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天空遊園地  作者: ザクロ
12/18

お姉さんと空音

俺は、とりあえずこのお城から出ることを考えた。しかし、敏晴が用意したのか、下はたくさんの子供で溢れかえって通れない

みんな死んだ目をしている。・・・・空音を助けれるなら、みんなも助けられるんじゃないか?

本当のヒーローってなんだろう。ただ一人だけのためのヒーローでも構わない。でも、なるなら

みんなのヒーローに、なってみせよう

今はその策が思いつかないけど、必ず思いついてみせる

とりあえずは、目の前のことだ。下には通れない。なら上を目指そう。上を目指したところで、行き止まりなのはわかってるが、とにかく上を目指そう

走り続けなければ、逃げ続けなければ・・・・

・・・・何から、何から逃げるって言うんだ。俺はこの15年の人生で、目を逸らしたことがたくさんある

でも、この遊園地で、俺は逃げないことを学んだ。空音を助けるために、ただひたすらに、走り続けることも

・・・・そうだ、だから、敏晴からも逃げる必要はない。逃げちゃいけないんだ

じゃあ、なおさら上だ、頂上に行って、敏晴を待ち構えてやる!

お城の頂上、そこで、敏晴を待ち構えることにした。待っている間、そこから遊園地を見渡した

あぁ、なんだか、この風景、懐かしいな。前にも、どこかで・・・・

なんだか、思い出せそうなんだ、あの、知らない遊園地でのこと

・・・・昔、知らない遊園地で迷子になって、泣いていたとき、女の人が、俺にキャラメルをくれた。

そうだ、あの時、俺はいつの間にか知らない遊園地にいた、普通の遊園地にいたのに、突然知らない場所に来た

そして、その女の人は・・・・誰だったか思い出したんだ。でも、不思議なこともあるんだな

ここで本来、子供は年を取ることはない。ここから出ることもできない

まずここは、現実世界とつながっているものの、現実世界ではない

でも、もしも、チケットもなしに、時間と空間が入り混じって、現実世界の遊園地から、ここに迷い込んでしまったとしたら・・・・

・・・・つまり、俺の来た知らない遊園地は、ここだった

そして、帰ることができたのは、また時空が歪んだから。そして、もう一度時空がゆがむ原因を作ってくれたのは・・・・


「空音、お前だったんだな。俺を昔、助けてくれたのは」


夢の国ではなんでもできる、夢の国ではなんでも叶う。それが、時空を飛び越えることだったとしても

きっと、空音はこのあと成長して、あの、俺を昔助けてくれた女の人になるんだろう。思い出してみれば、顔がそっくりだ

「空音、今度は俺の番だ。俺が空音に、本当に恩を返す時だ」

俺は、空音の手を握り、目線が同じ高さになるようにしゃがみ、言った

「何もできないお兄ちゃんで、本当にごめんね。苦しい思いも、辛い思いも、寂しい思いもさせたね。でももう、そんなことをさせないように、俺、頑張るから。敏晴とも、もう喧嘩しないように頑張る。空音ともっと一緒にいれるように、頑張る」

俺はぎゅっと空音を抱きしめた

「空音、一緒に帰ろう・・・・」

「お・・・にい・・・・ちゃん・・・・」

かすかだが、空音の声がした。見ると、死んだような目から、涙が溢れている

俺は空音の手を握り、強く願った

夢の国ではなんでもできる、夢の国ではなんでも叶う。ならば、夢の国よ、叶えてくれ、俺の願いを

空音を、元に戻すという願いを!

その時、空音が、眩しい光に包まれた。俺は、思わず目を閉じた

光が収まり、俺がゆっくりと目を開くと、そこには泣きじゃくる空音がいた

「お兄ちゃん、お兄ちゃん・・・・怖かった、怖かったよ・・・・」

死んだ目をしていても、同じ言動を繰り返していても、その奥深くに、意識はある

特に空音には、それがあった。だから、自分の思い通りに体が動かないことが、怖かったんだろう、辛かったんだろう

その時、俺はポケットに入れていた綿菓子を思い出した。俺は綿菓子を出し、空音の手の上に乗せた

「俺、昔、大きなお姉さんに助けられたんだ、こんな感じの、知らない遊園地で。その時お姉さんは言ったんだ「信じれば叶う」って。そして、キャラメルをくれたんだよ。その恩は、本来、その人に返すものだけど、他人に返すことも、また恩返しだ。だから空音、この恩を空音に返そう。さぁ、雲のような綿菓子だよ。食べたら元気が出るよ」

空音はそれをゆっくりと食べた。口に運んだとたん、空音の顔は、明るい笑顔へと変わった

「ありがとう、お兄ちゃん」

これで、ひとまずは区切りがついた。俺も思わず笑顔になった。

さぁ、最後だ。敏晴と、決着を付けよう

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