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チャンスゲーム  作者: ミケ
1/2

Do you need chance?

「話ってなんだぁ? 小林さんよ」


「ヒッ…い、いや、実はだね、御宅との取り引きは無しに…」


「あんだとォ!? 舐めてんのか!? あぁ!」


俺の名前は伊坂 悠人。

今日俺は、仕事でとある廃工場に来ていた。

仕事ってのは、さっきからビビりまくってる小物の麻薬密売人、小林を、目の前のチンピラ3人組から守る、言わばボディーガードってヤツだ。

さっきからクソでかい声で恫喝しているチンピラのリーダー、リーゼントとかいう古臭い髪型の彼は、煮え切らない態度の小林にご立腹のようだ。


「あんまふざけたこと言ってとよぉー、バラして沈めんぞ?」


そう言って、リーゼント君はナイフを懐から出して、刃先を舐めた。

まさに三流チンピラって感じだ。

しかし、それを見てビビった小林は、俺の背中に隠れるように後ろに下がった。


「おい、ちっと小林に痛い目見せてやれ」


短気なリーゼント君は、手下1と2に命令した。

ジリジリと距離を詰め、更にナイフを懐から取り出そうとする2人組。


ナイフってのは厄介だ。

というわけで懐に手を突っ込んだままの、手下1を前蹴りで吹き飛ばす。

次いで、ナイフを抜いて突っ込んできた手下2を横に一歩ずれて交わし、すれ違いざまに男の急所目掛けてひざ蹴りを叩き込む。


「オイオイ、やるじゃねぇの。クソガキ」


手下2人組が一瞬でやられたのをみた、リーゼント君が、ご自慢のナイフを持って近ずいてくる。


「死ねオラァ!」


大振りでナイフを振り回すリーゼント君。

一振り目を交わし、よろめいたリーゼントの顔の急所、鼻と口の間に突きを入れた。


「あんたらが弱過ぎんだよクソジジイ」


倒れるリーゼントに向かって、さっきの言葉への返答をした。


「お、おぉ! 凄いじゃないか! 」


近くのドラム缶の陰に隠れていた小林が、ひょっこり現れて、感嘆の言葉を述べた。


「俺の専属ボディーガードに…」


「ならない。金」


小林のオファーをにべもなく断り、報酬を要求する。


「あ、あぁ」


小林は懐から封筒を取り出すと俺に手渡した。

中身は、きっちり50万入っていた。


「確かに。あぁ、そうそう、追手が来る前にさっさと逃げたほうがいいぜ」


しっかりと忠告までする俺はボディーガードの鑑だな。


「わ、分かった」


そう言うと小林はそそくさと走り去っていった。


「さて、俺も帰るか」


俺は廃工場を後にした。


ーーーーーーーーーーーーー


俺は墓にいた。

俺の目の前にある墓には伊坂 京香と刻まれている。

彼女は、たった2人しかいない俺の肉親の1人で、自慢の姉貴だった。

なんせ身内贔屓を差っ引いても、文武両道、容姿端麗と完璧で、友人も多かった。

何より名義だけの親戚に代わり、高校を中退してまでバイトをし、俺たちを養った。


だが、2年前、姉貴は射殺された。

その報らせを聞いた時は信じられなかった。

犯人は未だ捕まっていない。


何故、姉貴が殺されなければいけなかったのか。

そう思うと、思わず拳に力が入る。


「やぁ、伊坂君」


不意に後ろから声をかけられ、驚きながら振り向くと、そこには、黒いワンピースを着た銀髪の少女が立っていた。


「誰だお前は? 何故名前を知っている?」


「まぁまぁ、落ち着いて」


少女は微笑みながら、矢継ぎ早に問う俺を制止した。


「私の名前は、うーんそうだなぁ…あ、プルートって呼んでよ。神様やってまーす!」


「は?」


意味不明な返事に思わず、変な声が出てしまった。


「うーん、その反応は寂しいなぁ。本当に神様なんだよ!」


少女は頬を膨らませながらそう言った。


「なぁ、遊びたいなら公園に…「お姉ちゃんにまた会いたくない?」」


俺のセリフに被せるように放たれた言葉は衝撃的で、俺は咄嗟に思考が停止した。

その様子に満足そうな少女は、にっこりと笑った。


「ね? どぉ?」


「…お前なぁ、あんまりふざけた事ばっか言ってんなよ」


大人気ないとは、思いながらも少女の言葉に怒りを覚える。


「大抵、皆そんな反応するんだよ」


少女は俺の怒りを全く意に介さず、満面の笑みを浮かべると、


「私の力、見せてあげるよ」


そう言うと、少女は指を鳴らした。

その瞬間、周りの風景が一変し、


「な…!?」


屋外の墓地にいたはずが、いつの間にか何もない真っ白な部屋にいた。


「どぉ? 凄いでしょ。 これで分かった?」


少女の得意げな顔をまじまじと見つめる。

俺は夢でも見ているのか?


「夢じゃない。 あのね、君にチャンスをあげたいんだ」


「チャンス?」


「そう、チャンス。世の中には理不尽な事や不幸な事が多いよね? それで人は悲しんだり、落ち込んだりする。

どんなに頑張っても報われないなんて、つまらないじゃないか。

誰にだってチャンスはあるべきだ。

そこで! 私、神様がチャンスをあげちゃうってワケ!」


ぶっちゃけこの意味不明な状況で、何を語られても、理解なんてものは出来そうにない。

だが、だけれども、もし本当に姉貴を生き返らせられるなら、


「本当に姉貴を生き返らせられるのか?」


「もちろん。ただし、試練は受けてもらうよ? あくまでチャンスだからね。

試練は怪我をしたり、死んだりする。

その代わり、君が欲しいものを幾らでもあげちゃう。

永遠の命? 巨万の富? はたまたすんごい特殊能力だったり。君の場合はお姉ちゃんを生き返らせられる」


「………」


「さぁ、どうする。このまま姉を失ったまま、生き続けるか? それとも死ぬまで戦い続けるか?」


死ぬまでって事は、一度、試練を受けたなら、ずっと戦い続けなければいけないのだろう。

それでも、


「やる、やらせてくれ」


「うん! やっぱり強い意志を持つ人間はいいね! それじゃあ、今日、夜の12時に迎えに来るよ!」


そう言うと、少女は再び指を鳴らした。

景色は変わり、見慣れた俺の住むアパートの前になっていた。


「これはオマケ。じゃあね!」


そう言うと、少女は煙のように消えた。

今、思い返せば、あのプルートとか言う少女への返事は、軽率だったかもしれない。

だが、姉貴を生き返らせられるなら、何だってやってやる。

そう決意を固め、俺は自宅に向かって歩き出した。






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