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第11話 勇者と国王。

 兵士シモンは、吸精王レスカを地下牢に案内した後で彼女を犯した。そして彼女の手錠を外してしまい、今ではすっかり【魅了】されている。


「シモン、悪いがちょいと国王や勇者の様子を見てきてくれないか? あと、美味そうな食い物があったら頼む」


 優しく微笑むレスカ。シモンは顔を赤くし、「お任せ下さい!」と元気に返事をする。


 同僚のアルベルトとフィールは、レスカの牢の番だ。番をしながら、時々レスカに可愛がられている。


(俺も早く戻って、レスカ様にいっぱい可愛いがってもらうんだ!)


 三十代後半にして未婚のシモンは、浮き立つような恋心に、思わずスキップしてしまう。


 ふと、故郷に一人残してきた母親の事が、脳裏に浮かぶ。


(もしも......もしもレスカ様と結婚出来たら......母さんを安心させてやれるな。よし! 頑張ろう! ここで印象を良くして、レスカ様に気に入ってもらうんだ!)


 シモンは夢のような生活を思い浮かべ、俄然張り切った。


 地下から階段を上って行き、二階へ。ここには国王が来賓を迎える謁見の間や、王族の部屋、そしていくつかの来賓室がある。


 王族の部屋には兵士は入る事は出来ない。だが、勇者がいる来賓室なら、誰でも入室する事が可能だ。


 シモンはその部屋を知っていた。コンコン。ノックをするが、返事が無い。いないのだろうか。


「勇者様......」


 声をかける。やはり返事はない。もしかしたら外出しているのかも知れない。


「んっ......」


 きびすを返すシモンの耳に、切なげな女の喘ぎ声がかすかに聞こえた。


(勇者様はお楽しみ中って訳か。仕方ない、出直そう)


 シモンは進もうとした。だが、その直後聞こえた声に、足が止まる。


「何故、吸精王を殺さなかったのだ、勇者ヒカルよ」


 国王の声だった。シモンは違和感を感じ、部屋の前に戻る。


(何故勇者様の部屋に、国王様が? だとするなら、この女の声は一体誰の声だ?)


「彼女は、吸精王は......女神の使徒です。殺すべきじゃ、ない」


 切なげな女の声は、国王と会話している。という事はつまり......!


「勇者ヒカルよ! 召喚の契約は破れぬ! アンニュイの監視は逃れても、ワシからは逃れられぬ! 召喚されし者は、召喚主のもの! お前はワシのモノだ! ヒカル!」


「くそっ! 離せぇっ!」


 ジュルジュルという濡れた音が響く。まるで蛇が這いずるような。


 ただならぬ気配に、シモンは思わずドアノブに手をかける。鍵はかかっていない。


 一気にドアを開ける。


 そこには、女が立っていた。髪は真っ白で、女神ルクスによく似た顔立ちだった。彼女はどこか虚な目をしていたが、シモンに気付くと微笑を浮かべた。


「勇者様......?」


 シモンはそう尋ねた。状況的に考えれば、そう考えるのが妥当だ。勇者は男だとばかり思っていたが、実は女だった。そういう事なのだろう。


「国王様は、どちらに......?」


 シモンの言葉は、そこで途切れた。何故なら彼の心臓が、体の外に投げ出されてしまったからだ。勇者ヒカルの手によって。


「女神の使徒は、罪を裁く者。何をしようと許される。例え、殺人でもな」


 意識が遠のく。


「さしずめ貴様の罪は、盗聴、つまり窃盗罪だな」


 倒れたシモンの視界に、彼の心臓が映る。最後に見たのは、華奢な女の足と、踏み潰される自分の心臓だった。

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