協力者。
いつも通りに、変わらない日々を過ごすはずだった。
俺の心はどどめ色。もう何を考えているのか、俺自身にもわかってはいなかった。
時間だけが妙に早く過ぎていく。
心が空っぽになった、というのはこういう事なのだろう。何も無く、何も入ってこず。
こんな状況では、バイトにも力が入るわけもなく。
そんな中、俺の元に一人の来訪者。
「楓太」
「……御剣、さん?」
御剣恭弥。
……いま、この状況で彼が何の用なのだろう。
「話がある。バイト終わったらここに来てくれ」
そう言って店から出ていった。
彼が置いていった紙には、どこかの住所が書かれていた。
★★★
「ぼろっちいアパートだな……」
どうやら御剣が住んでいるようだが、階段に一足踏み入れば崩れそうなほど老朽化が進んでいた。
遠くから見えた時、まさかそれが建物だとは思わないほど……。
御剣の部屋のインターホンを押す。すると間もなく御剣が中から俺を迎え入れた。
「何の用です?」
「単刀直入に言う。お前、近い内に拉致されるぞ」
……コイツは何を言っているんだ。俺が拉致? 誰に?
「めんどくせぇから訊きたい事は全部訊け。何でも答えてやる」
「……俺を狙っているのは誰だ?」
「藤城組の現組長」
「は?!」
待て、既に訳がわからない。なんだってそんな奴が、ただの高校生の俺を狙うんだ。
「理由は」
「わりぃがそれだけは知らん。けど相当やべぇ状況だ」
「じゃあなんでアンタは俺にそれを教えた! そもそもそんな事、なぜ……」
「俺がお前を攫ってくるように命令されていたんだ……だが、そういうのは嫌いなんでな」
「……どうするつもりなんだ」
「俺達で藤城組を潰す」
またとんでもない事を言い出すものだ。
まともな頭をしていれば、暴力団を潰すなんてふざけたこと、言えるはずが……。
「お前の親父は、藤城組に殺された」
「──は?」
★★★
そこから先、御剣が話してくれたのは。
親父の、話だ。
俺の知らない、親父の話。
次回から少し過去話です。




