急転。
それはあまりにも一瞬で、その時の俺は当然、聞き間違い、なにかの間違いだと信じて疑わなかった。
「……はい?」
「宮下楓太さん……あなたのお父さんが殺人事件に巻き込まれた可能性があります」
まず。
いまでも俺はそれを、現実として受け入れられていないが。本当に、本当に突然だった。
……いや、それも当然なのかもしれない。むしろ、これが現実なのかもしれない。
前触れなんて一切なく、いつものように日々を過ごしていた。そんな中、突然の警察からの連絡。
親父が、山奥で遺体として見つかっていた。
何を言っているのかわからなかったが、まさかこれが盛大なドッキリではないかと信じたかった。
けれどそんなわけはなくて。
普通は身内が亡くなっても警察からの連絡はないけれど、自殺や孤独死、事件に巻き込まれている場合は連絡があるようだ。
親父は今回、事件に巻き込まれている……それが当てはまってしまったのだ。
「……少しお聞きしづらい事ではありますが……お父さんは、暴力団と関係はありましたか?」
「……暴力団? まさか、そんなわけ……」
「……ではお父さんの背中に何があるかもご存知ではないと?」
「え?」
「──入墨が入っていたんですよ。それもかなりの範囲に」
……そんなこと知らなかった。
……確かに親父の背中は、見たことが無い。一緒に風呂も入った事がなかったからか……だが、だからといって……。
「でもそんな、暴力団との関係なんて……」
あるかなんて分からない。大体親父は日頃は工場で働いていたはずだ、関わりだなんて……。
いや、ちがうのか? まさか……。
元々、暴力団とのつながりがあった上で、何かを隠して普通の仕事をしていたのか?
なんのために?
「俺にもわかりません……すみません、今何も考えられなくて……」
そこで話は終えた。
もうあれ以上、何も話せる気がしなかったから。
「楓太さん……大丈夫、ではないすよね……」
「……ありがとう、アキラ。でも、そうだな……少し休ませてくれ」
横になって、目を閉じる。
まず現状の整理。
親父は何を隠していたのか。
親父は何者だったのか。
なぜ親父は殺されたのか。
殺されたと断言できるのは、親父の胸から弾丸が見つかり、銃殺である可能性が非常に高いからだ。
……そうだ。
真奈美さんは、何かを知っているのではないか?
親父との関係が深い人だ。俺の知らない何かを……知っているかもしれない。
とにかく……少しは今は休んで。
目を覚ましたとき、真奈美さんに話を聞くことにしよう。
今回もここまでお読みいただきありがとうございます!




