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ふと目覚めた。
日が昇り始めている。
身体は動く。
上半身を起こして木戸のいたと思える場所を見た。
木戸はそこにいた。
少し離れていて、あたりはまだ薄暗いにもかかわらず、一瞥しただけでわかった。
木戸が死んでいることが。
滝本が力なく立ち上がろうとした時、いきなり目の前にヒロシが現れた。
――!!
滝本は中腰のまま動けなかった。
血まみれで、信じられないほどに真っ白い顔のヒロシが滝本の顔を覗き込んだ。
ヒロシの顔は滝本の顔のすぐ目の前にあった。
恋愛中の男女の距離だ。
その時滝本は気づいた。
――息をしていない!
滝本はヒロシの手首をつかんだ。
なぜだかわからないが、ヒロシの顔を見ているとついさっきまで体内に収まりきらないほどもあった恐怖心というものが、すうっと消え去っていた。
脈はなかった。
息もしていないし脈もない。
死んでいるのだ。
ヒロシはすでに。
ヒロシが滝本から離れた。
やがてゆっくりと歩き出し、観覧車の中に入り席に腰を下ろした。
そして滝本を見て笑うと、その顔のまま静かに目を閉じた。
終




