にゃんだふるライフ②
「あへぇ~っ・・・めぇえんまぁぁぁぁぁぁ~」
重度の熱傷を負った者は絶叫していた。
塀は複数箇所が損傷し、延焼が続いている。
消火しようと人員を集めるものの、さらに追い打ちをかけるが如く飛翔体が撃ち込まれる。
「ブゥシャーリー様!四方から火の手があがっております!」
住人、もとい信徒の一人が嗚咽の混じった報告を行う。
「おてぃとぅきなさい(落着きなさい)、我々にはマモリヤスラハゥの加護があるのだから」
ブゥシャーリー、本名”維盛安親”は鼻が詰まったような声でそう応えた。
「至急、聖戦士たちを召喚するのだ・・・官憲に目にもの見せてくれるッ!」
「・・・ㇵッ!承知しました!」
軍団長が指示を飛ばすと、蒲鉾型の建物(恐らくは教団の兵舎)から、すぐさま小火器を手にした白装束たちが姿を見せる。
と同時に、塀の外では多数の四輪装甲車が姿を現していた。
”慈安部隊”
オリーブドラブ色に塗装された車体に白文字が映える。
上部には一人乗りの旋回砲塔が備わっており、13ミリ機関銃と7.7ミリ車載機銃から非装甲目標(人体)へ鉛を浴びせかける。
白装束たちは抵抗むなしく、水揚げされたての海老のように跳ね回り散っていった。
装甲車の後方扉は観音開きとなっており、そこから防弾衣を着こんだ隊員らが駆け出していく。
前衛は身体正面を覆う面積と30ミリの厚さを誇る防盾を持ち、小銃や”長物”を持った者がそれに続く。
結果として信徒の祈りも通じず、即席麺が出来上がる程度の時間で最初の建物内侵入を許してしまうのであった。
◇◆◇
住居に籠る者たちの末路は悲惨そのものであった。
まず糜爛性のガスが立ち込め、その中を得物を持った隊員らが突入してくる。
信徒たちの、まともな抵抗がないことが分かると、うずくまる者・棒立ちとなっているもの問わず”長物”で刺突を行う。
この”長物”は戦後大量の軍刀や接収した刀剣類を利用した「簡易長巻」
刀身の一部を樹脂か皮革で覆い、刀の全長はそのままに柄となる部分を延長した代物である。
即製ではあるが、室内での戦闘では十分な威力を発揮する。
「うぐっ」
死の間際でも、むしろその瞬間だからこそ人間は命を繋ごうと足掻くものだ。
簡易長巻により受傷し戦意を喪失しても、殆どの者は息があった。
しかし直後に響くパスッ・・パスッッという音
乾いた響きの後、絶命していく。
消音拳銃による”トドメ刺し”を行っているのだ。
冷酷に、そして確実に慈安部隊は殺処分を遂行していた。