表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/19

第12話 狂乱の勇者。

第一話の前書きに表紙絵つけたから見てね。イメージ壊れるかも、と思った方は見ないのが吉かもです(*'▽'*)

「シモンの奴、遅いな」


 俺が牢に捕らえられてから、五時間程が経過していた。シモンが偵察に行ってからは、三十分程だ。


 俺は牢の番をしている二人の兵士、アルベルトとフィールに身の回りの世話をさせていた。お陰でかなり快適に過ごせている。


「多分、どこかでつまみ食いでもしてるんじゃないですか?」


 アルベルトがニヤリと笑う。


「そうそう。あいつ、食い意地張ってますからね」


 フィールも同意を示し、アルベルトと顔を合わせて笑った。


 だが俺は胸騒ぎがした。もしかして、何か事件に巻き込まれてしまったのかも知れない。もう少し、シモンに警告を与えるべきだった。


 そう思いを巡らせた刹那。ズドォーン! という衝撃音と共に牢獄の鉄扉がこちら側にへこみ、次の瞬間には留め具を撒き散らして吹っ飛んできた。


「あぶねぇ!」


 俺はアルベルトとフィールを突き飛ばし、鉄扉を蹴り止める。


 扉があった場所にはポッカリと穴が開き、そこにゆらりと女が立つ。


「居たな、吸精王!」


「ヒカル、か!?」


 その女はヒカルだった。だが明らかに様子がおかしい。そしてその全身は、返り血で真っ赤に染まっていた。


「おい! 何があった!」


「くくくっ! 死ねぇ!」


 ヒカルはその輝く剛拳を容赦なく繰り出してくる。俺はそれを捌きつつ、アルベルトとフィールを見る。二人は腰を抜かしていた。


「お前ら逃げろ! こいつは正気じゃない! 俺でも守り切れるか分からん! 逃げないと殺されるぞ!」


「ひぃぃっ!」


「わ、わかりました!」


「くくくっ! 逃すと思うのか!」


 ヒカルの背中から、無数の触手が伸びる。それは予想外のアクションだった。こいつ、取り憑かれてやがるのか! このままでは、あの二人がやばい! 触手は真っ直ぐに二人に向かって行く!


「くそっ!」


 俺はヒカルに掴みかかっていた為、触手を阻む事が出来なかった。ならば、とヒカルを投げ飛ばす。投げる事によって、触手の軌道をそらそうと試みたのだ。


「無駄!」


 だがヒカルの触手は迷う事なくアルベルトとフィールを捉え、彼らの腹や胸を突き破り、口から頭蓋を貫通し、目玉をえぐりとる。


「ぐえええっ!」


「うごぉっ!」


 最後に全身を雑巾のように絞りあげられ、ボキボキと骨を折られて二人は息絶えた。いや、その前に死んでいただろう。それをわかっていて、ヒカルはその亡骸を玩具にした。


「はははっ! 殺害完了〜!」


 その目には、狂気が宿っていた。


「お前はヒカルじゃない! 誰だ! ヒカルの体から出て行け!」


 俺はヒカルの体を床に叩きつけた。その衝撃で、取り憑いている奴が出て行けばいいと願った。


「くくくっ。何を馬鹿な。僕は勇者ヒカルさ。貴様が目障りなのだよ、吸精王!」


 吸精王、と再び呼ばれて俺はハッとなった。こいつは、国王だ。直感が告げる。そして、アンニュイ以上の魔族......デーモンを従える者、デビルだ!


 ヒカルの体を傷つけずにコイツを始末するには......方法は一つしかない!この俺にしか出来ない事だ!


「ヒカル! 今助けるぞ!」


「なっ! んうっ!」


 俺はヒカルをグッと抱き寄せ、唇を重ねた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ