ヌシ
「思ったんだけど、ルゥってたまに一体化の時僕を制御してるよね?」
「はい、特に初期はずっと」
「今は何故手を出さない?」
「倒せる相手なら全部任せたほうが良いと思うからです。一部だけ制御するなんてそんな器用な事中々出来ませんよ」
「僕さものすごく駄目じゃない?今更思ったけど、格闘も剣術も根本的な所は似てるよね?」
「そうですね」
「僕も多分格闘ならルゥほどじゃなくてもっとうまくやれると思う。それを剣術として上手く応用しようと最近分かってやってるけど中々。一体化してるんだから教えてくれても良いのに…」
「もう気がついてるかなと思ったため、まあ言葉にしていちいち言わなくても良いかと思いました」
「いやいや体で覚えるといっても言葉にするとまた違うよ。今回初めて意識してそうだ格闘も同じ所があるんだと感じれたから。そうかルゥ気がつくはずだよなって疑問だったけど、知ってて敢えて言わなかったのか。ミルもさダンジョン攻略に成功したらいずれ関係してくるからルゥの熟練したレベルの高い戦闘見ておいたほうが良いよ」
《うん》
「正直言えばミルほどレベルの高い魔法使いにそこまでやらせたくない。すべて僕がイマイチなせいだから…ごめん」
マイルズのダンジョンは不思議な場所だった。歴史が浅いとはいえ未だに最高地下10階しか到達したものが居ない。しかし1階を見る限り到底そんな困難なレベルじゃない。階を降りるたびに格段に強くなるのだろうか?そう思いマイルズで情報を集めようとした。それがとても苦労した。ミルがさすがに賢い子だとは言えまだ子供私と一緒に聞いて回り、同時にルゥも動いていた。だけど何一つ情報が集まらなかった。それが答えだった。おそらく冒険者が居ないのではないか?という事。もちろん全く居ないわけじゃない。ただそれは常に複数のパーティが町に常駐してダンジョンに向かってるわけじゃないようだ。ルゥの腕輪を手にしたダンジョンなんて誰一人合わなかった。それよりは以前来た時はすれ違うぐらいは居たこのダンジョンは人が多い。だがそれが多くてだったんだ…。
何故ここが人気が無いのか?は分からない。ただシティはダンジョンを支える町の方が実は重要だった。近くにシティと言う大きく活気があり産物をすぐ売りさばける豊富な市場があった。何故わざわざこっちに来るのか?僕達と全くと同じだ。制覇目的だけで来てそれが適わず戻っていくのを繰り返している。もし歴史が長ければそんな散発的な冒険者達にでも制覇されているだろう。しかし、ここは生まれたばかりだ。僕がすでに2つのダンジョンを制覇した。それは新たなダンジョンの誕生を意味する。どこかでまた新たなダンジョンが生まれたのかもしれない。そんな風にして最近出来たダンジョンがここだ。僕はずっと勘違いをしていた。近くにシティがあるからこそ冒険者が来ると思っていた。それが大間違いだった。全く逆。もし近くあれほど条件の良いダンジョンがなければここは専門の生産物を取り扱う店が出来てにぎわっていただろう。詳しい人間が多いから挑む人間も多いはずだ。そう挑む人間はいる。問題は続かないんだ。さて、僕らは長期間採算度外視でここに挑む。だからそのうち挑む人と合う事もあるだろう。それまでゆっくりボッチダンジョンライフを送らせてもらおう。
そうそう僕らは外れダンジョンだったけど、シティと似てると言うのがまた良くなかった。生産物が被るからシティに持って帰って高く売る事も出来なかった。ならわざわざ遠いここに来るよりあっちでそのまま続けるだろう。さて実際5階当たりまで本当に代わり映えもなく進んだ。しかも代わり映えも無いのに、苦労だけはあった。僕らは以前とは違って桁違いに強くなっている。だから以前諦めたのは正解だったけど、それでも人が居なくてやたらとモンスターと戦うのが多かったのは本当に疲れた。ミルに練習をさせるというのがちっとも出来なかった。ミルにそんな余裕があるわけが無い。広範囲魔法はとてもこういう相手に有効だったから。ただ僕も練習だとなるべく魔法を使っていた。気を抜いていたわけじゃない。さすがに以前よりは楽に戦えていたので雑な戦い方になっていた。ミルほどじゃないが、魔法って数の多い敵には本当に楽だ。
6階はやばかった…。苦手の飛行モンスターハーピーが出てきた。ただ魔法が無いのでそれほど苦労はしなかった。フロアモンスターはやや大型のハーピーで魔法を使う強化版だった。しかし飛行と魔法の組み合わせは本当に最強だな。ただ今回は魔法使いとして頑張ってる僕はそれなりに頑張れた。剣士としての拘りがものすごく抜けていた。それなりにはやってたが、僕は剣術で高いレベルになるのは苦しいのじゃないか?と思っていた。この世界何かしらの無茶が効く。それを追い求めてそれが行き詰ったら地道な努力をすれば良いと思う。出来たら地味な努力は避けるべきだ。なんか僕滅茶苦茶な事を考えていた。でもルゥは僕の今の考えに昔から近い。要するに日本の常識を捨てろって事なんだ。
あっという間に8階まで制覇した。最高地下10階ってこれ大規模なパーティで来ればすぐ到達できると思う。なんとなく分かってきた。僕らって3人のパーティではものすごくレベル高いかもしれない。ここに大規模なパーティ同士のグループで来るわけ無いからな…。後お金はちょっとずつなら溜まっていた。ただ同じだけシティで潜ったらもっと稼げていただろう。ここの買取屋って長く居て分かったことは、シティの出張所でこの町でさばいてるわけじゃない。それゆえ、シティの相場次第。おそらく経験上分かってきたのは、あっちより確実に安くしか買い取らない。向こうでだぶついた情報などを丁寧に把握して値段を変えているようだ。でも情報にも限界があるから必ず全品向こうの平均より安くなるように設定してある。うん分かってた嫌なら売るなという事だ。僕達は手持ちにいくらか残して売る事にした。こうする事で荷物として邪魔にならない限り、シティで売るように残すためだった。
9階はちょっと面白い階だった。大量の兎型モンスター。まあ怖くない。ただとにかく数が多い。ルゥが一番てこずった。僕とミルは魔法で対処した。ただ最初やきつくしていたけど、
「これさ食べられるんじゃない?」
「どうしよう?」
そんな風にミルと話してて、危険にならない程度に他の魔法による攻撃方法が無いか?試していた。僕らが余裕だったのに対して成果の上がらないルゥは最後の方に攻略法を見つけていた。大量の石を持って投げて殺すって技を編み出していた。人間離れしたルゥの反応速度があっての事だった。ただ並みの人間ならこれかなり危険。たかがうさぎと言えない。こいつら凶暴できちんと殺さないと噛み付いてくる。頑丈なルゥやミルを守ってる僕あっての余裕だった。まあ石ですべて撃ち殺せるなんてさすがに神業だった。僕はミルとの2段構えで倒してたからかまれるのはごく僅かだったけど、ルゥはなんかちらほら噛み付かれていたな。それをつかんでは地面にたたきつけて殺していた。上手く魔法を選択して丸焼けにならないように倒すことで肉は確保できた。ちなみに死体をそのままバッグに放り込んでいた。肉じゃなくても受け入れてくれる店もあるから。シティはここが強かった。ただこれから僕達はここに留まるので自分達が食べる肉として上手そうな兎の肉を集めていたのが大きい。ただ自分達が食べるようにルゥが思い切りぐちゃぐちゃにした酷い兎を使うつもりだった。




