大兎
いやーこつこつ集めたけどフロアモンスター見てあほらしくなった。でっかい兎が出てきた。モンスターの図鑑をギルドで見たことがありその時見たモンスター、ジャイアントラビット。そのまんまやな。基本体当たりと後ろ足での蹴りだけなので攻撃の幅が少なくて一体化せずに戦った。僕ら二人でホンロウするのが目的だった。ただ僕はどんくさいので多少てこずった。闘牛士の様に華麗に切るはずがそんなには上手く行かなかった。さすがに体当たりをもろ食らって飛ばされるは無かったけど、ルゥの様に危なげなく華麗に体当たりを避けるのは出来なかった。あぶなかしく避けて切り刻んだ。でかいからどんくさそうなのでホンロウしてやろうと僕が考えた作戦だったけど、これ失敗だった。こいつ体当たりしか無いけど早いんだよな。剣さえ持っていればこの程度なら死なないと思うけど、無傷は苦しかったと思う。
《旨いねこれ》
トロル肉がやっと切れて真っ先にミルが声に出した。
「うん旨い」
ただ僕はミルに気を使った。食うために魔法を工夫したのはミルだから。僕は弱い同系統の魔法で真似しただけ。実際は良くある普通の獣肉だった。モンスターって案外旨い。これはモンスター独特のものじゃなくて、ただの家畜の肉に似ていた。何か嫌な思いが頭をめぐった。もしや2本足のモンスターは人間に近いのではないだろうか?と考えてしまった。4つ足だったので。トロルはイマイチだったけど、野性味がきつい獣肉って感じだったけど。家畜って洗練されてて旨い。2本足系のモンスターは根本的に動物の種類が違うって感じだった。それがちょっと気になっていた。町には帰らず野営のまま10階に挑戦した。シティと違って町から遠いので僕らはたまにしか帰らずにどんどん進んでいたので攻略が早かったのも在る。フロアモンスターは倒したあとのリボーンの仕組みが良く分からなかった。ただそこで野営した場合安全な事が多いのでいつも上には行かずに野営して一夜過ごすことが多かった。
10階は特に目立ったモンスターが居なかった。何故ここが最高到達階なのか?謎だった。しかしその謎はフロアモンスターによって分かった。フロアモンスターは通常上の階と下の階を繋ぐ付近に出現する。ただ上の階に行く気がなかったらモンスターを見て引き返すことが十分可能だった。ただし、そのまま気がついて大きくその付近を出て追いかけられることはあるようだが。例の一つ目の怪物が出てきたのだ。懐かしい今はもうあれが何か?知っている。サイクロプス。当時はただ見てるだけだったけど、今回は一体化してリベンジするつもりだ。
あれ?当時より僕弱い…。ああ高い身体能力は得たけど、変に剣でなんとかしようとしてるからルゥの洗練された格闘センスに追いついてない。しかもルゥ当時より強くなっている。でも結局力技で勝てた…。当時と攻撃力が桁違いだった。ミルに助けてもらったけど、自身の防御力を試す機会となった。棍棒は長い戦いで切り刻んでやったけど、かすった程度だけど殴られた。基本的に大体避けてる。だから油断したと思う。だって前倒した敵だったから。自分の防御力の高さに驚いた。壁に打ち付けられるほどのパンチにかすったんだけど、そこまで酷いダメージじゃなかった。この僕がひざをついたというか倒れてしまったけど。
「突然倒れて、すごく怖かったよ」
ミルはすぐに回復魔法してくれたみたいだけど。当人はびっくりしたけど、ダメージ自体はそれほど無かった。普通に人に殴られた程度のダメージだった。ダメージ回避防御力って本当に良く分からないものだった。別に鉄みたいに硬くなるわけじゃない。だったら動けないじゃないか?となる。ルゥはそういう力が手足にはあったと思う。でも僕はそういうのじゃない。これは謎だな。とにかく何故かダメージがほとんど無いんだ。
町に帰って買い取り店の店長の所にいって報告しておいた。不味いかな?と思ったけど素直に喜んでくれた。あくまで兼業でやってるだけで、別に攻略されても困るわけじゃないそうだ。ただこの先どれぐらい続くのか?は分かってない。元々期限を決めてやってるので、それまでこつこつ潜るだけだ。以前から感じていたけど、シティって万が一攻略されたらどうなるんだろうか?未踏の塔ではあるが、いつかは誰かが到達するのだろうか?そうなるとあの町の経済はどうなってしまうのか…。
11階の挑戦はいろいろ考えされた。ハーピーだった。ただ以前フロアモンスターに出てきたメイジタイプのハーピーだった。これ本当に厄介だった。僕は基本的に物理魔法両方とも防御力が高い。おそらく剣の力。問題はミルだと思っていた。しかしどうもミルって魔法には相当強いようだ。さすが魔法使いと言うか。まず魔法のレジストを補助魔法として使っていた。基本的に魔法耐性が高い。なおかつ最後に自分だけの魔法結界の様なものを張っていた。この欠点は僕がミルに回復魔法を出来ない事だったが。その点高い自己治癒の魔法を持つミルにその心配は無用だった。ただミルのレジストと結界はミル以外には使えなかった。僕は良かったが実はルゥこそ魔法は弱点だった。でも全く問題にしなかったのは、基本的に人間に較べるとサイクロプスぐらいの生命力をあの小さな体に秘めていて、少々魔法のダメージがあっても、致命傷には程遠いほぼ豊富な生命力に支えられていた。しいて言うなら魔法が弱点だったが、本来ルゥは僕と一体化して戦うので今の姿は半身になる。それであの強さがそもそも反則なんだわ。
フロアモンスターは始めてみるグリフォン。飛行モンスターステージと言ったところか。そう言えばそこら中に岩肌があり山谷のようになっていて高低差の激しい地形だった。全くダンジョンってのは誰が設計したのか。その階の出現モンスターを生かせるような世界になっていた。こいつは強かった。ただまさに一体化が効いていた。ルゥが届かない高さでは僕が魔法を打ち。攻撃しようと降りてくるとルゥの身体能力と一体化した僕の剣のえじきになった。これに魔法のスペシャリストミルの攻撃が絡むから強いとは感じたけど案外早く倒せた。強いと感じていたのに何故?と疑問になって考えていると巨体型の飛行モンスターは巨体を生かした物理攻撃をどれだけ飛行が得意でやってしまう。案外通常モンスターであるハーピーメイジの方がてこずったのは僕の剣やルゥのジャンプ攻撃で痛い目にあうと滅多に降りずにコツコツ魔法攻撃をしてきたから。うーん巨体型の飛行モンスターって実は中途半端なんじゃないか?と思えてきた。あれだ突然ゴキブリの様に飛ぶから攻撃が多彩になるけど、巨体を生かした攻撃が得意なのに常時空中から魔法攻撃っておかしいと今になると分かる。グリフォンはゴキブリ攻撃をするべきだった。尤も僕らが強すぎたのも在る。
今回は気の抜けない戦いが多くて疲れたので一度町に帰る事にした。まずは店長に地下11階制覇の報告をしたら、何か冒険者らしきパーティを見かけた。




