くんれん♥
「突けぇぇぇぇぇぇぃ」
―東富士演習場―
155名の訓練生、そのほとんどが大きな耳殻を向けながら、怒声に身体を委縮させる。
新入隊士たちの一日は早い。
午前4時30分には起床(もとい、教官により叩き起こされるのであるが)し、練成を始める。
午前中は慈安部隊体操を行った後、朝食を10分以内に済ませ”強化運動”を半日、寸暇の休息。
午後から座学、そして漸く得物を用いた訓練に入る。
隊士たちは刃引きされた簡易長巻を教官の掛声に合わせて、目の前の木人に撃ち込んでいく。
「撃剣じゃッ!突け、突け、突けぇ、払えぇぇい」
哀れな木人どもを、目から光のが消えた隊士達の連撃が襲う。
「喉・・喉頭隆起に撃ち込めぇぇぇいッ!」
「ほれッ!鼠径部ッ鼠径部に刺し込めぇぇぇぇい」
教官は急所を連続で刺突させる。
◇◆◇
一方、別の教育隊では・・・
「もうさぁ・・・気合がはいってねんだょなぁ」
必至の形相をする訓練隊士に対し、助教が悪態をつき始める。
「足撃ち抜いた〇台人(国内で敵戦力の手引きをする者たちのこと)でも、もっと早く駆けるぞコラ!」
「お前さぁ・・・人が見てないと思って手ェ抜く奴、俺一番ムカつくからね」
”的”にされた隊士(104番)の膝裏に助教が撃剣を撃ち込む。
思わずうずくまる104番に対しての追撃はやまない。
「すいません、すいません、、すいません・・・」
この不条理の中でも、ひたすたら他の隊士達は得物を振り続けた。
◇◆◇
「おぃ!もっと腰落とせ!」
「できません・・うげぇっ、うっうっ・・・」
「あと10回だろぉ!いーち・・・ほれ、いーちっ」
結局この日、104番は連続5時間以上”練成”を続けていた。