にゃんだふるライフ①
小春日和の午後2時、閑散とした住宅街、その彼方に彼らの姿があった。
暖かな陽射しとは対照的に、街は四方を塀に囲まれ、立ち並ぶ家々は殆どカーテンが閉まっており、玄関扉には一様に六芒星に似た文様が描かれている。
さらには、そこかしこ庭やストレート葺の屋根からは潜望鏡が突き出ている。
この”街”の異常性を語るには、これだけでも十分であった。
「対象甲、射程内にあり・・・応」
そう言ったのは、彼方の丘から単眼鏡を凝視する男である。
立膝をつきながら、牛虐犬のような防毒面をつけた者が二人並ぶ。
一方は単眼鏡で距離を測り、もう一方は巨大な筒と三脚・照準器から構成された物体を操作しているようだ。
「・・・了、光学照準により目標を補足・・・対戦車誘導弾による”対処”を開始する」
単眼鏡の男にそう告げるなり、”片割れ”の男は発射器の引き金を引いた。
ㇷ゚シュッッ! チュッドゥゥウゥウウウウウゥゥゥンン
”片割れ”の発射した飛翔体は、獲物に向かって蛇行しながら飛んでいく。
誘導弾の尾部から出る可視光を見ながら、操作員が目標までの誤差を修正・誘導しているためだ。
数秒後、弾体が街の塀をぶち抜き、奥の家屋を粉砕する。
中から火だるまの人影が出てくると同時に、けたたましいサイレンが鳴りはじめた。
各々の住処から人が、巣をほじくり返された蟻のように湧き出てくる。
「軍のおさがりとは言え、おっかねぇな」
単眼鏡を持つ男がそう呟くと、”片割れ”はこう続けた。
「なんであろうと使えるものは使う、それが多少過剰性能であっても・・・な」
防毒面越しに”片割れ”と”単眼鏡”は、瞳孔を”縦”に細めながら燃える街を眺めていた。