1章 裏切りの勇者 2話 リライフ
魔王はそう言うと、おもむろに球体の身体を勇者の額に張り付けた。周囲から見たら、勇者の頭が光っている様にしか見えない。そんな中、魔王は小さな声で呟いた。
「…この魔法はな、ある魔族が死に間際に創り上げたんだ…俺の師匠だった男さ。」
そう呟いた魔王は少し間を置くと、意を決したように、悲痛そうな声ポツポツと語り出した。
「俺の師匠は、強力な呪文をいくつも創り上げたからな、人間達に恐怖を与えたんだ。だから、呪文を全て創り終える前に、始末したかったんだ。だが師匠は殺される寸前にこの魔法を完成させた…………師匠が命がけで創ったこの魔法は、自らが"死ぬ"事で、自分の今までの記憶を全て、その魔法を掛けた相手に全て記憶させることができる。師匠を殺した人間は、その情報量に耐えられず即死したさ。俺にもかけられていたが……まぁ俺は魔族だ。魔法の事ならお手の物って訳よ。それでも3日は気を失ってだがな。」
「そ、それじゃあ…俺は…し…死ぬ……⁈」
勇者は自分がもう死んでる事を忘れ、絶望した。勇者は中々天然なのだ。
「馬鹿野郎。もう死んでるだろうが。その為に死んでもらったんだ。俺が1人分でも耐えられなかったのに、人間であるおまえに2人分の記憶が入ってきたら頭が耐えられずに死んじまうだろうよ。そうすると2度手間だからな。」
魔王は溜息をつきながら投げやりにそう言った。
ーー今、魔王は焦っている様には見えないがだろうが、実は、死してなお、魔法を行使し続けてる事により、その"魂"自体を消耗している。もう残されている時間は少ないのだ。
「だが、俺の記憶を手に入れたら、今こそ使えない"魔法"も、使えるようになる筈だぜ。これで、てめぇの利益も生まれた。つまりこれで準備は万端って訳だ。じゃあ、行くぜ!」
魔王の掛け声と共に、勇者の頭の中に、魔王と、その師匠の記憶が入り込んで行った。
「………⁈…ぐぁ……ぁ…あぁ…‼︎」
勇者は突然襲いかかってきた頭の痛みに耐えられず、地べたを転げ回った。
「………そりゃ痛ぇだろうよ…大体一生で得られる情報が2人分全て入ってくるんだ。しかも情報量は普通の魔族とは比べ物にならないくれぇ多いからな………ぐっ…そろそろ俺もやべぇなぁ……あ…あと少しだ……」
そして、勇者が数分ほど(時間は止まっているが)もがき苦しんだのち、突然もがくのをやめると、頭を抑えながらも立ち上がった。
「……………………」
「……知る事が出来たか。」
「…ああ、全て知った。」
ーー勇者は先程までとは打って変わって感情表現が極端に小さい。だが、心の内側から溢れ出るドス黒い怒りの感情は隠し切れていない。勇者の人柄を知る誰もが、今の勇者を今までの勇者だとは思わないだろう。それほどまでに、魔王の記憶は衝撃的なものだったのだ。
「さあ、仕上げだ。俺が最後の力でてめぇの時間を死ぬ前まで戻す。そのあとはてめぇ次第だ。好きにしやがれ。」
もう魔王は限界なのだろう。初めは元気に動き回っていた身体も、今や光の玉は力なく点滅を繰り返している。
「…俺はこの世界を変えてみせる。……必ずだ!」
「そうか。行くぜ勇者!てめぇの生き様を俺に示してみやがれ‼︎」
そう言うと魔王は限界に達した身体に鞭打ち、限界まで力を振り絞ると、魔王の身体は一瞬にして瞬く光になり、勇者を包み込んだ。
「…………まぁ、なんつーか、……ぜってぇ死ぬなよ。」
そんな声が聞こえたかと思えば、勇者の意識は闇に包まれたーー
ーー勇者は不意に目が覚め、ゆっくりと起き上がると、辺りを見渡した。やはり、勇者が倒れていたのは、魔王城の様だ。……どのくらい倒れていたのだろうか、問題の聖女も、勇者軍の兵士も、今は気配一つ感じない。そして、勇者は着ていた服を脱ぎ、自分の身体を見てみると、その身体には傷一つ見当たらなかった。
続きはコメントか感想が書かれてたら描こうかなって思っています。とりあえずどんな事でもいいので感想などよろしくお願いします。