第8話 俺、悪いサキュバスじゃないよ。
「敵は俺じゃねぇぜ、バカ勇者」
俺は淑女の振りをやめ、天井に突き刺さっている男を指さした。
「お前の【邪悪値スカウター】で、その変態を見てみな。今、まやかしを晴らしてやる」
俺はパチンと指を鳴らし、変態オヤジが張り巡らせている結界を解除する。
「ど、どうして【邪悪値スカウター】の事を......それにその言葉使いは、何なのさ! まるで男みたいだ!」
「俺は昔からクラスチェンジに興味深々でね。色々と本を読み漁った。勇者についても詳しいのさ。言葉使いの事は、今は気にするな。それより早く上の化け物に対処した方が良いぜ。お前を狙ってる」
変態オヤジは、結界が解けてすぐに正体を現した。天井から勢いよく飛び降りたその姿は、デーモン族。巨大なコウモリの翼にヤギのようなねじれたツノ。全身真っ黒で、赤い目に金色の瞳。
「キョッキョッキョッキョッ! 中々察しがいいなぁ吸精王! せっかく勇者を手駒にして、貴様も殺しておこうと思ったのだがな! キョッキョッキョッ!」
不気味な笑い声は、思わず耳を覆いたくなるほどだ。デーモンの中でも下位の存在だとは思うが、それでも天災級の破壊パワーを持っている筈だ。俺なら多分余裕だが、勇者に相手が務まるかどうか......。心配ではあるが、ちょいと力量を測ってみるとしよう。
「うわっ! 本当だ! 邪悪値五十万って言うのは、レスカさんじゃなくてアンニュイの数値だったんですね! くっそー、騙された!」
勇者は俺への警戒を解き、デーモンに向き直る。
「酷いよアンニュイ! ずっと僕を騙していたんだね! 許せない! 今までのセクハラの恨み! まとめて返させてもらうよ! はぁぁー!」
気合と共に、勇者の全身が光り輝く。
「必殺! ゴッデス・ハイパーブロウ!」
勇者は床を蹴り、デーモンとの距離を瞬時に縮める。そして右拳をフック気味に、デーモンの顔面に叩き込んだ。
ズバァァンッ! 小気味良い炸裂音。だが、デーモンは眉一つ動かさずに立っている。そして勇者の拳を手で掴み、ゆっくりとひねあげる。
「痛たたたたたた!」
苦痛に顔を歪める勇者。やはり彼......いや、今は「彼女」か。とにかく奴にはデーモンの相手はまだ早かったようだ。しかし勇者も負けっぱなしでは無い。素早く身を翻し、デーモンによる腕の拘束から逃れる。
「ゴッデス・ハイパーフォトンビーム!」
勇者は腕を十字にクロスさせ、そこから輝く光線を放った。デーモンは光線の直撃を胸に受け、壁まで吹っ飛んでめり込む。破壊音。そして埃が舞う。
「うぐぐ......!」
苦悶の表情を浮かべるデーモン。だが次の瞬間、その体から無数の触手が「ニュルンッビュワワワーッ」と伸び、勇者の全身を絡めとる。
「うわぁ、何だこれ! 気持ち悪い!」
触手は勇者の服の中に、次々と侵入していく。
「くくくっ。勇者ヒカルよ。何の為に俺様が、今日までお前を調教して来たと思っている? こんな風に反乱された時でも、すぐに快楽の虜にする為だ!」
「えっ、いやっ、ちょっ、そこ、ストップ!」
触手は勇者を触手で絡め取り、もうぐっちょぐちょのデロンデロンにした。
その間、俺が何をしていたかって? 見物してたに決まってるだろう! 勇者も別に殺される訳じゃないしな!
いやー、いいもん見たわ。触手プレイなんて、そうそうお目にかかれないんでな。
「あへぇ......」
放心状態の勇者。ププッ、なんか可愛い。
「キョッキョッキョッ! 次は貴様の番だ! 吸精王!」
白濁液にまみれた勇者から触手を引き抜き、俺に向かって「ビュワワワーッウニョウニョ」と触手を伸ばすデーモン。
「面白れぇ! やってみろ!」
俺は向かって来た触手をシュババッ! と掴み取り、ブチブチブチィッ! と引きちぎった。
「うっぎゃー! 何すんじゃテメェェ!」
涙目のデーモン。俺は引きちぎった触手の精気をギュンッと一気に吸い、スルメみたいに干からびさせる。
そしてそれをポイッと捨て、瞬時にデーモンの背後へ周る。
「チェックメイトだ」
後ろから首をギュッと掴む。
「くおおおっ。や、やめろ......!」
「お前のせいでな、俺は勇者に邪悪な怪物だと思われちまったんだぞ。限りなく清らかな心の持ち主である、この俺がだぞ? この怒り、お前をぶち殺すまで治まらねぇ! だからテメェは死ね! エナジードレイン!」
「むほぉーっ!」
デーモンは絶叫しながら絶頂し、ミイラへと変貌した。夢の中では、俺との触手プレイを楽しんでいる事だろう。
「うりゃっ! この感触、癖になりそうだぜ」
ミイラとなったデーモンを足で踏み潰し、粉々に粉砕してトドメ刺す。それから、すっかりヌルヌルになってしまった勇者を抱き上げ、浴室へと向かう。
何をするのかって? そんなの決まってんだろ......洗ってあげるんだよ、体の隅々までな!