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召喚されといてなんだけどおうち帰りたい  作者: かんむり
第2章 災禍の渦と勇者の伝承
27/80

26話 『其の夢が終わるとき』

 ―前回までのあらすじ―

 スマの声が聞こえない

 ===[グレン荒野]北西部 黒塔の高台===


「健全な姿……?」


 アレルは素直な疑問を彼―バタシにぶつける。


「エエ。先程も申しましたがぁ?彼女は現在とても不安定な精神状態……自身のおかれた状★況!に耐え兼ねパンク寸★前!といったところですネェ。それは無理やり世界の果てに触れ、望まぬ介入をさせてしまったレルレサンの責任ですぅ。あの方の能力チョット特殊でしてぇ、こちらからお話することはデキナイのですがぁ?バタシは罰もお受けしますしぃ、知っている情報も差し出しまショウ!代わりに勇者サマ!アナタに彼女を元に戻してイタダキたい!……悪くない条件デワ?」


 グルんと首を回してバタシが言う。

 アレルは腕を組んで少し悩んだ後、バタシを指さして口を開いた。


「なげぇ。3行にまとめロ」


 バタシは首をそのままに目をぱちくりさせる。


「バタシ罰受けマス

 情報出しマス

 あの娘助けてくだサイ」


「ハナっからそー言えっつの―――……つってもナァ」


 アレルはこの数日間、ずっと冒険者ギルドで雑用をさせられていた。

 ネーアをみようともギルドマスターの少女にずっと怪しい目で監視されていて全然状況を把握できておらず、どこがおかしいのか皆目見当もつかなかった。

 変わったことと言えば、髪の後ろで結んでいたリボンの位置が、数日前ギルドで見たときは頭の左側に変わっていたことくらい。あと少し女の子っぽくなったような・・そうでもないような。


「穴倉ン時からあの間に……なンかあったかァ?とりあえず……」




 ===[王都メフィル]宿屋ステイラ 中部屋===


 ネーアは不思議に思いながらもスマを頭の上にのせると、急に体が黄色い光を帯びた。


「へっなにこれ!私なにかした!?」


「したと言えば……スライム触ったくれえだよな?嬢ちゃん……なんか神々しいな」


「そんなこと言ってる場合さー!?」


『ヨシ、まだ繋がンなぁ……スライム見つかったかァ!!』


 困惑している3人をよそに、ネーアの頭の中にスマではない声が直接響いてきた。

 そのアレルの声はメルオンとメリィには聞こえていないようで、どうやらこの光が関係しているらしい。


「みつかった……けど、なんか私光ってるのなんで!?」


「ソイツぁオレの魔力の残り香みてェなモンだ。それを通じて話してンだヨ。見つかったンなら外出ろ!この高台イメージすりゃ、こっち戻ってくっからヨォ」


「え……う、うん。ありがと」


 ネーアはお礼を言うと、通話が途切れるとともになぜか舌打ちが聞こえてきた気がしたが、アレルが無事であることが分かって少し安心した。

 相変わらず体は光ったままだが、彼の元へ行けばどうにかなるのだろう。

 行動するのは早いに越したことはない。

 ネーアは宿の外へ向かおうと出口に向かおう………としたところで、イスに座っているメルオンが彼女の腕をつかんだ。


「待て」


「えっ」


 険しい表情でネーアを見るメルオンは、彼女の目をじっと見つめる。

 それにネーアは顔を赤らめて視線をそらした。


また(・・)逸らしたな」


「ご主人……?」


 メルオンは立ち上がってネーアの顔を両手でもち、自分に向ける。


「メ、メルオンさん…?」


「……オレとメリィも連れていけ」


「へっ……」


「連れてけ!」


「は、はい!」


 メルオンは別に何か言おうとしていたことがあるような顔をしたが、またしても言い出せず、最低限の意思を伝えるだけで精いっぱいだった。

 3人は宿の外へでてピッタリとネーアに捕まる。


「こ、これで大丈夫か?」


「さあ……とりあえず、行きます」


 ネーアは記憶の片隅から、先ほど登った高台をイメージする。

 すると体を覆う光が強まり、メルオンやメリィにも移って3人は宙へ浮いた。

 そのまま一直線で荒野の北西部……黒い塔があるそちらの方へと飛んでいくのだった。




 ===[王都メフィル]冒険者ギルド===


 昼間はネーアを探して騒がしくも人が散っていたギルド内は、ひとまずいつも通りの顔に戻っていた。

 ただ会話はネーアが消えたということで持ち切りだ。


「どうしちゃったんだろうねえ……見たところそんな無責任に放棄するような娘には見えなかったんだけど」


 3番カウンターの女性が、隣の4番にいる同僚の男性へ話しかける。


「頑張ってたもんなー……あの笑顔は天使のようだった………!お前受付の時変わったようなこととかなかったのかよ?」


「特にそんな素振りはなかったから、余計ウワサになってるんでしょ?ホントどうしちゃったのかなあ……」


「心配はいらんよ」


 そんな2人を見て、奥の事務所から小さな女の子が顔を出してくる。

 その少女――ギルドマスターのミイルはギルドの片隅……階段の陰に置かれた掃除用具を指さして言った。


「あの娘はもうみつかっちょる。白馬の王子サマ……なんて生易しいモンじゃないだろうけどね。ホラ!ぼさっとしてないではよ仕事しな!」


「「は、はいぃっ」」


 ミイルはその後もウワサ話にうつつを抜かすスタッフを締め上げ、大事な雑用係の帰りを待っていた。




 ===[グレン荒野]北西部 黒塔の高台===


「ン……来たなァ?……ッンか多い気がするがまァ……オッサンならいいや」


「オイラ無視さ…?」


 間もなくして、ネーア達3人が高台に到着した。

 同時にネーアの体にまとわりついていた黄色い光も収まる。

 早速と言わんばかりにスマを頭の上から手のひらに移すネーア。


「連れて来たけど……どういう状況なの?コレ」


 ネーアは初めに飛ばされた時と状況があまりにも違っていて困惑していた。

 アレルは長男――バタシの隣で機嫌悪そうに腕を組んでいるし、バタシはニコニコと笑って立っていて、後ろに見覚えのない子どもが寝ている。


「ンで、アイツの何が変っつーんだヨ」


「わ、私が変?急に何言ってるの……スマ、連れて来たんだけど」


「ン……ああ、そだッた」


 ネーアに答えると、アレルはスマの頭の上に手をかざした。

 するとスマが先ほどのネーアの様に光り、その光がアレルの手へ吸い込まれていく。

 しばらくするとそれは収まって、アレルは手を引っ込める。


「コイツの再生、体はマ素でできてンだケドよ、それと魂結びつけンのにオレの力の一部、コイツに入れてっから返してもらわネェとと思ってなァ」


「ん……なんかわかんないけど、無事ならいいよ?……で変がどうとかって何?私、全然身に覚えがないんだけど」


「ないわけないのさ!!ネーア!やっぱり変だよさ!!!」


 ここぞとばかりにメリィが声を荒げる。

 その目には不安と共に涙が浮かび上がっていた。


「マアマアそう騒ぎ立てると魔王様が起きてしまいマス……ナルホド、手★早★く!自覚していただくには見せた方が早そうですねぇ」


 バタシがネーアの方へ歩み寄って、そっと懐に手を伸ばす。

 警戒してメルオンが動こうとするが、アレルが視線を送って首を横に振ると、ひとまず体制を崩した。


「こちらを、少々見ていただきたいのですがぁ」


 バタシはその黒いモヤが溢れる箱をネーアに差し出して、目の前に見せる。

 ―――すると


「あ………あァア…………な……ンデ………?」


「ネーア!?」


 ネーアの喉から声にならない、恐怖に似た喘ぎが漏れた。

 バタシは一歩前進してさらに箱を近づける。


「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」


 ネーアはそのまま耳を両手で隠すように蹲って、その悲痛な叫び声と共に泣き崩れてしまう。


「おいテメエ何をしやがッた!!」


 メルオンではなくアレルが先に、剣を突きつけてバタシに言った。

 バタシはその剣をそっと上から降ろすと、なにやら少し躊躇している様子のメルオンの方へ口を開く。


「アナタァ、どうやらアナタの方が勇者サマより適任のようデスぅ。……どうか、救っていただけませんカ?この哀★れ!な女羊を……」


「……」


 メルオンは黙って、ネーアの肩に手をついた。





 つづく

 アレル君のキャラがいつの間にか短気系になってるのは気のせいではなくすべてわたくしの力不足によるものです。ホンマスマン勇者様。


 そろそろこんな夢も飽きてくるでしょう?タイトル詐欺だもの。さっさと覚まさせてあげましょうね(下種の極み)

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