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滝本は地面を見た。
そこにはグラサン、パンチパーマ、カクガリが転がっていた。
どう見ても三人とも死んでいる。
木戸ほどの強い絆はなかったが、それでも滝本にとってこの三人は、まぎれもなく仲間だった。
悲しみとも苦しみともつかない心情に浸っていた滝本だったが、ふとあることに気づいた。
連続的に聞こえてきた金属バットの打撃音が消えている。
顔を上げると、信じられない絵が滝本の目に飛び込んできた。
木戸の金属バットをヒロシが両手で挟み、止めていたのだ。
――真剣白刃取り?
それは子供の頃にテレビの時代劇で見たことのある、真剣白刃取りにしか見えなかった。
素早く的確に動く木戸がふるうバットを、両手で挟んで止めてしまうなんて、そんなことは考えられない。
しかし目に映る現実はそうではなかった。
身体の大きな木戸が全体重をかけて動かそうとしている金属バットが、小さく貧弱な男が両手で挟んでいるだけなのに、微動だにしないのだ。
まったくもって、ありえない。
するとヒロシが動いた。
金属バットを両手で挟んだまま、木戸に向かって突進したのだ。
「うわっ!」
木戸の身体がまさに吹っ飛んだ。
まるで大型ダンプにでもはねられたかのように。
「先輩!」




