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愛の育て方

作者: 亜ヰ美-aivi-

私エマ・ゲイヤァーは今年17歳になる侯爵令嬢。

本が大好きで、恋愛小説から歴史、図鑑なんでも読む。

あ、唯一虫系の図鑑だけはダメだった。

あの足がうにょうにょ一杯あるのとか、グロテスクで受け付けない。

勉強やダンスなどの教養がない時間は庭の木陰や部屋でまったり読書が日課。

今は学園に通っているので、お昼休み中庭の木陰で読書をしている。

やるときはちゃんとやる、でも普段はのんびりまったりを愛する少女だと私は自分を分析している。


そんな私は、最近よく恋愛相談をされる。

理由は婚約者と仲睦まじいから、その秘訣を教えてくれとのこと。

確かに私と婚約者のノアは仲が良い。

今日もお昼を一緒にとってから、中庭の木陰で二人で読書をしていた。

毎日ではないが、ノアが忙しくなければ学園の送り迎えもしてくれる。

私の婚約者はなんて紳士で出来た男なんだと常日頃から思っている。


と私ののろけはこのくらいにして、今日の相談者は驚きの公爵令嬢ハンナ・オーリィ様。

宰相閣下のご令嬢で、王子であるレオン・リュゥフワ殿下の婚約者様だ。

お二人が一緒にいるところを見た事はあるが、別に仲が悪いとは思わなかった。

なので、思ったことをそのまま伝えてみた。


「えぇ、確かに殿下には良くしていただいていますの。ただ……」


ハンナ様は少し顔を赤らめ俯き気味で話し出した。


「私は殿下をお慕いしておりますの。今の関係も嬉しくないわけではないのですが、貴女方のようにもっと仲良くなりたくて。やっぱり欲張りかしら?」


「そうですね……欲張りとは私は思いませんが、私達のようにですか。これといって特別なことをしてはいないと思うのですよ。ただ話したり、一緒に本を読んだりしているだけですよ?」


「確かに特別なことはしていないと思います。けれど、そのお互いが側にいるのが当たり前と言うような雰囲気と言えば良いのでしょうか?それが凄く羨ましいのです」


「なるほど。そうですね……」


うーんと私は顎に指をかけ、空を見上げながら考える。


「あ、そのしぐさ!」


「しぐさですか?」


「えぇ、たまにお見かけするのですが、ノア様も考え事をするときにそのしぐさをしますよね?」


そうだったかな?と考えると確かにノアは考え事をする時に、よく顎に指をかけて空を見ている。


「無意識でしぐさまで同じことをしてしまう。そう言う事が私も出来るようになりたいのですわ」


ハンナ様はさっきまで俯いていたのに、今度は目を輝かせて胸の前で両手を組んでいます。

え?おねだりポーズ?


「そうですわ!是非参考に、お二人の馴れ初めを教えてくださいな」


な、馴れ初め!?

身を乗り出すようにお願いしてくるハンナ様に、私は一歩足を引きながら焦った。


「いや、馴れ初めと言われましても、私とノアは政略的な婚約ですよ?」


「えぇ、わかっておりますわ。ですから、初対面の時の話を聞かせてほしいのです!」


あぁ、これは話さなければ帰してくれないパターンだ。

ハンナ様の目が本気過ぎる。


しょうがなく私はノアと初めて会った時の事を語りだした。



――――――――――――――――――――――――――――――



7年前……



私は父に連れられてキィムン侯爵家にお邪魔した。

こちらのご子息ノア・キィムン様との婚約が決まったそうだ。

お互い10歳と同い年だし、家格も釣り合う、そして何より政略的に良いと考えての事だとか。


「エマ・ゲイヤァーと申します。ノア様よろしくお願いしますわ」

「ノ、ノア・キィムン、です。よ、よろしく、お願い、します…」


姿勢がよく、お辞儀は綺麗なのにどもってしまって勿体無い。

互いに自己紹介をし、雑談をしながらノア様の性格・気質をみていく。

ノア様は三姉弟の末っ子長男で、気の強い姉達のせいで気弱に育ってしまったようだとは侯爵様談。

おどおどしているような印象だが、目が合い微笑めば恥ずかしげに微笑み返してくれる。


父達は二人で盛り上がっているようなので、この機会にノア様に言っておこうと思うことがある。


「ノア様、これからは婚約者と言うことで、私の事はエマと呼んでください。それと公の場でなければ畏まらず、楽な話し方で構いませんわ」

「エマ……うん、ありがとうエマ。僕の事もノアって呼んで。エマも話しやすい話し方にしてくれたら嬉しいな」


どうやら父達がこちらを気にしていなければ、声は小さめだが普通に話してくれるようだ。

おどおどして見えたのは緊張していたのもあったのかな?

二人で微笑み合いながらほんわか。

そして私は本題を切り出した。


「ノアにお願いがあるの」

「お願い?」

背筋を伸ばし真剣に話す私に、ノアも背筋を伸ばししかし可愛らしく小首を掲げた。


「私達はいずれ結婚し、夫婦になるわ。政略的な婚姻だけど、私はノアと愛ある夫婦になりたいの。その愛は恋愛でなくても友愛、家族愛でもいいわ」

「愛ある夫婦……」

「えぇ、今日あったばかりで今すぐ愛することは難しいとわかっているわ。けれど結婚するまでにまだ時間があるの。だから、それまでに愛ある仲の良い夫婦になる為の努力を私と一緒にしてもらえないかしら?」


いつの間にこちらの話を聞いていたのか、父達がビックリしているのがわかります。

けれどそれは無視して、ノアの目を真剣に見つめます。


「……うん。僕もエマと僕の両親のようになりたいから、一緒に努力するよ!」


少し考える素振りをしてから、輝かんばかりの笑顔で答えてくれるノア。

ノアのご両親は社交界でもおしどり夫婦と有名で、ノアが私とそんな風になりたいと思ってくれていると思ったら、私も自然と笑顔になっていた。

そんな私達を父達は微笑ましげに見ていた。


「ノア、折角だからエマ嬢に当家自慢の庭を案内して差し上げなさい」


「はい、父上」


ノアは立ち上がり、行こうと私に手を差しのべてくれた。

私は父に了承を貰いノアの手を握って二人で庭へ出た。


私達は手を繋ぎ、綺麗な花々を見ながら他愛もない話をした。


「エマの好きな事、教えて?」


「私は本を読むのが好きよ。基本的になんでも読むけれど、最近は恋愛物をよく読むわ」


「女の子は好きだよね。姉様達もこれが良いあれが良いってよく話してるよ」


ノアはその姉達にやれこの王子様みたいになりなさい、いやこの騎士様のようになりなさい、と色々言われているらしい。

その時の姉達の真似をするノアが面白くて笑ってしまった。

ノアも肩を落としながら苦笑いしている。


「この間読んだ本がね、婚約者同士が両想いなのにすれ違って、お互いの為に婚約破棄をしようとするって場面のある物語でね。勿論最後はハッピーエンドだったのだけど、もっと話し合ったりするのが大事だって思わされる物語だったの」


うんうん、とノアは相槌をうってくれる。


「それで私もノアと婚約したでしょう?物語としては面白いものだけれど、私はノアとその物語の主人公達みたいにすれ違ったりはしたくなかったから、ノアには私の気持ちを伝えていこうって決めたの」


だからその第一歩としてさっきの話をしたの、とノアに微笑みかけた。

ノアは空を見上げながら何かを考えるように顎に指をかけ、うんと一つ頷いたあと私に視線を向けて真剣な顔をした。


「確かに家族でも言葉にしなきゃ伝わらないこともあるし、話し合っていくことは大事だね。エマが僕との事を真剣に考えてくれていることが凄く嬉しいよ」


そしてノアは私に微笑んでくれた。

私達はこれから色んな事を一杯話していこうと約束した。



――――――――――――――――――――――――――――――



あれから気弱だったノアは、次期侯爵としての自覚を持ちしっかりした優しい青年に成長した。

顔は普通だからか、学園入学時は私がいることもあり注目されるような事はなかったのだけれど、背が伸び、優しく紳士的な言動をするので、最近人気が出てきているようだ。

ライバルが増えてきてちょっと焦ってます!

まぁ、ノアが私を一番に思ってくれているのは言葉でも態度でも示してくれているので、ちょっとで済んでますけどね。


昔話も終わり、ハンナ様は頬を紅潮させ素敵ですわぁと何処かにトリップしてしまった。

小声でブツブツと「初めからお互いを想い合っているなんて」とか「もう誰もお二人を引き裂くことは出来ないのね」とか、なんかおかしい方向に飛んでいってる。


別に昔話をしただけで恥ずかしいことなんてしてないのに、なんか恥ずかしい!

ハンナ様のお花畑脳がどんどんエスカレートしていってる!

私、まだノアとそんな事してないよ!

AとかBとか何ですかそれぇぇぇ!


その後、ハンナ様はお花畑から戻ってきて、満足げに帰っていった。

顔を真っ赤にして項垂れている私を残して……




「そんな事があったんだ。だから今日殿下達にお礼を言われたんだね」


「本当に一人で恥ずかしかったんだから!確かにお二人が仲睦まじそうなのは良かったけど、もう絶対恋愛相談のらない」


私はまたあの恥ずかしさが甦り、両手で顔を隠した。

そんな私の両手をノアは外し、悪戯を思い付いた子供のような笑みを浮かべた。


「じゃあ、してみる?」


私はなんの事かわからず首をかしげると、次の瞬間、唇に柔らかいものが触れてすぐに離れていった。

ノアが何をしたのかわかった私は、唇を両手で隠し、目を見開き、声なき声でなんで?と問いかけた。


「僕とキスしてるところ想像して恥ずかしかったんでしょ?それなら恥ずかしくなくなるように慣れれば問題ないでしょ?」


ニッコリ笑いかけるノア。

いやいや、問題あるよね!あるよね?


「それとも、僕とキスするの嫌だった?」


少し寂しそうな顔で問いかけられた。

絶対作ってる!その顔作ってる!

最近ちょっと腹黒くなってきたの知ってるんだから!

でも、知ってても首は勝手に横に振られてた。

そして、ノアは嬉しそうにもう一度私の手を外した。


「それじゃあ、これからは話だけじゃなくて、キスも一杯していこうね?」


そう言ってノアはまたキスをしてきた。

私は顔を赤くしながらも、今度は目を瞑って受け入れた。



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