変なモンスター
16階は取り立てて特筆すべきモンスターは表れなかった。しかし、フロアモンスターは特筆すべきモンスターだった。シティのモンスターを調査した中には居なかったモンスター。しかも扉がそこにはあった。ああそうかこれはダンジョンモンスターなんだと感じた。僕が最初に出合ったモンスターはさほど珍しいモンスターじゃなかったけど、大蛇と言いダンジョンの最深部を守るモンスターは特別な意味があるのかもしれない。見た目はただの犬だけど1,2Mはある大きい。多分これ乗れる。体高がこれだから全体は2,3Mある。馬よりちょい大きい犬。怖いこれ。どんなモンスターか分からないけどすぐに僕達は一体化した。
しかし、このモンスターが奇妙なのはすぐ目の前に僕らが居るのに、後方から狙うミルの方に向かっていった。これは驚いた。そういうモンスターは多々いたが、最初からそうしたモンスターは初めてだった。このモンスターは何かが違う。ただ僕らは万が一にそれは考えてある。素早い犬だがそれでも一体化した僕らの敵ではない。すぐに隙だらけの体に切り傷を入れてやった。さすがに驚いたようですぐに距離をとった。当たり前だ。真正面からぶつかっても一体化した僕らのスピードには大抵のモンスターは対応できない。ましてミルだけに狙いを絞って攻撃したモンスターに僕らがそれをのんびり見守るようなどんくささは無い。
ただこのモンスターやけに慎重だ。今の攻撃が見事すぎたので逆に囮だったんじゃないか?とでも言いたげに警戒心を高めてきた。なんだこいつ何かが変だ。すぐに僕とミルで魔法攻撃をした。舐めるなよ距離をとった敵との戦いなんてずっとしてきてるんだ。僕らが決定的にフロアモンスターと違うのは基本リボーンによって次々生まれる彼らとは経験が違う。ただこのモンスター最高階が10階までならダンジョンが生まれてずっと生きてると思う。何かがこのモンスター違うんだ。ただそれが何か分からない。ミルと僕の魔法が大技だったのですぐに避けてしまった。広範囲でも詠唱の長い魔法はよろしくない。あくまで僕とのコンビネーションで使う魔法だった。僕が無詠唱の魔法を打ち込めば良いけど、まず見ると違って無詠唱は威力が小さいのと、範囲が狭いので当たらない。根本的に当たらなくても良いからフェイント誘導に使うものでこうなるとやっかいだ。ああもうなんだろうなこの違和感。避けられることなんて良くある。それを考えて僕が同時に攻撃してるのにそれさえ避けられてしまうってのが変なんだ。
取りあえず真正面勝負で僕らは負けたわけじゃないので気を取り直して接近して攻撃した。手ごたえはあった。しかし、浅い傷なら付けられうがすぐに逃げてしまう。そうだ違和感は基本モンスターは攻撃的なので向こうからしかけてくる。どうも今回逆になってる。これはちょっと変化をしてやるか。僕とルゥは離れた。スピードよりかく乱を狙った。僕は隙が多くなるミルとの距離を離さないための位置につけひたすらルゥでかき回す作戦に出た。一体化は見られていたので特に驚きもしなかったがやりにくそうな姿を見て僕は自然と笑みがこぼれた。絶えず攻撃する事でかく乱してるので目の前にルゥにしか集中できないためミルの魔法が効果的に使えてきた。ミルは当てにいったわけじゃない。逃げられたら面倒だと言う位置に大規模魔法を展開した。何度かそれで犬は魔法を食らっていた。イライラしてる様子だ。
狙い通りになってきた。犬はさきほどのようにミルを狙ってきた。実はミルが攻撃の要だと気がついたようだ。だがそれはもう考えてある。相手は頭が1つ。僕らは3つ。そう実は切り札は僕だった。このパターンは先ほど攻撃を受けたばかりなのにと相手の隙を突いて、僕はガツンと切ってやった。ただなんて奴だろうな。僕が下手なのもある。ただその下手さでも今までも多少外れても切ってしまう剣で切り抜けてきた。それでもさっきよりは深手を負わせた、血がぽたぽた出てる。僕としてざっくり切ったつもりなんだがな…。次の展開は思いもよらない事態になった。
[ああーーまったまった。降参ってあり?]
犬がしゃべった。
僕らはミルを守って警戒しながら包囲した。ルゥがこの中で尤も反応速度が良い。だからここは一番どうでも良い僕が他のメンバーに警戒しろって意味が分かるように話した。
「良いよ。たださ君を倒さないとその奥の扉が開かないんだよね」
[降参と言うより僕を仲間にし無い?]
「そんなモンスター聞いた事が無い」
[僕はねここから縛られて動けないんだ。でも君たちと一緒なら多分離れられるんじゃないか?と考えたんだよ]
「サトル、そのモンスター滅茶苦茶な事話してないです。どうやってその考えに至ったのか?多少分かりませんけど、例えば戦闘中に私達がこの場を離れたとしたらフロアモンスターは律儀にその場に留まるのでしょうか?違うんですよ追いかけてくるんですよ。過去にフロアモンスターが2体出たって話を聞いたことがあります。だからそのモンスターを連れて帰っても扉は別のモンスターを倒せば開くかもしれません」
「何故急にモンスターの味方?」
「そのモンスターおそらくメスです」
「どういう事?」
「眷族に出来ます」
僕は唖然としてしばらく沈黙。僕の眷属を増やす事に一生懸命なルゥさんそんな事も考えていたのか…。




