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転生女神のおやつ係  作者: あきよし全一
7/8

7 作戦会議

 長い、長い、沈黙があった。


「家に帰らせてください」

「イヤ」

「両親がお雑煮(ぞうに)を作って待っているんです。僕はそれを食べなければならない」

「私を置いて逃げるつもり!? キミがいなくなったら誰があのミドリムシ(、、、、、)の相手をするの!?」

「自分で召喚したんでしょう? 自分で何とかしてくださいよ!」


 僕は、すり寄ってくる女神様を引きはがそうとして――やめた。

 現代日本の僕の家へは、女神様にワープしてもらえないと帰れないからだ。無駄な労力は使わないほうが利口というものである。


 僕が抵抗しなくなったのに気づいて、女神様は目を輝かせた。


「おっ、分かってくれた? 地球人同士、あのミドリムシを処理ってくれる?」


 ――ひとを処刑人みたいに言うの、やめてくれませんか。人聞きの悪い。


 ちなみにミドリムシ(、、、、、)――緑色の服を着たキモい男のことだ――は、女神様に時間停止の魔法をかけてもらってある。


 僕は前回、母に怒られた経緯があったので

「地球の時間も止めておいてください」

と頼んだのだが、あっちは管轄外(かんかつがい)の世界なので大きな力は使えないと断られた。肝心なところで頼れない女神様である。


「参考までに聞きたいんですけど、ミドリムシが転生勇者に選ばれた理由って何ですか? いじめられてたとか?」

「お父さんが金持ちだから、いじめどころか一目置かれてたみたいね」


 僕は思わず、ズッコケそうになった。


「ってことは『お年玉10万円ください』って願いは、お小遣い感覚で言ってたのか。じゃあ、お母さんと仲が悪いとか?」

「母親にも溺愛(できあい)されてたみたいよ」

「じゃあ何が不満なんだよ!?」


 僕が叫ぶと、女神様は悲しそうにため息をついた。


「みんなが、そう言ったからよ」


『お前がうらやましい』

『生きてて嫌なことなんて何も無いだろ』

『俺がお前の立場だったら絶対に成功しているハズだ』


 空気の読めないミドリムシでも、自分に羨望(せんぼう)の視線が向けられていることは流石(さすが)に気づく。

 それは遅効性(ちこうせい)の毒のように、彼の心を蝕んでいったのだ――


「……悩みは人それぞれですね」

「だからね、彼はこう祈ったの。『神様、俺自身の能力を、違う環境で試させてください』ってね。それで私の召喚が届いたんだけど……」

「あの我がまま三昧(ざんまい)に応えないと、転生してくれない訳ですか」


 女神様は、ゆっくり頷いてみせた。


「お年玉は宝石でも何でも出してあげられる。後は年下のママを出せって部分だけね」

「うーん……矛盾してるのは年齢の部分ですよね。じゃあ、こういうのはどうです?」


 かくして、僕と女神様の作戦会議が始まった。

次回、紹介する予定の料理は「海苔チーズかりかり焼き」です。

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