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60 女性陣からのお叱り

 ユーリとべルークのイチャイチャ振りを(えが)いてみました。初めての恋愛表現だったので緊張しました。書いている本人が恥ずかしくて照れました!

 帰りの馬車の中で俺はべルークを傍に引き寄せて、その美しい白くて滑らかな頬に口づけを何度も落とし、薄茶色のふわふわな髪の毛を優しく撫でた。

 さっきまでクールで凛々しかったべルークの顔はピンク色に染まり、少し目元も赤くなっている。

 

「かわいい。かわいいよ、俺のべルーク。ようやくお前を自由にかわいがれる」

 

 耳元で囁くと、べルークは水蒸気が出そうなほど真っ赤になった。

 

「さっきはフォローありがとう。やっぱりべルークだよな。お前がいないとやっぱり俺は駄目だな。お前は俺のなくてはならない最高の侍従だよ」

 

 べルークは嬉しそうに顔を更に輝かせた。そう、べルークは俺の役に立てる事が侍従としての最高の幸せだと言った。しかし・・・・・

 

「しかし、こうして二人きりの時は、主従関係ではなく、ただの恋人同士だ。だから、俺に思いきり甘えてくれ。そして、俺に甘やかさせてくれ。ずっとずっとお前を甘やかしくてたまらなかったんだから。気付いていただろう?」

 

 俺の問いにべルークは顔を上気させたまま、うんうんと頷いた。そんな焦っている子供の様なべルークを見るのは久しぶりで、俺は嬉しくて、幸せな気分だった。

 俺は片手で優しくべルークの顎を少し持ち上げて、キスをした。そして三度目のそれは軽いものではなく、より深くより強く繋がっていたいと願うものだった。

 長いキスの後、べルークは俺の胸にしなだれた。完全に体から力が抜けてしまっている。俺はそんなべルークをしっかり抱き締めながら言った。

 

「今回の騒動、皇太子殿下とエミリアの件までなんとか収まったら、俺はお前との事をうちの家族とお前の家族に話すよ」

 

 べルークの体がビクッとはねた。

 フラグを立てるようで言うか言わないか悩んだ。しかし、あの時言っておけば・・・という後悔だけはしたくない。二人の気持ちをきちんと確認し合って、変な誤解やすれ違いを絶対にしたくない。

 

「反対されるかも知れない。軽蔑されるかも知れない。しかし、俺は絶対にお前を諦めないし、絶対にお前を離さない。カスムークさんに許してもらえるまで、何度でもお願いするよ。二年前俺は、カスムーク夫人にお前を絶対に幸せにすると誓ったのだから。

 だからお前も、もし誰かに俺のために別れろと言われたとしても、そんな事に絶対に耳をかしてはいけない。俺の幸せはお前がいないと成立しないという事だけは、けして忘れるなよ」

 

 べルークが顔を上げた。涙でぐちゃぐちゃだった。昔はよく彼の泣き顔を見ては可哀想になって、どうにかして泣き止ませてあげたかったが、今日は違う。いつまでもいつまでもその幸せそうな泣き顔を見ていたかった。

 

 

 夕食後、ダイニングでまた話し合いが行われた。メンバーは両親、兄、姉、イズミン、カスムーク氏、バーミント、べルーク、ベスタール、俺、そしてジョルジオさんだ。セブオンはココッティ家に滞在中。

 ジョルジオさんは暫くうちに滞在するそうだ。父とすっかり意気投合したらしい。

 

「何故、イズミンまでここに残っているんだい?」

 

 兄のザーグルが尋ねると、イズミンはすまし顔でこう答えた。

 

「ユーリお兄様に会議に参加するように言われました。私、お兄様に頼み事をされたもので」

 

「お前に頼み事?」

 

 兄は怪訝そうな顔をして今度は俺を見たので、俺が後でわかるよ、とアイコンタクトをとったら頷いた。俺と兄貴は言葉にしなくても案外に通じる事が多い。

 基本、俺は大事な事はきちんと口で、言葉で伝えるべきだと思っている。でも前世とは違い、愛情と信頼関係が築かれているこの世界では、言葉にしなくても通じ合える事も多い。それが嬉しい。

 前世の母親は、

 

「家族なんだから、言わなくてもそれくらいわかるでしょ」

 

 と言っていたが、子供の事もわかろうともしないくせに、親の気持ちは察しろって、それは無理がないか? あの人達は一体なんだったんだろう?

 

 ああ、今俺は本当に幸せ者だ。こんな素晴らしい家族と、恋人、友人知人に恵まれて。

 突然前世を思い出し、その事で今の幸せに感謝する気持ちが溢れてきて、俺は思わず顔を左手で隠した。

 

「どうしたの? ユーリ?」

 

 正面に座っていた姉のミニストーリアが、少し驚いたような声でこう聞いてきたので、俺は更に泣きたくなった。こんな些細な表情の変化に気付いて、気にかけてくれる家族がいる幸せに。

 俺は急いでテーブルに顔を伏せてこう言った。

 

「すみません、なんでもありません。目にゴミが入っただけです。行儀が悪くて申し訳ありませんが、少しこのままの格好でいいでしょうか?」

 

「もちろん構わないけれど、部屋へいったん戻る? 貴方疲れてるんじゃないの? 少し休んだ方がいいのじゃないかしら」

 

 と母が心配そうに言うと、隣に座っていたべルークが立ち上がりかけたので、俺はそれを右手で制した。

 

「本当にたいした事はないんだ。大丈夫だから、お前は俺の代わりに、今日あった事を話してくれ」

 

「わかりました」

 

 やがて話し合いが始まった。まずべルークが今日あった事を話した。

 アンドレアの事、北の詰所での出来事、そしてマリー嬢との事。

 

「アンドレア君は本当にスウキーヤ男爵とは関係ないと思います。

 それと、騎士団の皆様にお願いしましたスウキーヤ男爵のお子様達の情報は着々と集められているそうで、後ニ、三日で報告が出来そうだとおっしゃっていました。

 マリー嬢と僕が恋人同士だという噂はかなり広まり、ほとんどの人達がそれを信じていると思います」

 

 べルークの説明に皆が頷いたようだった。そしてマリー嬢がこれらの事をどう捉えているのかと聞かれ、べルークはこう答えた。

 

「マリー嬢には市井にいた頃から思い人がいるそうです。それなのに無理矢理男爵家に連れ込まれ、しかも皇太子に近づくように指示されて、ほとほと困っていたようです。

 市井においてマリー嬢はダンスの名手としてとても有名な方ですが、男爵は何か思い違いをしているようなのです。マリー嬢を多くの酒場の踊り子同様、男に色気を振りまき、手玉に取る魔性のような女性だと。

 多分、ご自分がそのような女性とばかりお付き合いをしてきたのでしょう。

 しかし、マリー嬢は酒場でなんか踊った事はないんですよ。彼女が踊っていたのは、『ワゴントレインピープル』の仲間達との憩いの場とか、年に一度の秋祭りのダンス競技大会の時でした。

 彼女の踊りはとても健康的で、見る者達をぱっと元気にするような明るいもので、父親が思っているような、男を誘惑するようなものじゃないんです」

 

「まるで見た事があるような口ぶりだね」

 

 兄のバーミントの言葉にべルークが頷き、

 

「昨年の秋祭りの時に、ユーリ様とご一緒にダンス競技大会を見物しに行った際、彼女の踊りを拝見しました」

 

 と答えると、えーっと女性陣から声が上がった。

 

「祭りに出かけたなんて話を聞いていませんよ。もしかして、二人で出かけたの?」

 

 と、母。なんで今頃そんな事で驚くのかな。ただの祭り見物くらいで。しかし、姉も怒りを含んだ声で続けた。

 

「また護衛も付けずに出かけたのね。貴方、自分の立場をわかっているの? いつ、どこで、誰に狙われるのかわからないのよ。いくら貴方が強いからって、べルークが巻き添えになったらどうする気なの?」

 

「しかも、そこで暴漢に襲われたマリー嬢を二人で助けたそうですよ」

 

 イズミンまで参加した。

 

「えっ? 貴女はこの事を知っていたの?」

 

 姉の言葉にイズミンはこう続けた。

 

「はい。つい最近ですが。だから私もお兄様をうんと叱っておきました。べルークを危ない目に合わすなって」

 

「「全くだわ。今度こんな事をしたら承知しませんよ」」

 

 顔を上げてキョトンとした俺に、女性三人が更に声を強めて酷く叱った。

 

「何なのその顔は。反省していないわね!」

 

 と。何故?


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