詩集 水を殴る 作者: 木下美月 掲載日:2020/08/16 水を殴った。 拳が水面に触れ、 わずかな抵抗を押し破り、 寛大にも受け入れられた。 迷惑そうに飛び散った飛沫は、 空中を散歩した後、 帰還先で水として再生する。 熱をもった肌が、 慈愛の温度になれていき、 混ざる事ないとわかっていても、 とけるようにあふれていく。 幼稚な癇癪を宥めるような、 未熟な感情を抱きしめるような、 拙い言葉に頷くような、 無条件の優しさ。 儚くもある静けさは、 無生命らしからぬ幻想。 全てが水になればいい。