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第6話 姉妹と花束。

 あっという間に俺の支配下になったタッセルの町。その豪奢な館の寝室。巨大なウルトラキングサイズベッドの上で、大勢の美女をはべらせながら食事を取る。


「レスカ様、お口開けてください。 あーむ」


 口にパンを加えた美女......名前はミカエラだ。ミカエラが口移しで、俺にパンを食べさせる。精気だけでなく、普通の食事も俺は取る。生命を維持するなら精気だけで充分だが、食品は嗜好品として楽しんでいる。


「もぐもぐ、クッチャクッチャ、うん美味い」


「もぐもぐとかクッチャクッチャは言わなくても良いと思われますが」


 側で本を読んでいた美女、ミュールが眼鏡の位置をカチャリと直しつつそう言った。


「るせーな、気分だよ気分。そんなお前にエナジードレイン!」


「んほぉぉぉーっ」


 ミュールの肩をガッと掴み、エナジードレインで精気を吸い取る。知的だった顔が、一瞬で無様なアヘ顔へと変わる。それが俺の嗜虐心を、たまらなく高揚させるのだ。


 だがミイラにはしない。ギリギリの所でストップし、回復したらまた吸う。この館にいる美女達は五十人程。町中からかき集めた選りすぐりだ。


 普段は身の回りの世話を行うメイドとして、そして俺が寝室にいる時は性欲の捌け口として、働いてもらっている。いわゆるハーレムってヤツだ。寝室に来るメンバーは日替わりで、今のところ飽きる事なく楽しめている。


 この館は元々、タッセルの町を牛耳るゴールディと言うおっさんのものだった。


 ゴールディは「商業ギルド」のギルドマスターであり、商業都市であるタッセルの、事実上の支配者だったのだ。俺は「吸精王」になったその日にこの町の支配を宣言し、ゴールディをも「魅了」で虜にした。


 その後は簡単だった。まずこの館を譲り受け、彼の手引きでやってきた町の住人達を魅了していく。


 こうしてタッセルの町は、俺のものになった。


 コンコン、扉をノックする音。


「入れ」


 入室を許可すると、メイドの一人「ルシール」が入って来て次のように告げた。


「レスカ様に献上したい物があると、花屋の姉妹が申しております。いかが致しますか?」


「許可する。通せ」


「かしこまりました。ほら、入っていいよ」


 ルシールが扉を開けると、八歳くらいの少女と、四歳くらいの少女が、それぞれ花束を持って入室してきた。


「れ、れ、レスカ様! あ、あのう! 私!」


 姉の方が緊張した様子でそう言う間に、妹がテテテッと走ってきて、靴を脱ぎ捨ててベッドによじ登った。


「あっ、こら!」


 ルシールが慌てて追いかけるが、俺は手を上げてそれを制した。


「はい、お姉ちゃん! お花!」


 少女は満面の笑みで、俺に花束を差し出した。ハーレム美女達の顔にも、微笑みが生まれる。思えば皆、この町の住人。この少女と顔見知りの者もいるだろう。


「ありがとう。綺麗なお花だね。お名前、言えるかな?」


 俺は出来る限り優しくそう言った。


「ユマ! 四歳なの!」


 彼女の提示した指は三本だったが、きっとうまく指を立てられないのだろう。


「そっか。ありがとうユマちゃん。お花、大事にするね」


「うん!」


 俺はユマの髪をくしゃくしゃと撫でた。彼女はとても嬉しそうに「にぱー」と笑った。


「あなたも、行ってみたら? レスカ様は子供には優しいのよ」


 ルシールが姉妹の姉の方をベッドに抱き上げ、こちらに促した。


 彼女は遠慮がちに靴を脱ぎ、膝立ちになって俺の前へとやって来た。


「あの、これ......」


 少女の顔は真っ赤だった。彼女の差し出した花束を受け取り、俺は微笑んだ。


「このお花も、すごく綺麗だね。私の為に選んでくれたの? ありがとう。あなたの名前は、なんて言うのかしら」


「あ、えっと、あの、シュリです!あの、レスカ様が悪い商人のゴールディをやっつけてくれたので、みんな感謝しています!これは、感謝の印です!」


 シュリは緊張で震えていた。俺はシュリの髪を撫でながら「ありがとう」と言った。


 そして二人をギュッと抱きしめ、「また来てね」と言った。


「ルシール、二人を家まで送ってあげて。転んだりしたらいけないから」


 俺は上品な女を演じつつ、ルシールに命じた。


「かしこまりました。レスカ様」


 ルシールはうやうやしく礼をし、部屋を後にする。


 その後ハーレムの女達がこぞって俺をからかったので、全員エナジードレインしてやった。


 それからしばらく女達と戯れていると、いきなりドアが開き、商業ギルドのマスターにして町の前支配者「ゴールディ」が飛び込んできた。


「レスカ様、大変です! うぐっ!」


 俺は瞬時にゴールディの眼前に距離を詰め、奴の首を片手で持ち上げる。


「部屋に入る前はノックしろと、いつも言ってますよねぇ、お父様」


 俺は便宜上、ゴールディの娘と言うことになっている。この館を譲り受けた時に、王国に書類を提出したのだ。後々の面倒を避ける為である。


「も、もうじわげ、ございまぜ、ゲホッゲホッ」


 首から手を離し、ドサッと床に投げ出す。余程急いでいたのだろうと察し、俺はゴールディを許す事にした。


「一体どうした。話してみろ」


「は、はい! 理由は分かりませんが、レスカ様が【吸精王】である事が、王国の知る所となりました! 討伐依頼を受けた勇者が現在、町の正門に来ております! 如何致しましょうか」


 ゴールディは時々咳き込みながらそう言った。


「なんだと? チッ、何故バレたんだ? 町の住人は全員【魅了】しているし......いや、子供には【魅了】は効かない。もしかして子供が王都に情報を漏らしたのか? だが、まぁいい。面白くなって来た。ゴールディ、勇者をここへ呼べ。なるべく失礼のないようにな」


「はい! かしこまりました!」


 ダッシュで部屋を出て行くゴールディ。その後ろ姿を見ながら、俺は自分が今までにない程興奮していると感じていた。



レスカ様優しいの......(*´꒳`*)

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