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その後ろを滝本がつとめ、最後尾がヒロシだった。
中に入るなり、四人はお約束どおり奇声を上げながら、暴れ始めた。
手にした得物で目に付いたものを、次から次へと叩き壊してゆく。
とてもじゃないが、肝試しと言った風情はどこにもなかった。
わかっていたことではあったが。
滝本はそれを黙って見ていた。
しばらくすると木戸がこちらにやって来た。
「おいヒロシ。なにぼけっと突っ立ってるんだ。おまえもなにかしろよ」
木戸はそう言うと、手にした金属バットでヒロシのわき腹辺りを小突いた。
もちろん同じように突っ立っていた滝本には、なにもしないしなにも言わなかった。
滝本は木戸先輩に好かれていた。
その上、普段はおとなしい滝本だが、見た目に反して喧嘩は異常なほどに強かった。
やんちゃが過ぎて窮地におちいった先輩達を助けたこともあり、それゆえみんなからは、一目置かれていた。
しかしパシリを絵に描いたようなヒロシは違っていた。
「なにしかとしてんだよ」
再び金属バットでヒロシをつついた。
いつの間にか、好き勝手に暴れていた三人も集まってきていた。
「おい、つまんねえぞ」
「なにかしろよ、なにか」
「黙ってないで、何とか言えよ」




