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9.はじめての気持ち

「へえ、デートね」


 アベラは楽しそうににやにやと笑いながらコレットを見ている。


「何を着ていこうかしら、急なことだから何も考えてなかったわ……」


「ドレスを新調したらどう? 新しいのなんてもう何年も作っていないでしょう」


 最後にドレスを新調したのはいつだったか。コレットにはそれも記憶にないほどだった。物持ちがいいというのもあるが、それほど必要性を感じていなかったからというのもある。


 でも今は違う。どんなドレスを着て、どんな靴を履いていこうか。そう考えるのもわくわくする。こんな気持ちは初めてだった。


「そうね、そうする。アベラ姉さん、一緒に選んでくれる?」


「ええ、もちろんよ」


 貴方に似合うものをばっちり選んであげる、とアベラは張り切っているようだ。


ーーそうしたら、リアムは可愛いと褒めてくれるかしら。


 クッキーの形は褒めてくれたけど、コレットを褒めてくれたことはまだない。なんだかとても慣れた様子だったし、ハートの形にしたからといって心動くものでもなかったのかもしれない。

 

 少し子ども染みていたかしら。


 コレットは不安になった。思えば恋愛ごとに関しても百戦錬磨のリアムにしたら、少し幼稚だったかもしれない。

 相変わらずリアムから愛の言葉は貰えない。それどころか、怒られてばかりなような気もする。


 このデートで気持ちを取り返さないと、今度こそがっかりさせてしまうかもしれない。


 そんなことをぐるぐると考えていると、来客を告げるベルが鳴った。


「あら、レミいらっしゃい」


「珍しいわね、こんな時間に」


 外はもう暗くなってる。レミがパン屋を訪れるのは、午前中か遅くとも昼頃だ。


「ああ、今日は母が体調が悪くてね」


 聞くと、父親も夜まで町を離れていて、近所のアメリアおばさんが母親の夕食を作ってくれていたらしい。自分の分は仕事帰りにパンを買って帰ろうと寄ったという。


「お母様は大丈夫なの? 」


 コレットとアベラが心配そうに訊ねた。


「ああ、少し風邪を引いてしまったみたいでね、でも大丈夫だよ。ありがとう」


 レミはそう言ってパンをいくつか選んでいた。


「これ、サービスよ。良かったら明日の朝食にでも食べて」

 

 ふかふかの白いパンを包んでバスケットに詰めると、レミにそっと手渡した。


「朝まできっとふかふかよ。もし時間が経っても焼いたら美味しいわ」


「こんなにたくさん……ありがとう」


「いいのよ、レミにはいつもお世話になっているから」


 アベラも気遣うように大きく頷いてそう言った。


「お大事に、と伝えて。レミもレミのお父様も体調に気をつけてね」

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