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転生女神のおやつ係  作者: あきよし全一
8/8

8 海苔チーズかりかり焼き(※打ち切りエンドです)

8 海苔チーズかりかり焼き


「それで、この幼女は何ですか?」


 ミドリムシは不満そうな顔で、天井からのぞく僕と女神様の顔を交互に眺めた。


「ママだよ。おにいちゃん、なかよくしてね」

「聞いての通りよ。血の繋がった『ママ』という名前の妹。優しくしてあげてね」

「詐欺だー! やり直しを要求する!」


 ミドリムシが泣きわめくのを放置して、僕と女神様は神殿に戻った。


 あれからというもの、僕と女神様は数多の転生志願者(へんじん)どもと面接をしてきた。

 その誰もが無理難題を押し付けてきた。それを僕たちは見事な知恵で解決してきた。


『なぜ転生する主人公の武器は剣なのか。俺はグレートクラブで無双したい!』

「はいはい、まずはひ弱な体をどうにかしましょうね~。はい、ライズァップへの入会権」


『転生するなら今度こそ事業を興して成功させたい。通販の会社で商業無双するんだ!』

「はいはい、物を配る仕事ならビールっ腹をどうにかしましょうね~。はい、ライズァップへの入会権」


「現代の料理知識でお菓子を作って、商業無双するんだ!」

「お前、チョコや生クリーム作るのに腕の筋肉どれだけ必要だと思ってんだ。はい、ライズァップへの入会権」


「なんでも出てくる魔法のポケットをくれ」

「いいけど、すげえ重いわよ。はい、ライズァップへの入会権」


「現代日本のファッションで大儲けよ!」

「肉体美がないと、どんな服も輝かないわよ。はい、ライズァップへの入会権」


『転生するなら筋肉に守られたいですわ。お付きの者は必須ですからね』

「はいはい、ライズァップの入会権~」




「もう百人は転生させましたか。がんばりましたね、僕たち」

「ええ。途中から面倒になって全てを筋肉で解決した気もするけど、問題ないわよね」


 そう言いながら、今日も女神様はゴロゴロ寝てばかりいる。

 僕は、ずっと気になっていたことを聞いた。


「あの、女神様への信仰って集まらないんですか?」

「あぁン?」

「だって、いつ見てもダルそうにしていて……力が入らないように見えます」


 すると女神様は悲しげに微笑んだ。


「キミとも長い付き合いだし、教えてもいいか。ええ、そうよ。私の命はあと少し、もって3日ってところね」

「そんな! どうして、もっと早く教えてくれなかったんです!?」

「そして、少年。キミの命もあと3日なのよ」


 一瞬、言葉が出なかった。3日? 誰の命が?


「そんな冗談、面白くないって顔してるわね。でも事実よ」

「どうしてですか!? 僕は何も悪いことしてないのに」

「最初に会ったとき、言ったわよね。『両親も友達もいるのに、ここへ来るなんて面倒だ』って」


 女神様との出会いを思い出す。たしかに、そんなことを言われた気もする。


「転生志願者を見ていれば分かると思うけれど、彼らは地球との繋がりが薄いのよ。縁がない、と言い換えてもいいわ」

「縁がない……」

「しかしキミは両親や友人といった縁があるのに、ここへ来た。つまり――寿命が迫っている。それだけのことだったのよ」


 背中を氷の板でなでられたような、おぞましい寒気が襲ってきた。寿命? 僕が? 未成年の学生なのに?

 いつの間にか起き上がった女神様が、僕のことを真っすぐに見つめてくる。


「キミと地球の縁は切れた。なのにキミは転生を拒み、地球とこの世界の狭間に落ち込んでしまった――物理的にではなく、魂の居場所がね」

「まさか、これ以上落ちないように、女神様が支え続けてくれたんですか?」


 すると女神様は、頬を赤らめて目を逸らし、小さく小さくうなずいた。


「転生させた連中が、行く先々の文明に私の存在を伝えてくれたら良かったんだけどね。信仰心がガッポガッポ儲かれば、私もキミも長生きできたかも知れない」


 でも、と女神様は近くの木に拳を叩きつけた。


「転生者どもが、あんなに薄情だとは思わなかったわ。みんな自分の力に酔っていて、私のことなんて思い出そうともしないんだから!」

「そんな……何か手はないんですか?」

「残念ながら、時間が足りないわ。信仰が集まるまでの間、私たちの時間が止まれば別だけど」



「……え? 時間さえあれば大丈夫なの?」

「え?」




 一か月後。そこには元気に走り回る女神様と僕の姿があった。

 僕は女神様の管理する世界に引っ越すと、女神様と一緒に二人分の時間を停止させてもらったのだ。

 もちろん、事前に転生者たちのところへ顔を出し「チート能力を取り上げられたくなければ、女神様を信仰し布教しろ」と脅しをかけておいたわけだが。


「さすがね。こんな奇想天外な方法で寿命を延ばすとは、人間の爆発力は侮れないわ」

「気づかなかった女神様が鈍……いえ、何でもないです」


 女神様の鉄拳が、近くにあった立木をぶち抜き、倒れさせた。

 僕は胸をなでおろす――危うく助かった命を無駄に散らすところであった。


「それじゃ、今日も転生志望者(へんじん)どもの面接、始めましょうか!」

「はい。生きるためには働かなくてはなりませんからね!」

「その意気よ、少年!」


 かくして僕と女神様は、面白おかしく過ごしましたとさ。おしまい。


【海苔チーズかりかり焼き】の作り方

1 大判の焼き海苔を半分に切ります。

2 オーブン用の鉄板にのせます。焦げ付きが心配な人は、くっつかないアルミホイルを敷いてください。

3 海苔の上にシラスと溶けるチーズをのせます。たくさん乗せるとベチョベチョになるので、下の海苔が見えるくらいセコく乗せるのがコツです。

4 1200Wで2分焼いたら出来上がり。焼き時間はW数に合わせて調整してね。


 以上、本編に出せなかった海苔チーズかりかり焼きのレシピでした。

 冷めないうちに召し上がれ。

長い間、更新を待ってくださった皆様、申し訳ございませんでした。

勝手な言い分ではありますが、次回作を応援して頂ければ幸いです。

料理作るのって難しいよね…


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