販売機の照明だけだった。

 家を出た直後、あんなに寒かったのに。

 今では汗が流れそうなほど火照っていた。

 内側からの熱、そして。唇から伝わる愛花の熱。

 

「……ありがと、楓太」

「……うん」


 ……とにかく決めたぞ、俺は。

 全ての事が片付いたら、一つの決断をする。

 誰かと付き合うのか、それとも付き合わないのか。


 その日が、来てくれるように。

 俺は、俺達は明日を待つ──

今回もここまでお読みいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ