第14話 デーモン一掃。
俺が捕らえられていた地下牢。脱出の際に隠し扉を見つけたので、こじ開けて奥に入ってみた。
すると、そこには大勢の人々が監禁されていた。隠し牢獄と言う訳だ。
「助かりました......もう、駄目かと思っていました......」
疲れ切った声で、誰かがボソリと呟く。
捕らえられていたのは、ほとんどが王族。その他にも王国の重要人物がズラリ。ヒカルのお目付役だった賢者アンニュイの「本物」もいた。そしてヒカルに憑依した国王の「本物」も。
「ありがとうございます。本当に助かりました。あなた様はもしや、勇者様でございますか?」
すっかり衰弱した老人......本物の国王にそう尋ねられ、俺はヒカルを紹介した。
「私は勇者様によって諌められ、改心した魔人。【吸精王】レスカと申します。今は勇者様の旅のお供として、怪物退治のお手伝いをさせていただいております。こちらにおわすお方が、かの有名な勇者様。勇者ヒカル様でございます。あなた方をお救いしたのは、勇者様です」
俺がヒカルを指し示してお辞儀すると、捕らえられていた人々が一斉に土下座する。
「おおー、勇者様! まるで女神ルクス様のように、神々しいお姿......! 勇者ヒカル様、バンザイ!」
まるで神を崇めるかのように、人々は膝をついたままで両手を上げた。それから再び、床に擦り付ける勢いで頭を下げる。
ちなみにヒカルの全身を真っ赤に染めていた返り血は、勇者のスキル「浄化」により、綺麗さっぱり消滅していた。今は輝く美しさの、白髪爆乳美少女だ。
「皆さん、そんなにかしこまらないで下さい。僕はほとんど何もしていなくて......彼女、レスカさんの功績が大きいんですから」
そんな事を言うヒカルを、俺はキッと睨む。
(俺の事は言わなくていい。騒がれたく無いんだ。今回はもう言っちまったから仕方ないが、基本的には全部お前が解決した事にするんだ。いいな)
念話でそう伝える。
(分かりましたよう。でもなんか、騙してるみたいで罪悪感ありますけど......)
(いいんだよ。人々が求めているのは吸精王じゃない。勇者と言う、わかりやすい英雄なんだ。わかるな?)
(そっか......了解です)
ヒカルは納得した様子で微笑み、土下座している人々そのそばにしゃがみ込む。
「恐ろしい怪物は退治しましたので、もう大丈夫ですよ。さぁ、一緒に出ましょう」
「おお、勇者様......!」
涙を流す人々。だが俺はそこでハッとなる。俺が倒した魔物はデビルとデーモンが一体ずつのみ。だが捕らえられている人々が、全員魔物になり変わられているとしたら......!
「ヒカル様! 皆さんを外までご案内お願いします! 私はちょいと、野暮用を思い出しましたですわ!」
時間がねぇ! 隠し牢獄の扉をぶち壊し、俺はダッシュした。
捕まってた連中の顔は、全部覚えている。つまりそいつらと同じ顔をした奴がいたらブッ殺す! それだけの簡単なお仕事!
ズダダダと階段を駆け上がる。まずは王族! 二階まで登り、手近な扉をブチ壊す!
「なっ、なんだ君は!」
ベッドの上。目を見開いてうろたえる、男と女。どうやらお楽しみの真っ最中だったようだ。
「とりあえず死ねぇ!」
俺はベッドの上にジャンプし、男の頭を蹴り飛ばした。頭は一瞬で破裂し、血と脳症を撒き散らす。
「きゃああああーっ!」
男は隠し牢獄で見た顔、つまりデーモンが成り代わっていた。だが女は見たことのない顔。つまり一般ピープル。よって記憶を書き換える!
「きゃああ、あ......」
女の額にトン、と人差し指を当て、今見た記憶を別のものへ書き換える。俺が男を蹴り殺したのではなく、邪悪な怪物を勇者が倒し、自分は救われたのだと言う記憶へ。
女は目を閉じ、気を失った。これでいい。よし、どんどん行くぜ!
「オラオラオラオラオラオラオラオラ! 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇ!」
部屋という部屋の扉をぶっ壊し、俺はデーモンを狩りまくった。全ての階の全てのエリアをくまなく周り、なり変わったデーモンは全て駆逐した。
城はほぼ、廃墟のように崩壊した。だが勇者がやったのなら罪には問われない。まぁ、俺も女神の使徒だから罪には問われないのだが......どうせなら勇者が一括でやった事にした方が、後々面倒がない。
デーモンをすっかり殺し終わった所で、地下から上ってきたヒカル&王族達と遭遇。皆あんぐりと口を開けた。
「レスカさん、これって......」
信じられない、といった表情のヒカル。俺は放心状態の彼女に代わり、王族達に説明する。
「皆様になり変わっていた怪物達も、勇者ヒカル様が討ち倒して下さいました。激しい戦闘により、城は崩壊してしまいましたが、皆様の命がご無事なのは本当に何よりの事でございます。再建には時間がかかりましょうが、力を合わせ、復興して参りましょう!」
呆気に取られていた人々の目に、輝きが宿る。
「そうだ! 俺たちは生きている! なんだって出来る!」
「そうだ! 全て勇者様のお陰! 勇者様バンザイ!」
ワーッと盛り上がる王族達。ヒカルも状況が飲み込めたようで、俺と目を合わせて微笑んだ。
これでひとまず、この一件は落着だな。後は......シモン、アルベルト、フィール達を、ちゃんと弔ってやらないとな。
俺は気さくな兵士達の笑顔を浮かべ、言いようの無い寂しさを感じ、胸を押さえたのだった。




