表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚されといてなんだけどおうち帰りたい  作者: かんむり
第2章 災禍の渦と勇者の伝承
30/80

29話 『冥界の霧』

 ―前回までのあらすじ―

 昨日はお楽しみでしたね

 ===[王都メフィル]城門前===


「…疲れたあぁぁ……」


 翌日、ネーア達は再び城へとお呼ばれした。

 しかし先日の騒ぎのせいか、ネーアの無事を知ったギルド関連の連中が、ここまで来るすれ違いざまに絡みに絡みまくってきたのだ。

 おかげで既にネーアの疲労度はMAXな上、予定より1時間も到着が遅くなってしまった。


「うん……その、大変だったな」


「うぅ……」


「メ、メルオン・ラウルスティン殿御一行ですね。どうぞ中へ」


 そんな3人を、すごく気まずそうに門番兵は中へと案内する。


 =========


 王座の間にはバタシ、魔王(睡眠中)、アレル、グルッド。

 既にミネルバの町へ帰って行った神官を除き、既に役者がそろっていた。当たり前ではあるが。

 3人は視線を感じながら恐る恐るその中に入っていくと、ルーダスの前で跪いて謝罪の言葉を口にする。


「申し訳ございません。少々諸事情がありまして到着が遅れてしまいましたこと、お詫び申し上げます」


 かなり顔を強張らせて頭を下げるメルオン。

 ルーダスはそれにパンっと一回手を叩いてから口を開く。


「気にすることはないよメルオン殿。何分土地が広すぎるが故、人が遅れてくるなんてよくあることさ。顔を上げたまえ」


「お心遣い、感謝いたします」


 メルオンが言い顔を上げると、ルーダスは再び手を叩いて話を進めた。


「とはいえ時間もおしてる。手早く行こう・・・・ネーア殿、わたしの前へ。これを見てほしい」


 ルーダスは懐から箱を取り出してネーアに見せる。

 それを見てネーアはビクッと反射的に反応してしまったが、前回のように発狂するようなことにはならなかった。


「これは、この前の……」


「そうだ。バタシ殿、改めて説明をお願いしよう」


「ハッ!」


 メルオン達の右隣にいるバタシが答え、前へ出る。

 そして一度ネーアの方へ向くと深く、床に頭をつけるほど深く頭を下げた。


「ネーアサン、マズは先日手★荒! な真似をしたコトにコトに対しぃ? 大変深く! お詫び申し上げますゥ」


「あ……は、はぁ……」


 ネーアが若干、いや大分引き気味に答えると、バタシは頭を上げる。


「デワデワ、本★題! に入らせていただきまショぅ! そちらの国王陛下がお持ちの箱……ネーアサン。貴女に触っていただきタイ!」


「は!?で、でもこれって……」


 ネーアの反応に続いてグルッドが口を挟もうと前に出る。


「お言葉だがバタシ殿。それは世界の果てから採取したものではないのか?それなら触っても何も起こらなかったぞ?」


 その言葉にネーアも頷く。

 バタシは2人に対して首を横に振り、「チッチッチ」と指を振って口を再び開いた。

 アレルはその素振りに舌打ちをしてみる。


「昨日、国王陛下には申し上げましたガ? これは我々の技★術★の★結★晶! にして世界の果てに今最も近しい存★在!……そノ名モ〝冥界の霧〟でゴザイますぅ」


「冥界とは……また物騒な名前だなおい」


 メルオンが口を挟む。

 彼の言葉にバタシは、その首を120度ほどグルんと曲げてまた指を振って続ける。


「ノンノン! 冥界と言えそのママの意味ではゴザイマセン! 世界と世界のハザマ……中心世界セントラル・ビギニングと呼ばれるバショでゴザイますぅ」


「それって、管理者が言ってた……!」


 ネーアがその言葉に反応して耳をピクリとさせて口を開く。

 曲げた首をグルんと元に戻し、頷くバタシ。


「ソの通りぃ! 渦の管理者が住まう世界でゴザイますぅ。トワ言え未★完★成!のこの箱、一定時間ノミその世界へ接触デキルというモノなのですぅ」


「え……そ、それはつまり……」


 身震いしてネーアが後退る。


「そんな危険なモンに触れってか?」


「そんなのオイラたちがさせないさ!!」


 メルオンとメリィが断固反対とネーアを守るように立ち上がった。


「マァマァお二人とも落ち着いてくだサぃ! 接★触!すると申しましても!! 本物ノ10分の1にも満たない力しかありませんこの箱!! つまりぃ? 触れたところで存在が削られるようなコトはアリマセン!!」


「その言葉、信用できんのか?」


 メルオンが一応警戒態勢を解いて言った。

 それにだらだらと汗を流しながら何度も何度も首を縦に振るバタシ。

 ルーダスがそこで再び手を叩き、自分に注目させるようにする。


「彼はこれでも正規の魔王側近なんだ。そんな横暴なマネはしないよ……で、ネーア殿どうかな。無理を言っているのはわかっている。イヤならわたしは無理にやれとは言わない」


「えっと……ボクは」


 正直嫌だ。

 本物だったらまあまだ仕方がない。

 こんな訳の分からない、他人が作ったものに触れと言うのは不愉快極まりない。

 しかし王様にそんなこと言う勇気があるかと言われればそれもない。

 ネーアがどうしようか決め悩んでいる時――


「オイラがやるさ!!」


 メリィが声高らかに名乗りを上げた。


「「メ、メリィ!?」」


 ネーアとメルオンが声を合わせて驚く。


「これ以上ネーアばっかりに背負わせられない!オイラでも大丈夫なはずさ!!」


「ホム?そうなのデスかぁ?バタシとしては効果があるのならドチラでも構いマセンがぁ」


 ネーアの代わりにメリィが箱を持つルーダスへと、鼻息を荒くさせて向かう。

 ルーダスはネーアに目配せした後メリィを見て、口を開いた。


「確かに……君も召喚魔法の術者であり召喚者だ。本当にいいのかね?メルオン殿がいいというなら止はしないが」


「オレは、そいつの意思を尊重しますよ」


「さあ!早くするさ!!」


「……メリィ」


 ――ありがとう。

 ネーアはその名をつぶやいた後に、そっと心の中で感謝する。

 もちろん彼がどうにかして責任を取ろうとしているのはわかっている。

 感謝よりももっと堂々と、当たり前だろくらいの気でいてもきっと彼は気にしないのだろう。むしろその方が彼にとっては気が楽なのかもしれない。

 しかしネーアは彼が前向きに責任を果たそうと、献身しようという姿勢に対して、素直に感謝をした。


「ふむ……わかった、いいだろう。ではメリィ殿、手を」


 ルーダスが箱を差し出し、メリィがそのモヤに手を付けた。

 同時にメリィはギュッと目を瞑り、何でも来るなら来いとつばを飲み込む。



 ―――そのまま数分間、特に変わったことが起きる気配はなかった。


「「「「…………」」」」


「何★も!起こりませんねぇ?」


「……の、ようだな」


「ほっ……」


 バタシとルーダスがそう言うと、後に続いて安どのため息がメリィから漏れる。

 ―――次の瞬間


 ボカンッ!!!!


 小さな爆発音とともにその箱が砕け散った。

 幸いルーダスとメリィに外傷はないようだったが、2人は驚きのあまり大きく体制を崩す。


「びっくりするよさ!!!!」


「本当だな……バタシ殿?これは」


 ルーダスがそう言ってバタシの方を見やる―――と、彼はしまった!!と顔に書いてあるように目を丸くして驚いた顔をしている。


「モ………申し訳ございマセン!!!消失したということはぁ?間違いなく反★応!を示したというコト……なのですがぁ!!爆発するとは思いもよらずぅ……!!!!申し訳ゴザゴザゴザゴザゴザいません!!!!」


 本気で、顔を床にめり込ませて頭を下げたバタシ。

 そしてその時、脚の隙間から彼は見た。聞いてしまった。覗いてしまった。


 ネーアが頭を抱えている様を。


 彼女が口にしたその名前を。





 つづく

 今回かなり悩みました。冥界の霧、結構めんどくさい設定ぶっこんじゃって出すかどうかすっごい悩みました。ちょっといじって出しました。

 理不尽っていうのはこの作品のテーマの一つになってますが、それをぶち壊しかねない恐ろしい設定です。ああ怖い。小物出すときには注意しないと(戒め)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ