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  作者: 彰弘
3/6

雨音

 ――雨の音を聞いていると、何故か心が落ち着く



 雨が降っていた。昼過ぎから降り出した雨は、いつの間にか強くなっていた。地面をたたく雨の音は、少しずつ強くなっている。

 聴覚には雨がものをたたく音。視覚には落ちていく滴が。嗅覚には、アスファルトの湿った独特の匂い。触覚には、冷たい水が空から落ち、体をたたく。

 私は雨に濡れながら、家路を急いでいた。少しずつ肌寒くなってきた。雨が少しずつ体温を奪っているのだろう。濡れた靴は重い。足取りも重くなってきた。しかし、家まではあと少しだ。

 家に着いてみると、予想以上に落ち着く。それは一種の温かみを感じるからかもしれない。

 私は濡れた服を着替えると、ベッドへ体を投げた。ベッドへ沈んでいく体。意識もだんだんと闇に沈んでいく。

 気付けば、頭の上に置かれた時計の針が思わぬ数字を差していた。

 私は天井を眺めながら、耳を澄ませた。

 雨は依然として降り続いている。静かに、ただ静かに響く雨音。地面をたたく雨の音に耳を澄ませていると、不思議な気分になってくる。まるでこの世にいないような、別世界に存在しているような感覚。現実的であって、それでいて現実離れした世界へと、ゆっくりと沈んでいく。

 雨の音を聞いていると、だんだんと弱まっていることが分かった。強くたたきつける雨から、しっとりと地面を濡らす雨へ。音だけでも、雨の様子は何となく感じることが出来る。そんな世界が、私は好きだった。

 雨を嫌いだと言う人もいる。私も雨が好きかと聞かれれば、おそらく嫌いだと答えるだろう。けれど、そうではあっても、雨の音は好きだ。特に地面をしっとりと濡らす雨。あの、耳をよく澄まさなければ聞き取ることのできない音。あの音が好きだ。

 雨は、触覚的に感じるもの以上に、聴覚的に感じるものなのだろう。雨の音に耳を澄ませてみれば、また違う世界へ行ける気がする。そんな雨の感じ方も、一興なのかもしれない。


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