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第15話 宴とその後。

 崩壊したサージナル城が復旧されるまでの間、王族を含む城の関係者は、城周辺に住まう貴族の家を間借りする事になった。


 デーモン一掃から二日後、ささやかではあるが宴が開かれる事になり、俺とヒカルも招待された。


 宿屋の食堂で朝食を取り、部屋に戻る。そして昨日届いた招待状を、再度確認してみた。


「勇者ヒカル様と、その従者レスカ様、か。よしよし、俺の印象は薄いようだ。吸精王の肩書きも、どうやら覚えられていないぞ」


 俺は満足しながら、招待状をゴミ箱に投げ入れる。


「捨てちゃダメですよ。招待された証として、提出しなきゃならないんですから」


 ぷぅっと頬を膨らますヒカル。これを素でやってるんだから、なんとも可愛い奴だ。今は男に戻っているが、それでもやっぱり可愛い。


「悪かったよ。お礼にほら、俺をめちゃくちゃにしていいからさ」


 俺はするりと寝間着を脱ぎ、胸を寄せてヒカルを誘惑する。


「言われなくても、めちゃくちゃにします」


 ババッと服を脱ぎ捨てるヒカル。意外と筋肉質な、男らしい胸板にドキリとする。何度も見ている筈なんだが、まだ慣れない。


「や、やっぱり優しい感じで頼む」


「そんな事言って、乱暴なのが好きなくせに」


 ヒカルに押し倒され、俺は文字通りめちゃくちゃにされた。


 結局、宴の直前まで「にゃんにゃん」していた俺たち。


「ヤッベ! 遅れるぞ!」


「うわ! 本当だ! 急ぎましょう!」


「いや、やっぱりちょっと待て。もう一回......」


「ダメです! 宴が終わったら、まためちゃくちゃにしてあげますから」


「や、約束だぞ」


「ええ、約束です。もう、本当にレスカさんは可愛いんですから」


 おでこにチュッとされ、俺は満足。最近、自分が男だった事を忘れてしまいそうになる。まぁ、別にいいんだけどね、それでも。


 宴は貴族の一人が館を提供してくれ、結構豪華な感じで行われた。やつれていた国王も元気を取り戻し、王妃や王子、王女、他の王族達や側近も、にこやかに談笑しつつ宴を楽しんでいた。


 すっかりみんなが出来上がった頃、ヒカルと俺は国王に呼ばれて前に出た。


「救国の英雄! 勇者ヒカルと従者レスカに拍手を!」


 万雷の拍手に、俺とヒカルは手を振って答える。すっかり従者レスカが定着したらしい。まぁ、俺にとっては好都合だ。


 ちなみにヒカルは、例の白髪爆乳美少女に変身している。元は男である事を説明するのも面倒だし、女神ルクスに瓜二つなこの姿の方が、勇者として印象付けるには丁度いい。


 それに国王達は、この姿のヒカルしか知らないのだ。


 たっぷりと賞賛され、様々な贈答品をもらった俺たち。ホクホク顔で宿屋へと帰る。そして部屋に入るや否や荷物を投げ捨て、服も脱ぎ捨てる。


「さぁてヒカル! 約束は忘れてないだろうな!」


「ふふっ、もちろんです。ちゃんとめちゃくちゃにしてあげますよ」


 男になったヒカルに乱暴に押し倒され、俺は「女」である事を何度も思い知らされた。


 翌朝。ヒカルのキスで目覚めた俺は、そのまま彼と一戦交える。


「ふぅ、気持ちよかった。さぁ、朝飯を食いに行こう」


「お腹空きましたね」


 宿屋の食堂のテーブルで、向かい合わせに座る。朝食を取りながら、今後の作戦会議だ。


 ちなみにこの宿屋、あまり流行っている宿屋ではないのか、宿泊客は少ない。食堂を利用しているのも、今の時間は俺たちだけのようだ。


「今日はな、冒険者ギルドに行こうと思うんだ」


「冒険者ギルド、ですか。あるのは知ってたんですけど、まだ行ったことないです」


「そうなのか?」


「はい。召喚されてすぐ、国王......になりすましたデビルにこき使われてましたから。冒険者って、迷宮の探索とかするんですよね? ちょっと憧れます」


 目をキラキラさせて俺を見るヒカル。可愛い! 天使かコイツ。


「そうか......俺は冒険者登録してあるから問題ないが、ヒカルも登録するべきだな。だが勇者としては登録するな。別のクラスがいい。それと、名前もヒカルじゃなくて別のにしろ」


「ええ!? どうしてですか?」


 きょとんとするヒカル。可愛い! 


「ふっふっふ。俺たちは一旦、陰の存在になるのさ。正体を隠して、本当の悪を見極めるんだ。俺たちが女神の使徒だと知っていたら、悪事を隠す輩もいるかも知れんだろ?」


 またパァッと目を輝かせるヒカル。


「なるほど! なんか面白そうですね!」


「だろ? 我ながらいいアイディアだ。そしてな、お前にカミングアウトする事があるんだ」


「ええ? レスカさんが僕に? なんでしょう」


 困ったような、だが好奇心に満ちた目で、俺を見つめるヒカル。俺は周囲に人がいないのを確認しつつ、立ち上がる。そして向かいの席に手をついて、そっとヒカルに耳打ちした。


「俺の本名はレモン・スカッシュ。しがない村人さ。そして性別も、元々は女じゃない。男だ」


 耳打ちを終了し、座る。ヒカルは時間が止まったように、放心状態だ。


「おーい、ヒカル?」


 目の前に、手を振ってみる。だがヒカルはまばたきもしない。


 そして。


「えええー!!! レスカさんが、おと......!」


「声がでかい!」


 俺は慌ててヒカルの口を塞ぐ。そして周囲を見回すが、やはり人はいない。宿屋の親父も、カウンターで居眠りしている。


「今はちゃんと女だ。お前と一緒だよ、ヒカル。俺は男にも女にもなれるんだ。俺たち、いいカップルになれると思わないか?」


「え、あ、そっか......! 僕が男の時は、女のレスカさんとエッチして、僕が女の時は、男のレスカ、じゃなかった、レモンさんとエッチすればいいんですね」


 なんだか納得した様子で、うんうんと頷くヒカル。


「ま、まぁそうだな。別にエッチの事を言った訳じゃないが、まぁそう言う側面もあるな。うん。部屋に戻ったら、早速試してみるか?」


 自分でそう言って、俺はなんだが鼓動が早くなった。ちなみに男の俺は童貞だ。まぁ、知識だけはあるからうまくやれるとは思うが......。


「え、えっと、はい。そのう.....優しく、してくださいね」


 顔を真っ赤にしてうつむくヒカル。まだ男だけど......やっぱ可愛い。


「任せろ。天国にイかせてやるよ」


 童貞の俺はそう言って、ドヤ顔を決めた。



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