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居候高校生、主夫になる〜娘3人は最強番長でした〜  作者: 蓮田ユーマ
プロローグ
11/134

梅雨。

 随分雨が降るなと、コンクリートに弾ける音で俺は店の外に目をやる。

 もう梅雨入りするような時期か。そう考えると俺が八月朔日家に居候を始めてから2ヶ月程が経ったということか。


「宮下くん、今日はもうあがってもいいよ」


 俺は居候と同時にアルバイトも始めた。家から近い、地元の靴屋で9時から16時まで働いている。それが一番ちょうどよく、家のことも出来る時間帯だった。

 

「ありがとうございます真島さん」

 

 店長の真島さん。真島さんは真奈美さんと昔からの友人とのことで、この靴屋も真奈美さんからの紹介で働き始めた。


「今日もご飯作るんでしょ? いつも偉いね」

「いやいや、世話になってる身ですから、これくらい」


 買い物を昨日済ませておいて良かった。雨の中買い物に行くのは結構面倒くさいからな。

 車を運転できるようになれば色々と楽なんだろうけど、それもまだまだ遠い。

 

「じゃあ俺は……ん?」


 スマホにメッセージの通知。送信主は叶からだった。内容は至ってシンプルで、傘を忘れてしまったから持ってきてほしいとの事だった。


 そう言われたら確かに、朝玄関に傘が残っていたな。あれは叶の傘だったのか。

 雨はまだまだ強くなりそうだ、早く行ってあげないと。


★★★


「矢ヶ峯中学……ここか」


 知らない中学校の校門をくぐるのは少しだけソワソワしてしまう。ここが母校ならまだしも、完全部外者だ。

 今回は叶を迎えに来たから、免罪符ではないけれどまだ気持ちが楽だった。


 叶を探して下駄箱に。そこで叶はスマホを眺めて待っていた。

 俺に気づいた叶が手を振っている。


「おまたせ叶」

「ありがとう楓太兄ぃ〜! 助かったよー」


 持ってきた傘を叶に渡す。

 雨音はさらに激しさを増して行く。傘をさしていても濡れてしまうが、無いよりはやはりマシだ。


「さぁ帰ろう。今日は豚カツだ」

「わーい!」


 今晩の夕食のメニューを教えると子供みたいに喜んだ。何度も言うが、本当に知らなければとてもじゃないがこの学校の番長とは思えない。


「そういえば、叶はもう受験か」

 

 中学3年生、もう受験勉強に取り組む時期だ。叶はどこか行きたい高校はあるのだろうか。

 

「うん、でも私勉強はあんまり得意じゃないから、不安なんだよね」 

「そうなのか? 確かに叶が勉強してるところはあまり見たことないけど。普段の成績とかどんな感じなんだ?」

「通知表、体育5、それ以外オール2」

「おぉマジか……」


 予想よりも厳しい状況だった。体育の評価がいいのは、らしいと言えばらしいが放っておくのもまずい。


「よし、じゃあ俺が勉強をみてあげよう」

「ほんと? 楓太兄ぃ勉強できるんだ」

「あぁ、こう見えてそこそこは出来る方なんだぞ。まぁ高校生2年生までの範囲限定だけど」


 中学までなら俺でもなんとかなるだろう、それに叶がどこか行きたい高校があるなら、そこに行けるように手助けしてあげたい。

 いまでは叶のことは妹のように感じる。

 だから出来る事はしてあげたいのだが、叶を見ているとそれもあまり無さそうだから、ついに出たチャンスだった。


「じゃあお願い! 私アキ姉ぇと同じ学校に行きたいんだ」

「そうなのか。西条高校って結構難しいところなのか?」

「結構ランク高いんだよ、アキ姉ぇああ見えて頭いいんだよ」


 そう言われて、西条高校の偏差値を見て驚いた。軽く安請け合いしてしまったが、これは俺もしっかり復習しないとまずいかもしれないなと、頭の隅で思いながら叶と八月朔日家に帰り着くのだった。

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