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全員でヒロシを取り囲み、手にした武器で次から次へと小突きはじめた。
みんなけっこう強めに突いていたので、当然痛みは感じるはずなのだが、ヒロシはそれでも動かないしなにも言わなかった。
滝本はそれを、ただ見ていた。
少しばかり可哀想かなとは思った。
だからと言って止めに入るつもりはなかった。
そんなことをすれば、いくら滝本とはいえひと悶着あるのは間違いない。
けんかが強いとはいっても、武器を手にした四人相手では、あまりにも分が悪い。
それに滝本は四人を仲間だと思っていた。
初対面の男をかばって、仲間とやりあうわけがないのだ。
四人がかりの少突きあいは次第に力が入り、よりエスカレートしてゆく。
滝本が、もうそろそろこいつも限界かな、と思ったときに、それは起こった。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ヒロシが女のような声で、大きく悲鳴を上げたのだ。
少し離れた場所にいた滝本の耳が、じんとするほどの大音量だった。
「なっ?」
「おい?」
「えっ?」
「……?」
もっと近くにいた四人は、さすがに怯んだ。
ヒロシを囲っていた輪が、少し広がった。




