宮下猛 Part8
短編にて『キスしないと死ぬ呪いにかかったけど、ギリギリ頼めるのがお隣さんのOLお姉さんしか居ない』を投稿しました。よろしければこちらもお願いします!
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「ったく、お前ら宮下の野郎にバレたってマジで言ってんのかよ……」
「す、すみません、でも見つかったのはあのダボで……」
「一人でも見つかったら後は芋づる式にバレんだろうが! くそっ、これだから意識の低いチンピラは……!」
売買に関わっていた集団のうちの一人が、猛に連れ去られている場面を目撃した事を、このクスリの出処……藤城組の竹林に報告していた。
都合が悪いことは、人に押し付け責任転換。それは子供の頃からの竹林の悪い癖だったが、大人になっても治ってはいない。
「とにかく今夜は大人しくしてろ、いいか、間違っても俺の名前をだすんじゃねぇぞ──」
「確かに、必要ねぇなぁ」
その声に驚き振り返る。それと同時だった、竹林の顔面に拳がめり込んだのは。
回転しながら倒れていく竹林をみて、目の前の猛が仲間を連れ去った男だと理解する。そうなればチンピラ達は竹林など置き去りに逃げ出すだけだった。別に猛はそれで構わなかった。用があるのは、地べたに這いつくばる竹林だ。
「おい竹林さん……なにやってんすか、なぁ」
「て、め……」
「問答無用で来てもらう。あんたは、掟を破ったんだ」
「くそが……親父のお気に入りだからって、下っ端の分際で調子に乗ってんじゃねぇぞ……!」
竹林を拘束し、車に乗せ連行する。
永政の指示により、事務所へと連れて行く。
仮に誰が裏で手を引いていようと、話をするつもりだと永政は猛に伝えていた。
そんな猶予を与えず、すぐにその場で殺してしまえばいいのに。猛は胸の内ではそうぼやいたが、親父が言うのなら仕方ないかと言うとおりにした。
そして、他の構成員の目に当たらないように竹林を永政の前に。
「そうか、お前だったか……」
「……」
「……猛、席外してくれ。2人で話したい」
「わかりました」
その後2人が何を話していたのかは、猛は知らない。
だが一つわかった事は、竹林は組を破門、二度とこの事務所には足を踏み入れる事が出来なくなったことだ。
組の面子を潰しかねなかったというのに、随分と甘いものだと思わざるを得なかった。少なくとも、今まで荒稼ぎした分くらいは回収しても良さそうなものだが。
もしかしたらそれくらいはしているのかもしれないが、真相を知るのは永政と竹林のみだ。
だが後に、猛はひどく後悔することになる。
やはりあの時、永政の命に背いてでも。
竹林を殺しておくべきだった、と。
次回で過去編はおしまいです。
今回もここまでお読みいただきありがとうございます!




