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召喚されといてなんだけどおうち帰りたい  作者: かんむり
第4章:本: 始まりを告げる終わりの音
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72話 『プロローグ』

 DEMA-01――そこは世界の果てが初めて見つかったとされる地。

 魔大陸北部、文字通りその最果てに位置するこの場所は魔大陸の中でもさらに別世界。

 頑強な鋼の折を挟んだ先、眼下に広がった景色はまさに……。


「……砂漠!?」


「ハイ、その通りでございますぅ。この大陸の北部……かの魔★王★様! が誕生された際、この周辺地域すべてが干★上★が★っ★た! との説も残されていマスゥ。〝災禍の時代〟その発端と呼ぶにふさわしい光景でございまショゥ!」


 なんともまあ物騒なことを平気な顔して言うものだ。

 折に入ってしまえば、先に見えるのは真っ白な世界。

 歩くたびに沈み、飛び散る砂に色はなく本当に真っ白……砂と言うよりは、灰と言った方が正しいのかもしれない。

 空は一層紅く染まっており、時折何かが落ちているのかと思えば、それが何かの頭蓋骨だったりする。

 魔界の本当の姿と言わんばかりの光景に、ネーアたちは大陸に上陸した時以上に圧倒され、言葉すらだせずにバタシの背中を追い続ける。


 ―――そして。




「……やあ、よくきたね。」


 レルレは宣言通り、逃げも隠れもせずその場所で待ち構えていた。

 バタシがかつての同僚とも呼べる彼女に語り掛けようと、目の前まで歩み寄っていく。


「レルレサン、お久しぶりでございますぅ。かれこれ何★年! ぶりでございまショウカ?」


「早速だけど、少し昔話をしようか」


「無★視!!」


 レルレはバタシよりも慎重が一回りと少しほど低い。

 目の前にバタシがいてネーア達からは完全に隠れているが、そんなことはお構いなしにバタシ以外に向けて話を始めようとしていた。

 ――しかし。


「昔話だと? 貴様、オレ達をこんなところまで呼んでおいて一体何が目的だ!!」


 グルッドがそう言いながら一歩前に出る。

 前と後ろ、両方から殺気を感じたバタシは慌ててレルレの前から逃げるようにしてネーアの陰に隠れるが、レルレは露わにした殺気をため息に乗せて言った。


「はぁ……やはり君は君だな。襲い掛かってこなかっただけ及第点としておくよ。……じゃあ、先に一つ誤解を解いておこう」


「何……?」


「そもそも、僕はネーアと、ついでに勇者様以外呼んでいない。君たちが勝手についてきただけだろう? まあ、別に僕からしたら君たちがいようが関係ないからいいんだけれど……変にしゃしゃり出るのはやめてほしいな」


「……バカット」


「最初からお呼びじゃねえってか……確かに、あん時の手紙もわざわざ最後尾にいた嬢ちゃんに渡してたしな」


「団長、一旦おとなしくしてましょ。下手に動いてまた返り討ちにあいたくはないでしょ」


「あ……あぁ……」


 グルッドが渋々後ろに下がると、レルレはとってかわるように一歩前にでて、人差し指を地に向けて指しながら話をつづけた。


「……丁度ここさ」


「「――??」」


「今から5000年前、丁度この場所に世界の果てが現れた……そしてこの場所から、先々代魔王レヴ・ルフィリオンが誕生した――それが災禍の時代の始まり。魔王を倒すために召喚された勇者が、最終的に倒した魔王よりずっと強い魔王になるだなんて、世界というものは実に残酷なものだよね」


「……何が言いたい」


「死んでいった者の怨念が、みんな魔王が生まれたこの地に寄せられる。積もり積もった怨念は、きっかけヒトツで大爆発を起こしてしまう」


 レルレはどこか悲し気な表情を見せながらそう言うと、マントの内側から一つ、何かを取り出してみせる。

 手のひらに収まるほど小さなソレを、レルレは足元に落とす。

 ぽとり、ぽとりと。

 ひとつ、またひとつ、マントの中からいくつもそれが落とされ、次第に小さな山を作っていく。


「……!! 貴様、それは……その〝耳〟は……!!!」


 グルッドが大きく顔をゆがめながらレルレの行動を見る。

 そう、落とされているものは〝耳〟。

 殺害された大国騎士団員たちの、綺麗に剥ぎ取られていた耳たちだ。


「僕が耳だけを剥いでいたのは、魔力の集まる場所でちょうど持ちやすいのがココだったから。そろそろ彼らの怨念もみなこの場所に集まっているだろう……さて、見ていてごらん」


 レルレがそう言うと、山を作った耳たちから何かどす黒いモヤが現れ、どんどんと地面に吸収されていく。

 モヤは次第に地面の砂をも黒く染め上げ始め耳が形を残さずすべてモヤと帰す頃には、半径2,3メートルほどの真っ黒い楕円を作り出していた。


「怨念というのもいわば欲の塊……地に帰った魔力の怨念は姿を変え、きっかけを与えれば〝その姿〟をあらわにする」


 黒く染まった砂の上。

 レルレはそこに右手をかざすと、自身のマ素を地に注ぎ込み、何か持ち上げるようなしぐさを見せる。

 ―――すると。



 〝ドッッゴオオォッッッッ!!!!!!〟


「なッ!?」


「なんだ――ッ!?」


「「ネーアッ!!!!」」


「爆発しさ――――!!??」


「なんですかぁ―――ッ!!?」



 黒く染まった砂が大爆発を起こした。

 辺り一面を衝撃波と砂埃が走り、空からは白くなった砂の雨が降り注ぐ。

 砂埃は高さ数メートルにも昇るほどに高く、視界が開けるまでにもそれなりの時間がかかってしまった。


「み、皆大丈――――!?」


 視界が開け、ネーアが他の面々に声をかける。

 ……と、目の前に飛び込んできた光景は、レルレに剣を向けるアネラ、アレル、グルッド――そしてメルオンの姿。

 頭の上に乗っているスマと隣に飛ぶメリィ、そしてバタシ以外、みなここぞとばかりにレルレに襲い掛かっていた。

 しかし誰一人としてその刃を届かせることは叶わず、レルレ自身も澄ました顔をしてマ素でできたどす黒いバリアを張っている。

 そしてレルレが展開している二つのバリアに順番に手をかざすと、四人は二人づつに分散するようにして弾き飛ばされてしまった。


「やれやれ。気持ちはわからないけれど、もう少し落ち着こうか」


「……!!! あれは!?」


 ネーアが目にしたもの。

 爆発が起こった起点……そこには小さな黒い渦が浮いていた。

 渦は次第にその姿を大きくしていき、30秒もしたころには人一人が入れそうなほどに大きなものとなる。


「さて、問題だ。この渦はなんだろう?」


 レルレが渦を指さしながら問いかけたその問題。

 弾かれ、地に伏せてしまっていた四人が頭をあげ、彼らも時を同じくして渦に目を奪われる。

 そして皆が唾をのみ、声を合わせてその固有名詞を口にした。


「「世界の果て……!?」」


「うん、よくできました。――50点」


 笑顔を見せ、小さく拍手をしながらながらレルレが言う。

 50点ということは、つまりは半分正解……しかしそうだというのならば、どう見ても世界の果てにしか見えないソレは一体何だというのだろうか。


「しかし……あまり焦らすのもよくないね」


「――ッ!?」

(また……後ろに……!?)


「ッ――ネーア!!」

「嬢ちゃん!!!」


 ネーアのすぐ後ろ。

 耳元に囁きかけるレルレは、そのままネーアの背中に手を置くと、彼女に対して短くこう告げた。


「さあ、行っておいで―――〝答え合わせの時間だ〟」


「は!? ちょっと待っ―――!!!」



 ――トン。



 レルレは彼女の背中に添えた手に力を籠め、目一杯押し出した。






 つづく

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