ダンジョンの中
『起きてください』
女の声がする。目が覚めるとそこが石の壁に覆われた大きな部屋だった。しかし灯りも無いのに何故か明るい。見えないだけでどこかに灯りがあるのかな?そんな風に僕は考えていた。ああそういえば起こしてくれた女が居ない。
『居ますよ』
「誰?」
『ルーデシア。姓はあなたと同じで良いです』
僕は垣内悟。
「垣内・ルーデシア?」
『そうです。だって私はあなたの眷属ですから』
「そういえば僕は何故こんな所に居るんだ」
『ここは日本では無いですよ』
「ええ??そういえば君の声どこから聞こえてきてるんだ?スピーカー??そんな機械は見つからない。しかも聞こえ方が変だ」
彼女の声は耳から聞こえると言う感じじゃない。試しに耳をふさいで話してみた。
「君の声はどうも耳から聞こえてる感じじゃない」
『そりゃそうでしょう。話してるわけじゃないんですから』
明らかにおかしい。これで確定した。彼女は居ない。頭がおかしくなったのか?
『大丈夫ですよ。サトルはおかしくなっていませんよ』
今確かに僕は口に出してない。そうだずっと僕は彼女が居ると思って話しかけていた。今確かに僕はそう思っただけで口に出してない。どういう事なんだ。
『サトル、不味いですね。右を見てください』
なんだあれ??一つ目の巨人が棍棒を持って僕に近づいてきた。
『ああもう逃げるの無理ですね。仕方ないですね。どれぐらいか分かりませんが抵抗してみますか』
そう彼女は僕に伝えると、目の前に突然女が現れた。彼女はいきなり巨人に殴りかかった。助けなきゃとかそんな余裕が無かった。何が起きてるか?さっぱり分からずに彼女をずっと見てた。おや?彼女の攻撃効いている。馬鹿な蚊に刺されるは大げさだけど、ネズミが人に体当たりしてるようなものだぞ。巨人は確かに傷口が出来てる。ただ殴ったり蹴ったりしてるだけで武器なんて何も持ってない。彼女の4,5倍はある巨体だぞ。
僕は何か安心感のようなものが出来ていた。余裕が出来て見ていると2種類の攻撃を使い分けていた。彼女は打撲と切り傷に攻撃を分けている。打撲はシンプルに殴る。切り傷は表面をすぱっと切るように殴った時に相手の体で拳が止まらないようにしていた。相手の体が円だとするとその端を殴ってる感じになる。こうすると皮膚が切れて血が噴出するようだ。そもそも打撲そのものが効いてる事自体が体格差を考えると異常だった。それは剣と弾丸のように彼女が武器になっていた。段々巨人の動きが鈍ってきてヒザをついた時彼女は器用に相手の体を土台にして駆け上がり首をざっくり切って大量の出血とともに巨人は動かなくなった。
血だらけの彼女は僕に近づいてきたと思ったらそのまま消えてしまった。
『いやーー苦しい。もうちょっとやれると思ったのですけどね。これは不味いです』
「ってどこ行ったの?」
『ああサトル気が付いてないんですよね。あなたの中に居るんですよ』
「ええ何それ?」
『血だらけになってしまいましたからね。これで綺麗になります』
「僕につけた?」
『大丈夫ですよ。それより周りを見てください。これは不味いです早く脱出しましょう』
(いやそんな事言われても)
と思っていたら解決策ありました…。扉あるじゃないですか。でも何この怪しさ。
「ちょっと怪しくない?」
『でも虎穴に入らんずば虎子を得ずですよ』
「何かちょっとそのことわざ違う気がするんだけどね」
『サトルの語彙が少ないせいです』
「何それ?」
『一体化してるんですよ?私といろいろ共有しています』
「便利だね。つかー僕思うだけで良い?」
『そうだと思いますよ』
「もう今更良いや…、確かにそのことわざであってるかも」
『まだそんな事考えていたのですか…』
僕はこのことわざが適切だと思ったら自然と扉を開けていた。うーん混乱してたんだよな。ことわざがあってるから結果も正しいってなってしまっていたね。
「汝力を欲するか」
部屋に入ると突然声だけ聞こえてきた。
「ちょっと聞きたいのですが、ここから出るにはどうすれば良いのですか?」
「ああもうそういう対応困るな。話の流れと繋がってないじゃない」
「いやいや僕が聞きたいのはそこなんですけどね」
「いやいやいや、その流れは想定外だよ」
『あのーサトル、取りあえず力貰ってから話し聞けば良いんじゃ無いですか?この人そこが進まないと駄目なんじゃないですかね?』
「ラチがあかんね。取りあえず貰うー」
「何か軽いな…」
「あんたが例外に対応できないから合わせてるんじゃないか」
「んじゃ剣をあげるね」
何か見事そうな剣が現れた。ただ同時に袋が出てきた。
「この袋何?」
「金銀財宝だよ。多分価値があるんじゃないかな?金は力なり。えへへ」
「どっちか選べって話?」
「いやいや上げるよ。オマケみたいなものだよ」
「すごいじゃんこれ。これが剣のおまけなのこの剣何?」
「強い剣」
「何それ、何か特殊な効果があるとか無いの?」
「いや単純に強い剣というか強くなる剣。あのさそういえば脱出したいんだったね?後ろのキラキラ光ってる魔方陣に入ればこのダンジョンから脱出できるよ。頑張って使いこなしてね。ああ折角上げたんだからお金忘れないでね」
剣をベルトに刺して袋を担いで僕は魔方陣に入った。そうすると目の前の景色変わってだだっ広い草原に出た。ただ何かの入り口があった。なんだろうと近づこうとするとその入り口は轟音を立て始めたので、僕は危険を感じてそこから逃げた。やがて穴は埋まって消えてしまった。
(なんだったんだ?)