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ただ噂がたって以来、地元ではこの廃遊園地は、一種の心霊スポットとして認知されるようになっていた。
その噂のスポットへ、肝試しに行こうというわけだ。
とは言っても、この木戸先輩とその仲間連中が、肝試しだけやっておとなしく帰るはずがない。
事実集合場所に集まった滝本をのぞく五人のうち四人は、金属バット、太い鉄パイプ、バールのようなもの、そして斧を手にしていた。
どれをとっても普通、肝試しには必要がないものだ。
ただ一人だけ何も持っていない男がいた。
滝本が初めて見る男だった。年齢は十八歳くらいだろうか。
この面子の中では一番若そうだ。
おまけに背も低く、身体も見るからに貧弱である。
なによりもかもし出すオーラが、他の四人とはまるで違っていた。
四人は道を外れた体育会系無頼派と言ったところだが、この男はどこからどう見ても、真逆にしか見えなかった。
一言で言えば、オタクあるいはいじめられっ子。
滝本がじっと見ていても、少しうつむいたままで滝本を見ようともしない。
なめるように見られていることに気づいている風にもかかわらず。
「ああ。こいつヒロシな」
木戸はヒロシと呼ばれる男を紹介する時、ヒロシの頭をバンバン叩いたが、ヒロシは抵抗などいっさいせずに、目を閉じてじっとしているだけだった。
滝本は確信した。
こいつはパシリだと言うことを。
「それじゃあ行きますか、みなの衆」
リーダー格の木戸が先に歩き出し、その後ろをカクガリ、グラサン、パンチパーマが続いた。




