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ウルフ

「さて困った。どうやって戦おうかな?」

「珍しいですねサトルがそんな風に前もって話すのは」

「遠距離攻撃がやっかい。幸い僕らはこのダンジョン以外の経験があるからある程度対応できるけど、それでも天狗は基本は近接型だった。集団であるが故の遠距離攻撃ってたちがわるい。ゴブリンも集団戦闘を得意とするけど、一階じゃそもそもそれほど大きな集団にならない。あちらこちらにばらけたパーティによって戦闘が行われてるから。それなら2階のアントの方が集団戦闘としては本格的だと思う。しかしだ遠距離攻撃は無かった。これがどれだけやっかいかと言うと結局どれだけ集団になろうが倒すのは目の前の敵になる。これが遠距離攻撃があると守られない。おまけにこれまでの敵とは比べ物にならない武器を持ったウェアウルフとの戦闘。多分苦にしないのはルゥぐらいじゃないかと」

「いやこういう時こそ遠距離でもそこそこ強力な魔法が放てるサトルこそ主役じゃないでしょうか?」

「そうかな。ミルどう思う?」

《私もルゥの意見に賛成。サトルは強いと思うよ。もっと自信持って良いと思う》


 完璧主義ってわけじゃないけど、出来る限りリスクを減らしたいと思うから神経質になりすぎてるのかな。取りあえず当たってみるかと僕らは出発した。しばらくしてすぐに敵と遭遇する。ただルゥがいきなり単独で飛び出して殺してしまった。


「ちょっとちょっと」

「各個撃破じゃないと不味いですよ。このゾーンのもう一つの問題って仲間読んだら来る事です。アントもそういう所がありましたが、アントはそれほどは連絡網が発達して無いです」

「最初だから慎重にと思ったけど不味かったか。うーんいろいろとぶっつけ本番だな…」


 ルゥ一人だと本当にこのゾーン楽勝だな。本当に僕が役に立つのか?ルゥと僕の決定的違いは、僕は頭で考えてどうにか集団の包囲から逃れようとするけど、彼女スピードと反応速度突破力でこの程度の相手にまず囲まれないから。根本的に僕からすると無茶苦茶すぎる。この程度だと集団で来る相手にまるで囲まれる恐怖を持ってない。


 次の相手はルゥだけだと瞬殺できなかったので僕らにも回ってくる。それでもルゥが先制攻撃で殺してなかったらと思うとぞっとする。無難にミルを守りつつ、向かってくる相手に剣で対応しながらミルの魔法攻撃に任せる。ただアントでは良かったこれが、やっかいな遠距離攻撃の炎弾と近接が強い武器持ちウルフによってかなりやりにくくなった。炎弾への対応は、僕が盾になり剣で弾く以外は諦めるで片付いた。基本弱い魔法なので連発でもない限り気にしないで、ミルの回復に任せた。一応剣を盾の様に使ってはいたけど、この特殊な剣によるところが大きくて全く一般的な防御方法じゃないと思う。


 僕が盾を持たずに防具をつけないのはこれがあった。ある程度の範囲なら剣で対魔法は防げた。何から何まで規格外の剣だ。ルゥの腕輪と言い、しょぼいと思ってもその効果は市販の武器なんか比べ物にならないハイパースペック。そもそもルゥの腕輪なんて、あんなただの腕輪が腕力アップとか剣を受け止めれる強度を持つとかがありえないんだ。あんなの普通は何かしら簡易魔法がこめてあるか?一般的にはアクセサリーだ…。


 さて後はルゥがしとめ損なったウルフだ。ルゥは武器持ちウルフが多いときは、ヘルハウンドは無視してそこを重点的に殺している。彼女にはそれほどの敵じゃなかった。まず腕輪で大半の剣が受け止めれるのと、ウルフ程度の腕力だと彼女の腕自体が剣をそのまま受け止めてしまう。僕の剣でさえ受けとめてしまうんだから。このあたりのルゥの剣に対する耐性はさっぱりわからない。だって普段触ったらふにゃふにゃして柔らかい女の子の腕だから。ただ念のため腕輪で受けてるようだ。基本だからヘルハウンドが僕らの相手になる。しかし、たまに数が多いと打ちもらす。ルゥだって限界がある。後は純粋に僕の剣の力だけだった。


 ただしちょっとずるいことをした。本気切りってのがあって、僕が余裕があって切り出す剣は相手の剣ごと体を叩き切ってしまうから。自分でもこれインチキ臭いと思う。だって完璧に防がれた攻撃が防げないってインチキ技だもん。まるで僕の剣の技術とは言えないものだった。僕の腕力でもない。むしろウルフの方が力あると思う。ルゥの効果によって多少は僕は人間離れした腕力を持つ。ただルゥ曰くそこが彼女の頭脳タイプの限界らしい。あまりに強くてきがつかないけど、ルゥが優れてるのは欠点の無いバランスにあって実は僕と似てるらしい。そこが一体化して力を発揮できる強みになっている。


 なんかいろいろ心配してたけど、結局力技で3階を切り抜けた。フロアボスはとにかくデカイウェアウルフ。一体その武器誰が持ってたんだよ?って謎の大剣を振り回していた。集団戦が得意なモンスターなのに何故かこの一匹であったため僕らは一体化してミルには単独での後方支援に回ってもらった。


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